4.トム・ソープという男

私がファン・ハールを嫌っていた理由のひとつに、若手への選り好みが激しいことがあった。

チャビ・エルナンデスやアンドレス・イニエスタ、ホルガー・バトシュトバーはその世代を代表する天才だった。そしてトマス・ミュラーをトップチームで使い続けた反面、彼はトニ・クロースをメーンで使うことはなかった。

ジェームス・ウィルソンにはもちろん私も期待している。彼は昨シーズンのデビュー戦で2得点、優れたタレント性も垣間見せた。だが、この章で私が言いたいのは、若手ディフェンダーにおける優先順位についてである。

バックス、とりわけセンターの脆さはシーズン前から言われていたが、補強メンバーが上手く機能しないと見るや、彼はアカデミーからタイラー・ブラケットとパトリック・マクネアーをスターターとして使い始めた。普段、リザーブチームでプレーしている彼らが、トップのスタメンに出ることを私は非難したいのではない。

私が言いたいのは、そのリザーブチームで長年活躍するトーマス・ソープというディフェンダーをなぜ一度もリーグ戦で使わないのか、ということを問いたい。

彼の能力は正直、同世代ではずば抜けている。冷静沈着なゲームキャプテンは、激しいマーキングと戦術理解、そして一級品のタックル技術を持ち合わせている。

初めて見たときはまだ、アドナン・ヤヌザイもリザーブにいた時代だったが、かつてのリオ・ファーディナンドを思わせるような、エレガントなディフェンダーだった。フィル・ジョーンズやクリス・スモーリングが怪我や問題を抱えるならば、彼を試すことをなぜしないのか。ブラケットやマクネアー、更には冬加入したヴィクトール・バルデスにも檄を飛ばしてコントロールし、主将としてプレーするソープ。

シーズン開幕当初は、「3バックに不向きなタイプなのかも」と使われない理由を勝手に自分に言い聞かせていたが、4バックを敷くのであれば、彼を試す価値は十二分にあるはずだ。