チェルシーとインテル、この2チームの共通点とは何だろうか。

両チームとも欧州屈指の名門クラブであることや、どちらかと言えば富裕層にサポーターが多いといったことが挙げられるが、最も共通している点は「モウリーニョ在任時に栄光の時代を謳歌した」ということだろう。

そして、モウリーニョが去った後に監督交代が相次いでいることも共通しているのだ。

・チェルシーの監督変遷

アヴラム・グラント(2007.9-2008)
ルイス・フェリペ・スコラーリ(2008-2009.2)
フース・ヒディンク(2009.2-2009.6)
カルロ・アンチェロッティ(2009-2011)
アンドレ・ヴィラス=ボアス(2011-2012.3)
ロベルト・ディ・マッテオ(2012.3-)

・インテルの監督変遷

ラファエル・ベニテス(2010.6-2010.12)
レオナルド(2011.1-2011.6)
ジャン・ピエロ・ガスペリーニ(2011.7-2011.9)
クラウディオ・ラニエリ(2011.9-2012.3)
アンドレア・ストラマッチョーニ(2012.3-)

上記はモウリーニョが去った後のチェルシー、インテルの監督交代の遍歴である。

確かに、両チームのオーナーが監督をすぐ替えたがる性格の持ち主であることが原因かもしれないが、強豪クラブとは思えないほど監督の首をすげ替えているのだ。なぜ、両チームに監督交代が相次いでいるのか。

ここからは、筆者が思う「監督交代の謎」について述べていきたいと思う。

・後任監督を悩ませる「モウリーニョの影」

モウリーニョの後任監督は例外なく前任者と比較をされる。このことはモウリーニョの後を継ぐという勇気ある決断をした監督にとっては避けては通れないことであると同時に大きな悩みの種であることは間違いないはずだ。例えば、チェルシーでモウリーニョの後を継いだアヴラム・グラントは2007/08シーズンにクラブ史上初となるチャンピオンズリーグ決勝進出を成し遂げたが(マンチェスター・ユナイテッドにPK戦の末敗れ、準優勝)、サポーターからは「モウリーニョの遺産」と言われた。また、インテルでモウリーニョの後を継いだラファエル・ベニテスはモウリーニョ時代に行わなかったフィジカルトレーニングを取り入れたが、その結果、怪我人が続出する事態となってしまう。ベニテスはクラブに対して冬の移籍市場で補強を行うように要請したが、モラッティ会長はこの要請を拒否。結局、クラブ・ワールドカップを制したのにもかかわらず、ベニテスは解任の憂き目にあった。モウリーニョ流を踏襲すれば「遺産」と揶揄され、新たな変化を求め、失敗した場合はモウリーニョ時代の成功体験を有している選手たち、サポーターから非難される(ヴィラス=ボアスはランパードら主力選手との折り合いが悪かったとされている)。

ある意味「がんじがらめ」とも言えるこの状態を上手く切り抜けることができる監督はほとんどいないだろう。モウリーニョが去った後に監督交代が相次いでいるのは、この「モウリーニョの影」を払拭することができない状態が続き、オーナー、サポーターが簡単に満足できない環境にいつの間にかなってしまっているからなのだ。

・モウリーニョが去った後の「喪失感」

また、相次ぐ監督交代の原因として「モウリーニョが去った後の喪失感」も挙げられる。モウリーニョは多大なるカリスマ性を持った監督であり、彼に師事した選手たちは例外なく称賛の言葉を送っている。

「ジョゼは監督としても人間としても、唯一無二の存在だ。常に彼のポジションを守りながら、思ったことを口にする。チームと監督の関係性が、僕たちにこういった結果をもたらしたんだ。彼が僕たちをベストに高めたんだよ」(サミュエル・エトー)

「モウリーニョは、今まで僕を指導してくれた監督の中でベストの監督だった。彼は、僕に素晴らしい思い出を残してくれたよ」(ディエゴ・ミリート)

「モウリーニョは最高の監督だ。すべてにおいてフェアで筋が通っている。1年間ろくに出番すらもらえなかった俺が言うんだから間違いない」(マルコ・マテラッツィ)

上記の3人だけでなく、ヴェスリー・スナイデル、ジョン・テリー、フランク・ランパード、ディディエ・ドログバ、ハビエル・サネッティといったスタープレーヤーがモウリーニョに賛辞を呈しているという事からも、この名将の持つ影響力がいかに凄まじいかが分かる。それだけに、モウリーニョが去った後は、何とも言えない「喪失感」が残るのだ。

更に、モウリーニョは過激な発言で人々の関心を集める。歯に衣着せぬ発言で審判団を批判したり、チェルシー時代には監督就任時に自らのことを「スペシャル・ワン」と称し、マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督やアーセナルのアーセン・ベンゲル監督と幾度となく舌戦を繰り広げていた。また、レアル・マドリーの監督に就任した後はバルセロナとの「エル・クラシコ」で過激なパフォーマンスを披露している。このような人々を熱狂させる「エンターテインメント性」を持った監督はなかなかいないものであり、このことも「喪失感」に拍車をかけていると言えるだろう。

モウリーニョは1つのクラブに長年留まる監督では無い。インテルでチャンピオンズリーグを制したその夜に辞意を表明し、その後レアル・マドリーの監督に就任した事からも分かるように、常に勝利を追い求める求道者なのだ。現在、モウリーニョが率いるレアル・マドリーは国内リーグで宿敵バルセロナを抑えて首位に立ち、チャンピオンズリーグでもベスト8に進出した。このまま順当に進めば、どちらかのタイトルを取る可能性は高いと言える。モウリーニョはかねてからイングランドのクラブ、または生まれ故郷であるポルトガル代表の監督の座に就きたいと公言してきただけに、レアルでタイトルを取った後、監督の座から降りる可能性も否定できない。現時点ではモウリーニョがレアルを去るとは言い切れないが、いちサッカーファンとしては、モウリーニョが去った後のレアルがどうなるのか、大変興味深いところではある。行く先々で人々を惹きつけるモウリーニョの動向をこれからも注意深く追っていきたい。

2012.3.29 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 ロッシ
プロフィール 鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援している大学生。今シーズンはプレミアリーグを中心に観ていく予定です。当コラムに関する、感想、意見等がありましたら、下記のツイッターアカウントにどしどしお寄せ下さい。
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