MF 原川 力(川崎フロンターレ)

「りきに初めて感謝してる」……イラク戦後、殊勲の決勝ゴールを決めた原川に対し、中学時代からお互いを良く知る久保裕也がかけた言葉だ。

中学時代は天才肌の選手だったそうで、レンタル先の愛媛では10番を背負いトップ下でもプレーしている。しかし、京都と代表では基本的にボランチで、これまでJリーグで決めた得点は僅かに1。地味だ、谷間の世代だと揶揄された今回のメンバーのなかでもとりわけ目立たず、大会前、彼に期待する声は全く聞かれなかった。

だがチームの弱点と言われるボランチのポジションで堅実な働きを見せると、準決勝イラク戦の後半アディショナルタイム、五輪出場を決める強烈な左足のシュートを叩き込み、一躍「時の人」に。さらに決勝の韓国戦では後半から投入され、大逆転勝利の呼び水となった。

確かに地味な存在ではあるが顔付きや体格、プレースタイルやボールを持つ姿勢はどことなく中田英寿を彷彿とさせるものがある。

イラク戦でのシュートは、「ジョホールバルの歓喜」で岡野雅行のゴールを生んだ若き中田の左足でのシュートを思い起こさせた。この2つがどちらも「ドーハの悲劇」を払拭し、日本を歓喜に沸かせたのは偶然であろうか。

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