ウディネ・イズム。北中米やアフリカからも選手を獲得する

ウディネーゼといえば、元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニが1990年代後半にセリエAで3位と上位躍進させたことで有名なクラブである。

オリヴァー・ビアホフ(ドイツ代表)、パオロ・ポッジ(イタリア)、アモローゾ(ブラジル代表)を中心にした3トップ、トーマス・ヘルヴェグ、マルティン・ヨルゲンセンのデンマーク代表勢らが当時の中心メンバーであった。

ウディネーゼは「世界各地から若手選手を格安で買ってきては育てて売る」というスタイルで成功を収めてきたチームである。

ヨーロッパや南米はいざ知らず、今まで目を向けていなかったアフリカ(スティーブン・アッピアー、シヤボンガ・ノンヴェテなど)、北中米・カリブ(サムエル・カバジェロなど)といった地域の国内リーグからも活躍できそうな選手を引っ張ってくるというスカウト網がウディネーゼらしさといってよいだろう。

世界にサテライトチームを持つ。ウディネーゼのやり方

ジャンパオロ・ポッツォ体制のウディネーゼが次に目を付けたのがペルージャと同じくチームを複数持つことであった。しかし、ウディネーゼがペルージャと違うのは「世界に目を向けた」ことである。

スペインのグラナダ(2009年)、イングランドのワトフォード(2012年)と5大リーグの下部に低迷するチームを購入し選手をレンタルの形で送り込む。結果、ワトフォード、グラナダは1部昇格を勝ち取るなど好循環を生み出した。

イタリアのビッグクラブでは毎シーズン20人、30人といった単位の選手をローンで世界各国のクラブに送り込むものだ。

イタリアの下部チームではペルージャほどではないが、自前で選手はほとんど持たずビッグクラブからのローンでやりくりする実質サテライトチームのようになっているケースは少なくない。

ウディネーゼは中小クラブであるプロビンチャという単語で表されるチームだが、ビッグクラブと同等の20人、30人といった人数を毎年傘下のチームを含めた世界各国のチームへ送り込んだ。

そして、ウディネーゼのスタイルはここまで成功している。ひとえに見切りが上手いのだ。

例えば、グラナダはリーガ・エスパニョーラ残留を果たせず2部でプレーしているが、2016年に中国人実業家ジャン・リージャン(蒋立章)へ売却している。また、息子のジーノ・ポッツォがオーナーを務めるワトフォードは今季もプレミアリーグに所属しているが、ウディネーゼから選手を大量に借りるということはもうしていない。独立してやっていけるだけの力を身につけた、ともいえるだろう。

また、ガウッチ、ポッツォともにチームは買った後に短い期間で売却も経験している。素直に複数チームを運営することは難しいだろうが、投資の意味合いで購入しカテゴリをあげるなどして売却するという手法でもあるのかもしれない。そう考えるとザスパクサツかtonan前橋のカテゴリを引き上げたのちに売却や買収をするというのは1つの選択と言えるだろう。

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