「果たして乾貴士というサッカープレーヤーは本物なのだろうか?」

 

あえて挑戦的に今稿を始めたのは、今季の彼のプレーに大きな不安感を抱いているからだ。見る者を魅了する彼のボールテクニックとサッカーセンスは周知の通りで、私もその才能を期待する一人である。セレッソを経由して海外へ飛び立った香川真司や家長昭博のように“世界の頂”を目指す男になるだろうと・・・。

先週、ACLが開幕し、今週末には待ち望んだJリーグの新シーズンが始まった。セレッソ大阪はアレマ・インドネシアとの試合を2-1で辛勝しクラブ史上初となるアジア戦での白星を上げたが、ガンバ大阪とのJリーグ開幕戦は一時は同点に追いつくものの遠藤保仁のゴールで突き放されて勝ち点を得るには至らなかった。その試合内容は割愛する。それよりも気になったことがあったからだ。前述で触れた乾貴士のパフォーマンスについてである。

今季はアドリアーノ、家長昭博がチームを離れたこともあり、彼にかかる期待は例年以上のものであることは言うまでもない。22歳の若武者が一身に背負う必要はないのかもしれないが、それに見合うだけの能力を秘めている限り、やむを得ないと言える。世界に目をやれば、この年齢でチームの旗手を担っている選手は少なくない。

だからこそ、この2試合の彼のプレーは大きな不満が残った。

「コンディションがまだ万全ではない」と擁護する声もあるようだが、むしろ、そもそもシーズン開始までに調子を整えられなかったのであれば、それは失敗ではないのだろうか?長丁場のJリーグにおいて開幕戦から絶好調でいる必要はないかもしれないが、少なくとも自分の持っている力を発揮できる状態で臨むことがプロとしての最低限の務めのように感じる。

また、こういう見方もある。「新加入組が名を連ねる中で持ち味を発揮することは難しい」と。たしかに、新加入のホドリゴ・ピンパォン、倉田、キム・ボギョンらとシーズン序盤から洗練されたコンビネーションを見せることは難しいだろう。連携というものはシンパシーが合えばすぐに構築されることも稀にあるが、基本的には月日を重ねて向上させるものである。チグハグ感が漂うユニットの中で自分の存在感を際立たすことは並大抵のことではない。だが、こうなることはシーズンオフから予期できたことだ。倉田に香川や家長のようなテクニックを求めることは酷であり、キム・ボギョンが(特に劣勢時に)ボールを持ちたがる選手であったことは誰しもが知っていたことではないのだろうか。そして、乾クラスの選手であれば、選手個々の特徴を把握し、その中で自分が生きる道を模索できたのではないだろうか。

きつい言い方かもしれないが、ここまでの彼の出来は極めて残念だ。

そのボールロストの多さ、周囲からパスが出ないとすぐにふてくされるようなその態度はサポーターをいら立たせているようだ。特にガンバ大阪戦で見せた、味方が送ったやや長いパスに対して「追いつけない」と判断してしまったのかすぐに足を止めたそのプレーは失望感すら漂った。

インターネット上では、「乾は香川のようにブンデスリーガなどにはいけない。J2でこそ活躍できるレベル」、「無駄にトリッキー」、「乾をベンチに降格させて清武を出せ」と辛らつなコメントが書き込まれているが、そのやり方はともかく、言われて仕方ないだろう。

その彼の才能は、批判にさらされるほど日本のサッカー界から注目されているのだ。チームとして成り立っていないセレッソの現状を憂う気持ちはわかるが、サポーターから「ふてくされている」と中傷されるような行動だけはやめて欲しい。もはやチームを象徴する存在になりつつあるからだ。一人のファンとして、これからも彼を注視していきたい。そして、心から願っている。足先だけではなく背中でも語れるプレーヤーへ、本物のプレーヤーへと成長することを。

(筆:Qoly編集部 T)

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