会心の勝利。ガンバ大阪とのナビスコ杯決勝を一言で表すならこの言葉がぴったりだ。

セットプレーとカウンターからの得点はまさにアントラーズらしさの極みで、90分を通して試合巧者ぶりが光った。

カップ戦の決勝で3-0というスコアは珍しい。相手が昨季の三冠王者であるガンバ大阪であれば尚更だ。なぜ強敵相手に完勝を収めることができたのか。その理由を明らかにしていきたい。

理由①出足の鋭さ

この試合のアントラーズはキックオフ直後からエンジン全開だった。

前半1分に金崎夢生がファーストシュートを放つと、その1分後には遠藤康が左足を振り抜く。その後も遠藤、中村充孝、金崎夢生、赤崎秀平のカルテットを中心に猛攻を見せた。

一方的に攻める展開になった理由のひとつに「出足の鋭さ」が挙げられる。

ボールロスト後のプレッシングは素早く、鋭いモノだった。球際での戦いにことごとく勝利したことで、相手にボールを持たせる時間を与えず、波状攻撃を繰り出せたのだ。

ガンバ大阪の長谷川健太監督は前半30分に西野貴治に代えて岩下敬輔を投入したが、戦術的な理由でセンターバックが交代するのは稀なケース。この一手からもいかにアントラーズの出来が良かったかがうかがい知れる。

「前線からの組織的なプレッシング」と「球際の激しさ」は石井正忠監督がチームに改めて植え付けたモノだ。大一番で指揮官の理想を完璧に体現できたのは今後のアントラーズにとって非常に大きく、後世に語り継がれる試合となったのは間違いない。

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