アーセナルファンの中で、デニス・ベルカンプという選手に対する人気は未だに根強い。おそらく、どのファンに聞いても「ベルカンプが好き」と答えるのではないだろうか。

しかし、アーセナルの歴代得点ランキングを見てみると、トップ10の中にベルカンプの名はない。

アーセナルに在籍した11シーズンであげたゴール数は120。これは同じオランダ人で、8シーズン在籍したロビン・ファン・ペルシーよりも少ない数字であり、リーグ戦で二桁ゴールをあげたのは加入後の4シーズンのみである。

もちろんタイプが違うといえばそれまでであるし、ベルカンプが得点量産型のストライカーでないことは重々に承知している。それでも、ストライカーにとってゴール数は重要な評価軸であり、ベルカンプ以上に結果を残している選手はいる。ではなぜ、ベルカンプはその数字以上に神格化されているのだろうか。

一言でいってしまえば、やはりそれは“華やかさ”なのだろう。

極限まで磨き抜かれたそのボールタッチは数々のスーパーゴールを生み出し、年齢を重ねるごとにチャンスメイク力も洗練さを増していった。クール、マジカル、エレガント―ベルカンプという選手はそうした上質な言葉で形容される。

それだけに、ティエリ・アンリとのコンビネーションは抜群だった。圧倒的な得点感覚を持つベルカンプはアンリに幾多のチャンスを演出し、アンリへのマークが集中すれば隙を見てゴールも奪って見せた。アンリが「記録に残る選手」なら、ベルカンプは「記憶に残る選手」。ベルカンプの神格性は、アンリの存在によって大きくなっていたのかもしれない。

2003-04シーズン以来リーグ優勝の経験がなく、CLの舞台では5シーズン連続ベスト16で敗退しているアーセナル。FAカップで連覇を果たしたとはいえ、サポーターが求めるのはより大きなタイトルである。

今回は、アーセナルが最後にプレミアリーグを制覇した時の偉大なる背番号10、日本では“大先生”との異名がつけられているデニス・ベルカンプのマジカルなスーパーゴール集を見てみよう。

2005-06シーズンをもって現役生活を引退したベルカンプ。

長年在籍したアーセナルでキャリアを締めくくったわけだが、その引退試合には多くのレジェンドたちが駆け付けたのをご存知だろうか?

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