そもそも田中順也はなぜ使われていたのか?

2014-15シーズンにチームを率いていた若手監督マルコ・シウヴァは、基本フォーメーションを4-3-3に設定してシーズンをスタート。そのワントップの人材にはコロンビア代表FWフレディ・モンテーロ、そしてアルジェリア代表FWイスラム・スリマニの2名が計算されていた。

しかし、この二人は決してこのシーズン万全とは言えなかった。

2013-14シーズンの序盤に得点を量産したフレディ・モンテーロは、その後半戦でノーゴールが続き信頼を落としていた。ワールドカップでブレイクしたスリマニは出場停止で序盤を逃し、中盤戦でアフリカネイションズカップで離脱。さらにその後2度の怪我を経験している。

その中でチャンスを掴んだのが田中順也だった。16節のブラガ戦で途中出場から決勝フリーキックを決めた彼は徐々にプレー時間を増やし、22節のジウ・ヴィセンテ戦で初のフル出場を果たす。


飛び出しに開眼しつつあったジョアン・マリオとの関係が悪くなかったこともあって、スリマニとモンテーロがベンチにいながらにして田中順也がスタメン起用されることも。終盤の数試合は4-4-2にシステムが変わり、モンテロとのコンビも組んだ。

日本で放送されたこともあって「2月のヴォルフスブルク戦(ヨーロッパリーグ)でチャンスを決められなかったから評価が落ちた」という論調もあるようだが、田中順也が継続的に起用されたのはむしろそれから数週間後の3月~4月である。

その結果、最終的にはおよそ540分の出場で5ゴールと高いレートを残し、アシストも2度記録。継続的に起用されれば……という期待感を持たせつつも、その一方でチームは3位。カップ戦でタイトルを取りつつも、リーグでは「いつものように」ベンフィカ、そしてポルトの後塵を拝した。

そこでクラブは大きな改革に乗り出すことになる。その手始めが、かつての所属選手でもあり、ベンフィカで強烈な手腕を発揮したジョルジュ・ジェズス監督の招へいであった。

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