カタールで開催されているAFC U-23選手権。

上位3チームにリオ五輪の出場権が与えられる同大会で、日本U-23代表は準々決勝でイランと対戦。延長戦の末に3-0で勝利し、準決勝進出を掴み取った。

前線の核となる海外組を欠くものの、年齢制限のないトルコ1部のクラブを親善試合で破るなど、圧倒的な攻撃力を武器とする強豪イランを迎えた日本。

オリンピックを目指す若き選手達にとって、厳しい戦いが予想された。実際、攻め込んだのはイラン。フィジカルを生かした激しいプレスと、コンパクトな陣形を作ってのパスワーク、そして日本対策としてのロングボールに守備陣は手を焼いた。

それでも久保を中心にカウンターを仕掛け、何度となく訪れたピンチを守護神櫛引が防ぎ続けた日本代表は、相手を足場の悪い泥仕合に引きずり込む。カタール戦でも飛ばし過ぎで精度を落としたように、まだまだペースを調整出来ない経験の少ないイランは攻守両面で徐々にパフォーマンスを落とし、延長を見据えて策を練っていた指揮官手倉森誠が満を持して前線を交代。

シンデレラボーイになる可能性がありそうな豊川のゴールを皮切りに、中島がGKをあざ笑うように中距離からのシュートを連続で突き刺して試合を決めた。

大学生サイドバック室屋は正確なセンタリングで存在感を発揮し、原川はポジショニングを細かく調整しつつ試合を動かす頭脳となる。破壊力のあるミドルとボールを保持する細かいタッチのドリブルを得意とする中島、正確なボールタッチと視野を生かしたポストプレーで絶対的なエースとして君臨する久保、ボールの無いところでの動き出しで勝負出来る豊川、長い手足でシュートコースを塞いでくる櫛引。

それぞれの選手達が個性を発揮し、U-23代表は徐々にチームとしての個性を発揮し始めた。

今回は、日本U-23代表がイラン戦で見せた守備の問題点を指摘しつつ、ゾーンディフェンスの重要性を考えていきたい。

「勝って兜の緒を締めよ」ではないが、勝利の中には幾つかの疑問点も隠れていた。個人がそれぞれ良いプレーを見せる一方、組織的なプレーには疑問も残っていたのである。

準備期間の問題もあるのかもしれないが、ゾーンディフェンスは基本中の基本だ。チーム内で声を掛け合って修正すべき部分が、そのままにされているのは不安要素と言っていい。

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