交通の関係で、マンチェスターではNew yearになった瞬間に花火が打ち上げられなかったらしい。年が変わる瞬間の花火はイギリスの伝統で、スコットランドの片田舎ですら花火が打ち上がったというのに。

そういった意味では2015年の入りから躓いてしまった感があるものの、マンチェスターの両雄は比較的好調を保っている。ペジェグリーニ率いるマンチェスター・シティは2位で大本命のチェルシーを追っており、W杯でも主力となるメンバーが多かったことから囁かれた"勤続疲労"という面での不安も、そこまで顕著に可視化してはいない。

そして、プレミアリーグに驚きを提供しているのがマンチェスター・ユナイテッドだろう。

度重なる主力の怪我に、慣れない3バックの採用など、様々な問題が勃発しながらの3位(執筆時のため、1月上旬での順位。現在は4位)。新指揮官ファン・ハールも、驚くべき適応力でチームを纏め上げている。W杯で合流が遅れたことも考慮すれば、十分過ぎる前半戦の結果と言っていいはずだ。「不調に喘ぐアーセナル、リバプールが好調であれば、このポジションにいることは出来なかった」という見方も出来るかもしれないが、それでも現時点でのファン・ハールの仕事は特筆に値する。

何故なら、今季のマンチェスター・ユナイテッドは各ポジションに怪我人が非常に多いからだ。リバプールやアーセナルも直面している問題ではあるが、それを跳ね除けるだけの「何か」がマンチェスター・ユナイテッドには存在しているのだ。

本コラムでは、W杯とマンチェスター・ユナイテッドのシーズンにおけるファン・ハールのチーム・マネジメントを比較しながら、現時点で上位につけることを可能にしている彼の強みを探って行きたい。様々な問題に直面しながら、どのように勝ち点を積み重ねているのだろう。

Age And Performance In The Premier League
http://www.bettingexpert.com/blog/age-performance-football

まずは、このグラフを見てもらいたい。これは、2013年におけるプレミアリーグの選手年齢とプレー時間の割合をグラフにしたものである。

予想されるように、25~28歳の選手が多くプレーしており、気力や体力が充実している時期だと考えられるだろう。マンチェスター・ユナイテッドの現所属メンバーで考えると、フアン・マタが26歳で、フェライニが27歳、エレーラが25歳。守備陣では、25歳のスモーリング、26歳のエヴァンスなどが当てはまる。ただ、マンチェスター・ユナイテッドはこの年齢層に多くの主力選手を揃えている訳ではない。これを、1つ覚えておいていただきたい。

実際、昨シーズンのマンチェスター・ユナイテッドは、スカッドの平均年齢が27 .3歳。ヴィディッチやファーディナンド、ギグスなど、黄金期のベテランを残していたこともあって比較的高い。一方、今季のスカッド平均年齢は25.8歳。オランダ人指揮官ファン・ハールの下で、一気にチームは若返りを果たした。ユース上がりの選手も起用されるようになっており、今季はパトリック・マクネアや、タイラー・ブラケットといった20歳程度の選手達も、何度となくスターティング・ラインナップに名を連ねている。

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