今シーズンのセリエAも最終節を残すだけなり、激しいスクデット争い、ヨーロッパカップ出場権をめぐる争い、そして残留争いが繰り広げられている。最終盤に突入したこの時期にスクデットを複数のクラブが争っているのは久し振りの事であり、観ている我々を楽しませてくれている。

さて、ここではそんなセリエAの中で活躍する若手イタリア人選手にスポットを当て、昨シーズンと今シーズンを比較した上で、各々にとって飛躍のシーズンになったのかどうかを考察してみたい。今回は株を上げた選手編である。対象は、昨年スウェーデンで行われたU-21欧州選手権にアッズリーニのメンバーとして出場した選手としたい。

ドイツが圧倒的な強さで初優勝を飾った昨年のU-21欧州選手権。アッズリーニこと、イタリアU-21代表は準決勝でドイツに0-1で敗れ、大会を去っている。この大会の主だったメンバーの顔触れは以下の通り。

【GK】
コンシッリ(アタランタ)
シリグ(アンコナ→パレルモ)
【DF】
モッタ(ローマ)
アンドレオッリ(サッスオーロ→ローマ)
ボッケッティ(ジェノア)
クリッシト(ジェノア)
ラノッキア(バーリ)
【MF】
アバーテ(トリノ→ミラン)
カンドレーヴァ(リヴォルノ→※ユヴェントス)
マルキージオ(ユヴェントス)
デ・チェーリェ(ユヴェントス)
チガリーニ(アタランタ→ナポリ)
ポーリ(サッスオーロ→サンプドリア)
【FW】
アックアフレスカ(カリアリ→アタランタ→※ジェノア)
バロテッリ(インテル)
ジョヴィンコ(ユヴェントス)
※2010冬のメルカートにおいての移籍

上記のメンバーにおいて今シーズン飛躍を遂げたのは、シリグ、ボッケッティ、クリッシト、ラノッキア、マルキージオ、カンドレーヴァ、ポーリの7人であろう。

シリグは、ジェノアで守護神でありアメーリアとのトレードという形でチームに加わったルビーニョの控えとしてシーズンをスタート。6節からスタメンを奪取すると、たちまちイタリア代表にまで登りつめる。往年の名GKであり、11月まで指揮を執ったゼンガから多くの教えを受け、スウェーデンでコンシッリの控えに甘んじた昨夏より大きく成長したのは間違いない。

ガスペリーニ率いるジェノアはセリエA20チームの中で最も攻撃的なフォーメーションで戦うチームである。3-4-3というシステムでありながら、流れの中でもDFが攻撃参加するスタイルを崩していない。当然後ろの選手には負担が押し寄せる。そのような環境下で3バックの左を担当し、シーズン途中から真ん中にポジションを移したボッケッティは大きな経験を積んでいる。インテルを相手にアウェイで無失点で切り抜けた27節の試合で最終ラインをしっかりと統率する等、今後に期待を持てるプレーを披露している。しかし、1対1の対応やポジショニングでまだまだ甘いところが散見されるなど課題も多い。着実に階段を登っている段階のボッケッティにはこれからも注目である。

そんなジェノアにおいて、今シーズンのクリッシトはウイングバックで起用されている。正確なクロスボールを供給するシーンが多く見られ、攻撃の面でのチームへの貢献が大きく且つ幅広くスペースをカバーする守備の役割もこなしている。現在のアッズーリでは所属するユヴェントスで低調なパフォーマンスに終始するグロッソとポジションを争っており、クリッシトに掛かる期待は大きい。南アフリカでクリッシトがスタメンとして試合に出る可能性は高い。

恐らく、今シーズン最も大きなサプライズを提供した若手がバーリのラノッキアである。それは数字によく表れている。残念なことにラノッキアは1月に負ったケガの為、今シーズン17試合にしか出場できていない。ラノッキアが出場した17試合でバーリが喫した失点は16で6勝6分5敗。一方、欠場した20試合での失点は33で6勝5分9敗。ひとつのエピソードを語る上では十分な差が出ているといえるだろう。来シーズンのインテル行きが既に決まったともいわれるラノッキア。彼が前半戦最大のサプライズといわれたバーリを支えていたのは紛れもない事実である。マルディーニ、カンナヴァーロ、ネスタの後継となるようなCBがなかなか出てこなかったイタリアに、ようやく出現した希望。ラノッキアには来シーズン以降、大きな期待が掛けられている。

2009-10はユヴェントスというクラブにとって屈辱にまみれたシーズンとして記憶されることだろう。前シーズンを2位で終え、大型補強を敢行した彼らにとってスクデットが目標だったからだ。もはや来季のチャンピオンズリーグ出場の可能性が消滅し、ヨーロッパリーグ出場権を獲得するのがやっとといった惨状である。そんなユーヴェにおいて、最もポジティブなパフォーマンスを発揮したのがマルキージオである。3枚の中盤の一角として起用され、様々な局面に顔を出しチームを助けている。最近のユーヴェの試合では、マルキージオのパフォーマンスがそのままチーム全体のパフォーマンスを表しているように見えるほどだ。彼にとってのハイライトは15節のインテル戦でのゴールだろう。見事なダブルタッチからチップキックでのフィニッシュは今シーズンのベストゴール候補である。所属クラブでのパフォーマンスからマルキージオがW杯に行くことは間違いない。恐らく、代表でも中盤3枚の1枚として起用されるだろう。代表での役割はクラブでのそれに比べ、守備をより意識したものとなるだろうが、攻撃の局面での絡みにも期待したい。

ユーヴェの中盤にはもうひとり若手イタリア人選手がいる。1月にリヴォルノから移籍して来たカンドレーヴァである。中盤ならどこでもこなし、攻守両面においてチームに大きな貢献ができる選手である。ユーヴェ加入以降、その能力を十分に発揮しているとは言い難いが、チーム全体のパフォーマンスレベルに引きずられている感もある。2008年トゥーロン国際大会、2009年U-21欧州選手権とステップアップを果たして来たが、シーズン後のW杯は当落線上だろう。シーズン当初からユーヴェの一員として迎える来季以降、カンドレーヴァの真価が問われるはずである。

昨夏、ジージ・デル・ネーリ監督は、アタランタからティッソーネを引き連れてサンプドリアへやって来た。これはアンジェロ・パロンボのパートナーとして中盤センターを任せる為であったのだろう。ティッソーネは序盤こそスタメンだったものの今では完全にベンチ。そのポジションに収まったのが20歳のアンドレア・ポーリである。彼もまた、攻守両面でチームを支える選手だ。隣でプレーするパロンボの補佐役として、重要な役回りを演じているといえるだろう。チャンピオンズリーグを争うチームで大きな経験を積んでいるポーリだが、得点に絡む場面など、こと攻撃面での貢献はまだまだ多くない。チャンピオンズリーグに出場するとなれば必然と補強されるであろうポジションにおいて、存在感を出していけるか、来季以降の更なる飛躍に期待したい。(後編へ続く)

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