3センターにおける「4番」。「指揮者」としてのMF。

和製英語ではあるものの浸透しつつある「アンカー」のポジションについて、イタリアでは「レジスタ」と呼ぶことも多い。

本来は「演出家」を意味するレジスタは厳密には「ボールを供給する役割を」表すものであり、選手の位置取りであるポジションを表すものではない。ただ、現在は“底"の選手がボールを供給することが多いことから、そのポジションを「レジスタ」と表現することも少なくないようだ。

本コラムでこのポジションを指す際には、アッレグリが使った単語である「4番」をそのまま使用していこうと思う。

3センターの底に位置するポジションは、どういう選手が理想的なのだろうか。アッレグリが、このポジションに必要な適正として提示したものを列挙していこう。

・ボールが相手側にある際に、8番と10番、2人のセンターハーフのポジションを指示し、アタッカー3人(7番、9番、11番)のポジションを整える指示能力。

【重要】攻撃が終了した際には、即座に4番は帰陣を指示し、ボールを奪い返すために全体の位置を調整しなければならない。

・ポジションから飛び出さず、相手の攻撃を遅らせることが出来る能力。

・自らのチームに時間を与えられるパス能力。ボールを受ける上での正しいポジショニングを取る能力。

・カウンターなどで守備から攻撃に円滑に移行することを可能にするロングキック能力、これはプレスを回避する上でも必要。また、相手の弱い部分を見つける視野。

・ボールを失わずに正確に繋ぐ能力だけでなく、正しいポジショニングを保つことで相手の攻撃を防ぐ役割をこなす必要もある。DFを助けるために、相手の攻撃時にはアタッカーを妨害しなければならない。

・このポジションをこなす選手に最も必要な能力は、「テクニックに優れていること」。チームのバランスを保つために、ポジションを離れすぎない必要がある。

この特性をアジアカップで「4番」としてプレーした長谷部に当てはめてみると、どう考えても当てはまらない。長谷部は本質的には英国で「Box to Box」と呼ばれるタイプの、「体力を生かした上下動で持ち味を発揮する」選手であって、底でプレーする上ではアッレグリの理想像からは遠い。

また、それ以上にハビエル・アギーレの選んだ日本代表に、アッレグリの「4番」が見つからないことも問題だろう。恐らく、チームのバランスを整える守備面では今大会でも何度か出番があった今野が近いのだろうが、恐らく彼は攻撃面で求められているプレーをこなすことが難しい。

過去の日本代表で考えると、この特性に最も近い選手は南アフリカW杯で「4番」を任された阿部だろう。彼は長谷部、遠藤という2人を「指揮」しながら攻守において的確な判断力を生かして中盤の底を支え、チームの躍進に大きく貢献した。

長谷部は「組み立てにおいてシャビ・アロンソやピルロを参考にしようとした」、という意のコメントをしているものの、疑問視すべきはそもそもの特性だろう。コンバートしてまで彼を「4番」として使う必要が本当にあったのか、という点は議論すべきトピックの1つだ。

【次ページ】アッレグリにとって、理想の「4番」とは?