サッカー界にはいくら時間をかけても抜けない、ある種の“シミ”のような問題がいくつも存在する。

例えば、人種差別問題であったり、クラブ間の格差であったり、サポーター達の暴力沙汰などだ。

だが、それよりも深刻なことは、いつの間にか「タブー視」されていることにより、公にはあまり露出されないもの。俗に言う「ゲイ問題」である。

日本人の感覚では、欧米は同性愛者に寛容的な印象があるかもしれないが、実際はそうではない。

筆者は、「イタリア代表はゲイの集まりだ」と自国の代表チームを自虐的にこき下ろすイタリア人や「サッカー選手=ゲイというイメージを持っている人間も多い」と口にしたドイツ人のサッカーファンと話したことがあるが、明らかに「同性愛者」が粗末に扱われているように感じる。

同性愛者の結婚が認められた国も存在するが、確実にサッカー界での人権は認められていない。それ故に、彼らは殻に閉じこもっているのだ。

しかし、彼らのアイデンティティーを理解し、バックアップに回る者たちもいる。その多くは選手達だ。

今記事の「ゲイはカミングアウトすべし!!」という題名は、ドイツ代表GKマヌエル・ノイアーが『Bunte』のインタビューの中で口にした文言を引用したものである。

彼はそのインタビューの中で「サッカー界の同性愛者は堂々とするべきだ。それを許さないファンもいるかもしれないが、彼らのピッチ上でのパフォーマンスだけに目を向けて欲しい。その選手の性的趣向などは論じられるべきではない」と声を大にしたが、あえてタブーに切れ込んだ彼の功績は称賛されるべきだろう。

往々にして、このような発言を行うと、「ノイアーがゲイをカミングアウトした」などと偏向されるものであるが、屈せずに自論を強く持ち続けて欲しいものだ。

さて、この話題で私は強く疑問を感じたことがある。

それは我が国における「タブー議論」についてだ。

欧米には、上記のノイアー以外にも有名選手が人種差別問題、同性愛者問題を取り上げ、一つのムーブメントを起こした歴史があるが、こと日本では全くと言っていいほど起こらない。

「臭いものには蓋をする文化」が定着化しているのかもしれないが、必要に応じては、選手達は強いメッセージを発信するべきではないのだろうか。

欧米で起こっている問題が日本に起こっていないという考えは見方は閉鎖的であり、単に表面化されていないだけである。

実際、ネット上では特定の日本代表選手を対象にして「やっぱり、在日のメンタリティーは違うな」「あの選手は見た目がゲイっぽい」などと言った、根拠のない発言を頻繁に目にする。

この国のサッカー界は、タブーはアンダーグラウンドにしか広がらない土壌なのかもしれない。

しかし、自身が思ったメッセージを言葉にできる強い意志を持ったサッカー選手の登場、そして、彼らを中立的な立場で論じるメディアの台頭があった時、初めて日本のサッカー界はフットボールネーション(サッカー界の先進国)の仲間入りを果たせるようと筆者は考えている。

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