※今回のコラムは背水の古豪ニュルンベルク(前)の続編になります。そちらも併せてお読みいただけると嬉しいです。

 

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 まずはシャルケ戦の雑感から。ポジティブな変化を先に記しておこう。

・組み立てが機能し出している。特に長谷部を経由することなく、ゴール前20m付近に侵入できる機会が増えていることは朗報。長谷部自体のボールタッチが減っているが、この場合は相手のマークを散らせていることと同じ意味なので問題はない。

・くずしの引き出しの増加。特に前線でパス供給の起点になった清武は、1アシストを記録したハノーファー戦より、状態はむしろ改善している(それでもベストには遠いが)。

・クリーン・シート(無失点)の達成。これはこちらより相手(シャルケ)の状態の悪さに多くを依るものだが、ポジティブな結果であることに変わりはない。

……といったところだろうか。翻って、看過できない問題としては

・決定力の不足。くずしのアイデアが増えても、フィニッシュの精度が低くてはどうにもならない。

・センターライン(ピッチ中央の縦軸に位置する選手たち)の脆弱さ。現状で充分に計算できると言えるのはGKシェーファーと長谷部ぐらいで、他はいまだに不確定要素が大きい。

・負のメンタリティの連鎖。怯え竦む選手は減ってきたが、勝利への渇望以上に、結果が出ないことへの焦燥と躊躇は未だにチームを蝕んでいる。

が挙げられる。この状況をまとめると、ピッチ上に複数の改善点が視られたことは喜ぶべきだが、肝心の“勝てない”原因は、依然としてチームに存在し続けている……ということになる。

では、クラブは今後、どのように状況の改善をはかるべきか? というのが、今回のテーマである。

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○打つべき一手はどこにあるのか

まずは冬の移籍市場とクリスマス休暇を挟む中で、クラブに変化可能なリソースと、不可能なリソースを正しく選別するところから始めるべきだろう。

変化可能なリソースである、ピッチ内の状態は悪くないと言える。現存メンバーは、クリスマス休暇中に英気を養い、心の平静を整えることは勿論、よりフェルベークが目指すスタイルの理解、習熟が必要になるだろう。

実はこの点については、あまり心配はしていない。現時点で選手たちの中に、目に見えて指揮官に反抗してグループの輪を乱す者は出てきていないからだ。技術的な不足よりも、共有理解の有無が何より重要になるチーム運営において、状況はポジティブな方向へ変化しつつある。

 一方ピッチ外、つまりフロントの仕事について。これは言うまでもなく移籍市場の動向ということになるが……前提として、選手の大幅な入れ替えは不可能だ。この点は如何ともし難い。

「使える予算には限りがある」という常套句以上に、このクラブの財政には限界がある。移籍市場での動向、一部公開されている選手のサラリー推定からだけでも、その一端は伺えよう。そもそも夏の長谷部獲得の時点で相当に無理をしていたことは、数々の状況証拠が証明している。

指揮官の更なる交代はリスクが大きすぎるし、メリットを見出だせない。チームの動揺を内外に広げさせることになり、違約金やサラリーの支払いを考えれば、予算的な圧迫は更に増すことになる。フェルベークのキャラクター、クオリティを充分に生かす道へ、生き残りを賭ける方がまだ可能性があると言えるのではないか。

とは言えピッチ上には、先ほど述べた他にも、まだまだ問題は山積している。守り切れない守備、攻め切れない攻撃。指揮官の目指すスタイルと所属メンバーの特性は、少なくとも現時点においては、まだまだ噛み合っているとは言い難いレベルにあるのは事実なのだ。

よって――この条件下で選択できる道は、大きく以下の3つ。

1つは 陣容の現状を維持し、風向きが変わるまで我慢すること。実際、相手の失敗や混乱もあったものの、ハノーファー戦では前半だけで3得点を奪ったように、得点力は以前よりも向上している。シャルケ戦では相手の不調に助けられたとは言え、とうとう無失点で90分を終えたよう、ポジティブな変化を見出だせなくはない。そこに一縷の望みを賭けてみる――というわけだ。

だが、選手は勿論、ファンやフロントによほどの忍耐力が無い限り、このアプローチは不可能だろう。経済的に比較的恵まれた層の多い観光地であるためか、スタジアムに訪れるニュルンベルクのファンには、イタリアなどでは考えられない余裕と温かさを感じることができる。しかし、それもいつまで保つかはわからない。少なくとも、観客動員数やグッズの売り上げには、今後確実に悪影響を及ぼすはずだ。最初から勝てないとわかって、スタジアムに足を運ぶファンは少ないだろう。

グループに更にポジティブな変化を促すためには、やはりフロントが
「姿勢を示す」
必要性を強く感じる。残留のためには何でもやる、打てる手はすべて打つから迷いを捨てろ、と現場に訴えかけられる……そういう意思表示を行う必要がある。何らかのテコ入れを行うのが妥当だろう。

そこで考えられるのが、残り2つのアプローチである。端的にまとめれば、1つは 現所属メンバーの限界を見越し、複数人の入れ替えによる代謝の促進を狙う方法。もう1つは 現所属メンバーの可能性を信じ、足りないものを補う方法となる。

まずは前者の方法、現所属メンバーの限界を見越し、複数人の入れ替えによる代謝の促進を狙う方から説明しよう。

チーム内の淀んだ空気を払拭するにはいくつかの方法があるが、一例を挙げれば

・選手の入れ替えによる、チーム内競争の活性化
・カリスマ的選手の加入による、内外の環境の変化
・説得力あるモデルと、それを実現するための練習方法の提示による、選手の意識改革
・勝利給アップなど、具体的な報酬増加によるモチベーティング

等が考えられる。実際にはその複数を組み合わせて効果を高めるのが常道だが、その中でも最も比重を置くもの、とここでは考えていただきたい。

この中でも即効性が高いのが、最初に挙げた選手の入れ替えによる競争の活性化だ。例えばザックジャパンがフレッシュな顔ぶれを起用し出した途端、元々の主戦力たちも輝きを放ち出したのはわかりやすいモデルケースだろう。

チーム内に競争があるということは、選手たちにとって非常に重要なモチベーションとなる。必要でない選手は売りに出され、当落線上の選手は新規加入組に、常にそのポジションを脅かされる――そんな状況になれば、およそまともな神経の持ち主であれば、必死になって自分のポジションを、仕事を保持しようと努めるものだ。その緊張感が勝利への執念の元となり、敗北を許さない強固な精神を作り上げるのである。
※余談だが、欧州チャンピオンズリーグでタイトルを争いあう超名門クラブ、バルセロナやレアル・マドリー、バイエルン・ミュンヘンやマンチェスター・ユナイテッドといった面々が、優勝後にも必ずメンバーを複数人入れ替える背景には、こうした事情が絡んでくることを追記しておく

しかし……である。単純に入れ替えると言っても、当然一朝一夕でいくものではない。ニュルンベルクのような予算的に制約が大きいクラブであれば尚更だ。

 

その2へ》続く。


筆者名:白面

プロフィール:だいたいモウリーニョ時代からのインテリスタだが、三冠獲得後の暗黒時代も、それはそれで満喫中だったりします。長友佑都@INTERの同人誌、『長友志』シリーズの作者です。チームの戦術よりも、クラブの戦略を注視。
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