恵まれてるからこそ、こだわりがなくなる

――昨年アミティエSC京都は動体視力向上ツールを導入したり、面白い試みもされていますね。

草木:今は科学も入ってくるからね。僕らの時は水飲むなの世界やった。ユースでフィリピン行った時には「これ、死ぬで」と(笑)。ドイツに行った時も一日でアップルジュース一杯しかくれへんかった。

――変な話ですけど、そのころでもそうなんですね。

草木:尾崎さん(※1)が血尿出るのもわかるわ。あれだけやったらそりゃ出るでと。合宿ではカレンダー作って、毎日寝るときに消して、「ああ、あと何日で帰れる」とか。

水沼さん(※2)がドイツでコーラを販売機で買ってるのを見つかって強制送還された。「炭酸はあかん」と。そのくせ、ドイツでは炭酸入りの水を出しよる。「あかん言うてるやん」と(笑)。

――最先端のトレーニングだったんですよね。

草木:でも戦術的、技術的にトレーニングがあったかと言われるとそうでもないからね。分析もない。

――他の国の選手と対戦しての違いは?

草木:なんでこんなボールを動かすんやろ?と思ったね。あの時はまだドリブル主体やったからね。パスで崩すアイデアはなかったよ。風間さん(※3)らがボールキープしたりとかね。引きつけて離すとか、それくらいの指導やったんちがうかな。

今の子たちは恵まれとるよ。手取り足取りや。親鳥が「これ以上細かく砕けへんよ、食べや」って餌を食べさせてもらってる感じやね。

――当時からはギャップがありますよね。教えることにしても。

草木:だからこそ、こだわりがなくなる。これくらいでええ…みたいなチームはやっぱり勝てへん。これをやるためにもっとこうしよう、という発想がない。それなりにできるけども、70点くらい。オリジナリティがないねんな。

Jリーグになって観客動員は増えたけど、ユースからトップまで一貫的なものはなかったね。監督が変わるから。

※1:尾崎加寿夫氏。元日本代表FW。奥寺康彦氏に続き、日本人としてドイツ・ブンデスリーガでプレーした2人目の選手として知られる。

※2:水沼貴史氏。元日本代表FW。日産自動車、横浜マリノスでプレーした名ドリブラーで、水沼宏太選手(現セレッソ大阪)の父。

※3:風間八宏氏。元日本代表MF。ドイツでプレーした後マツダ、サンフレッチェ広島でプレー。引退後は筑波大学、川崎フロンターレ、名古屋グランパスを指揮。

【次ページ】指導者のレベルも上がっているが…