今季のリーグ・ドゥの序盤戦は、カーンの独壇場だったといえる。昨季1部から降格したが、監督はフランク・デュマが留任。主力選手もルメートルがナンシーに、プランテがサンテティエンヌに、ゴミスがヴァランシエンヌに、そしてサヴィダンがモナコに(後に心臓疾患が発覚して引退した)引き抜かれた以外はチームに残り、戦力ダウンを最小限に留められた。
そして開幕直後からカーンの快進撃が始まった。開幕前のカップ戦では敗北を喫したが、リーグ第1節で昇格候補のナントを撃破すると、13節でブレストに敗れるまで12試合で9勝3分という好成績を残す。カウンターを武器とするチームが多い中、デュマ監督の下で作り上げられた能動的な攻撃サッカーは異彩を放ち、オセールからレンタルで獲得したランジルのブレイクもあって圧倒的な勝負強さを発揮したのである。
ところが、そんなカーンがこのところ冴えない。徐々に得点力を欠き引き分けに持ち込まれる試合が増えてきたのである。12月は1勝1分1敗、1月は2勝2分、2月は1勝2分1敗と、思ったように勝ち点を伸ばしていない。リーグ2週目となって相手に研究されている上、スタメンのカンディア・トラオレやヤタバレ、エララビがあまり結果を出せず、序盤の好調を引っ張ったランジルのパフォーマンスもやや下降気味。彼ら前線の選手はなまじ個人の力があるため、悪いときはやや強引に過ぎるプレーに走りがちとなる。リーグ屈指の司令塔であるニヴェがいくらサポートしても、連携が取れた崩しが見られない試合も増えてきた。
調子を落としたカーンに対して追い上げを見せているのがスタッド・ブレストだ。第5節までに3敗とスタートダッシュに失敗したが、その後は好調を維持。11月から2月末まで公式戦14試合負けなし、6連勝1回、5連勝1回と快進撃をみせた。組織的なプレッシングと、ひとたびボールを奪えば繰り出されるショートカウンターが機能しており、ランスの下部組織から加わったノラン・ルーがここまで12ゴールと大活躍しているほか、トップ下のグルジもそれに続く8ゴールと、高い得点力を維持。さらに1月には「新しいリベリー」とも言われる弱冠19歳のマティアス・オートレが台頭。ひたひたと首位に迫っている。
この2チームは昇格レースで一歩抜け出しており、来期リーグ・アンで見られることはほぼ確実だろう。むしろ来期をかけて熾烈な勝負となっているのは、残り1つの昇格枠が与えられる3位を巡っての争いだ。
3月1日の試合でライバルとなるル・アーヴルとの直接対決を制し、勝ち点を44に乗せて一歩抜け出したのがメスだ。ショートパスを多用して最終ラインから組み立てる、リーグでは珍しい能動的な攻撃サッカーが持ち味。メンディやオモトヨッシなどストライカー陣の得点力が今1つなのが残念なところだが、以前マルセイユに所属していたヨアンセンや冬に加入したヴィルトール、そして今季成長を見せているサイドアタッカーのベサなど2列目の攻撃力が高く、トップの決定力不足をカバーしている。
そして4位以降はまさしく大混戦だ。4位のニームは現在では珍しい3バックを使用するチーム。とにかく右サイドを主戦場とするムカンジョのドリブルが強烈で、堅守速攻を狙う戦術を上手く結果に結びつけている。冬の移籍市場でも活発に動き、PSGからヤニック・ボリ(元浦和レッズのバジール・ボリの甥っ子)を、ル・マンからアルフセイニ・ケイタを獲得して戦力をアップ。昇格したいという意欲が感じられるチームだ。
またその下にも、3部から上がってきたばかりのスタッド・ラヴァル、鈴木規郎選手が所属するアンジェ、そして1部からの降格組であるル・アーヴルが勝ち点差3で付けている。ラヴァルはリーグ・ドゥらしい堅守からのカウンターを得意とし、先日のアフリカネイションズカップでもプレーしたガボン代表のド・マルコリーノの身体能力と、2トップの相棒であるジュネスのチャンスメイク、そして両ウイングの仕掛けが武器。特別目立った選手はいないが、まとまりがあるチームだ。アンジェは現在18ゴールと得点王まっしぐらのストライカー、アントニー・モデストが原動力となって昇格レースに絡む。ル・アーヴルも冬に積極的な補強をし、イストルの司令塔メスルーブと、サンテティエンヌから元ユース代表ストライカーのジグリョッティを獲得。鋭い速攻とサイドアタックにさらに磨きをかけている。この3チームの下にもアジャクシオ、トゥール、セダン、アルルと大きな差がなく続いており、5位のラヴァルから16位のディジョンまでの勝ち点差は、わずか7。どこが昇格争いに飛び込んできてもおかしくない状況だ。
リーグ・アンは中位の戦力が均衡しており、例え2部3位での昇格であってもチームのまとまりが崩れなければ、2008-2009シーズンのグルノーブルのようにいきなり結果を残すことも可能だ。残り12試合、その挑戦権を得ることになるチームは一体どこになるのか。日本では情報が少ないリーグ・ドゥ。しかし鈴木規郎選手が所属していたり、若手の台頭が著しいこともあって、なかなか面白いリーグである。是非皆さんにも注目してほしい。