選手を大量保有するイングランドのケース

サッカーの試合では1チーム11人しか先発することはできない。途中交代を入れても最大14人だ。しかし、イングランドでは50人、60人のプロ契約選手がいるのが普通だ。

イングランドではその代わりに、アカデミー以外にプレミアリーグ2(21歳以下のリーグ戦)、短期レンタル(短い期間下部リーグへ移籍できる)がほぼ1年中できるなど選手が経験を積める土壌が多く用意されている。そのために実質アーセナルのサテライトのような提携関係にあるようなチームは少なくない。

ペルージャとウディネーゼのケースのように直接サテライトチームを持たずとも選手たちに活躍の場が用意されているのだ。

「他の選択肢はなかったのか?」ザスパの予算を考える

さて、ここで改めてザスパのケースに立ち戻ろう。

ヨーロッパのケースを学ぶと(イングランドは特殊なケースであり除くとしても)ザスパには複数の選択肢があったはずだ。

1つは、他国へサテライトチームを作ること、もう1つがU-23チームを別途作ることである。

だが、カン・スイルのインタビューによると「ザスパクサツの予算は55億ウォン(およそ5億5千万)」で名古屋グランパスの10%にも満たないという。

確かに公式サイトの財政報告によれば平成28年の売り上げはおよそ5億4700万円だと言われ、2015年9月のサポーターズカンファレンスによるとチャレンジャーズの予算は1000万円超えの規模らしい。

U-23チームの年間予算は発足当時5000万円は少なくともかかると言われていた。数年間の運営の結果、実際には1億円以上の支出が必要になっている。つまり、U-23チームをJ3に参戦させることができるのためにはお金が必要なのだ。

そして、もう1つが他国へサテライトチームを作ることである。

実際に他国へ進出したJリーグクラブの例としては、アルビレックス新潟シンガポール、横浜FC香港があげられる。

しかし、これらは若手選手を送り込みその後主力へと成長させているという点については、まだ大きな成果を残しているとはいいがたい。また、シンガポールであっても年間予算は1~2億程度は必要である。

このようにU-23チームや他国でサテライトチームを作ることは大きな予算が必要である。

ということは必然的にザスパクサツの予算が大きくならなければならない。2015、2016年と2シーズン連続で黒字を達成したザスパだが小さくて良好な経営では、そうした大きな支出をすることは難しいのだ。

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