2月1日に幕を閉じたアフリカネイションズカップ2010。大会前にトーゴ代表の乗るバスが武装集団に襲撃されるという悲しい事件があったものの、開幕以降は幸い大きな事件も起こらず、無事21日間の大会期間を終えた。なお襲撃事件で腹部に2発の銃弾を受け一時生死の境を彷徨っていたオビラレ選手は、南アフリカの病院で集中治療を受けた結果、無事意識を取り戻し一命を取り留めたとのことである。不幸中の幸いというほかない。
大会の主役は、やはり2006年、2008年と連覇を達成し、ディフェンディングチャンピオンとして望んだエジプトであった。グループリーグと決勝トーナメント6試合を戦い全勝(1つは延長戦だが)、15得点2失点。結果だけではなく、安定した試合運びを見てもチャンピオンにふさわしかった。特に今大会ではブラックアフリカの諸国にはない高い集中力で隙のない守備が光った。押し込まれていても失点には結びつかせず、逆に相手のミスを生かして得点するという勝ちパターンが確立していたのである。
エジプトにリベンジを果たされてしまったが、アルジェリアの健闘も見逃せない。近年の成績から「健闘」という言葉は相応しくないように思えるが、実は3大会ぶりのネイションズカップ本大会出場。低迷からの復活であったといえる。徹底的に相手に合わせてフレキシブルに戦術を組むシステムは、チームの結束力と応用力の高さを感じさせる。欧州で育成された選手たちを逆輸入し、このサッカーを可能にしたのだろう。ただ初戦のマラウィ戦、準決勝のエジプト戦は明らかな「自滅」であった。この甘さがエジプトとの違いになったといえる。
また、アンゴラとザンビアの活躍にも目を向けたいところ。両チーム共に決勝トーナメント1回戦で敗れたが、どちらもポテンシャル以上のプレーをしていた。トップのマヌーショを基点にサイドに展開して崩すという戦術が確立されていたアンゴラ。特にマビナは国内リーグ所属の無名の選手ながら、高いポテンシャルを見せて攻撃の中心として活躍。市場価値を上げた事だろう。ザンビアは人数をかけた守備からカウンターというアフリカ・スタンダードな戦術ながら、チーム全体のプレッシング意識の高さで最終ラインを決して下げず、前線も身体能力の高い選手たちが強引にならず連携を作るという素晴らしいチームであった。大会前の親善試合で韓国相手に4点を叩き込んで粉砕したのは、決してフロックではなかったのだ。ルノル監督の手腕には評価をしたい。
ここ数年のアフリカ・スタンダードの戦術の「祖」といえばナイジェリア。ユースから一貫して志向されている、人数をかけた守備から少人数での強引なカウンター。これはU-17やU-20、オリンピック年代では大きな結果を残している。ザンビアのような連携を作るのは苦手だが、自分たちの弱みと強みを現実的に受け止めた論理的な手法である。3位になったからといって後ろ向きになる必要はなかった……のだが、なんと大会終了後にアモドゥ監督を解任してしまった。確かにオデムウィンギーなどから「もっと攻撃的に戦いたい」との不満は漏れていたのだが、仕事の評価という点でも、タイミングとしても、納得出来かねる選択だ。
その「祖」を上回ったコピー品が今大会のガーナである。エッシェンやムンタリ、アピアーが負傷で使えない状態の中、カウンター戦術のみでこの大会を戦った。勝った試合は全て1-0という徹底振りだ。最終ラインは決して安定してはいなかったが、それでもこの結果を残せたのは割り切りのなせる業だろう。問題は、中心選手が戻って来たときにどうするか。今回離脱していた大物はほとんどが中盤。結果は残したが、彼らが守備に追われるだけとなるシステムを続けられるのか? 今後ワールドカップまでに大きな岐路に立つに違いない。
一方、期待はずれだったと言わざるを得ないのはコートジボワールとカメルーン、そしてチュニジアとマリだろう。コートジボワールは、結果以外はそれほど悪くなかった。アルジェリア戦で1点リードした後に引いてしまい相手に勢いを与えたのは結果的に失策だったが、守備的な志向が強いハリルホジッチ監督が率いているので仕方ない部分だろう。またチュニジアは一時期よりもタレント不足で、献身的なハイプレス+ショートカウンター戦術に決定力、個々の守備力が付いて来ていない。これもチームが世代交代していることを考えれば止むなしだ。
他の2カ国については問題点が山積みだ。カメルーンはカウンターでもない、連動して崩すでもない、しかも単純な放り込みに逃げやすい攻めに加え、明らかにミスが多すぎる脆弱な守備で失点を重ねた。マリは前線に揃った良いフォワード陣を生かす前に、稚拙な技術しかない後方でボールを回して自滅した。彼らは根本的な改革が必要であろう。それは一流クラスの良い監督を雇うか、それとも一時低迷するのを覚悟で選手の大半を入れ替えるか、である。

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