ピッチに入場した時だった。マックスの様子がおかしい。見たこともない数の観客を前に、マックスは完全に取り乱し、パニックを起こしていたのだ。

体は震え上がり、神経質になっていた。無理もない。舞台はW杯予選の最終節、しかも両国のプライドをかけた首位攻防戦だ。サポーターたちの熱気を想像することは容易く、選手たちもさぞ集中力を高めこの一戦に臨んだはずだ。

そんな中、シェルストレームはしゃがみ込む。マックスの異変に気付き、彼を抱き抱えたのだ。まるで我が子を愛でるように、シェルストレームはマックスを優しく包む。この時の様子がカメラに収められている。

キム・シェルストレーム

試合後、マックスの父親は自身のFacebook上でシェルストレームへの感謝のメッセージを表現。その最後には、こう記されている。

「マックスが取り乱した時、あなたが我が子を優しくサポートしようとしてくれたことは、私たちに計り知れないほどの素晴らしいメッセージを与えてくれました。

そしてマックスにとっては、何が正しいことで何が間違ったことなのかを学ぶ上でとても大きな意味がありました。

心の底から感謝の言葉をお送りします」

シェルストレームはこの言葉を、どう受け取るだろうか。

おそらく、彼にとってはなんでもないことだったはずである。目の前に困っている少年がいた、ただそれだけのことだったはずだ。

しかし、マックスとマックスの家族にとって彼の心遣いがどれほど大きく、どれほど勇気づけられたかは説明するまでもないだろう。そして、今こうして彼の優しさは感動をもって世界中に伝えられている。シェルストレームの何気ない行動が、人々の心をここまで動かしたのである。