苦悩する日本人ドリブラーたちの思考。

乾貴士。

野洲高校でセクシーフットボールの中核を担い、セレッソ大阪での活躍を経てドイツの地で戦っている小柄なドリブラーは、安定したパフォーマンスを発揮しきれてはいない。勿論、その圧倒的なポテンシャルを垣間見せる瞬間は少なくないが、日本代表への定着や、トップクラブへの道を切り開く上ではまだまだ物足りないと言っていいだろう。

彼のインタビューからも、前の2人のようにドリブルについて語っている部分を抜粋した。

「そうっすね、まあ、1対1の部分で勝てるようにもなりましたし、ドリブルで仕掛けたりというのが、まあこの1年でだいぶできるようになったので、あとはもっと上を目指してやりたいなと思います」(2013年)
http://www.bundesliga.com/jp/liga/news/2012/0000254126.php

―ドイツの2部のサッカーで衝撃だったことは?
「衝撃だったものは特に無いですけどね。(フィジカル面が)強いのは分かっていました。僕は日本でも弱い方だったけど、こっちに来たら強くなれるなどとは思っていませんでした。スピードでかわせればいいですし、フィジカルの強さをかわす方法はいくらでもあります。」(2012年)
http://www.goal.com/jp/news/1579/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB/2012/03/27/2994368/乾貴士独占インタビュードイツは持ち味を出しやすい

比較してみると解るが、乾のコメントは「自分の技術」に関わるものが多い。ブンデスリーガに移籍し、「相手の体格が変わっていることなど」は勿論意識しているようだが、「それをどのように対処していくか」という面では自らの技術に頼っている印象を受ける。

大津祐樹。

180cmというドリブラーとしては大柄の肉体と、フットサルで培われた柔らかなボールタッチを武器にする日本期待の若手ドリブラーの1人は、来シーズンのJリーグ復帰が決定した。度重なる怪我が、オランダの地でその能力を発揮する妨げになったという面はあるが、そこだけを苦難の原因とすべきではないだろう。

ドリブルがうまくなるコツは?
大津「ひたすらボールに触ることじゃないですかね。あとは相手の重心を見ることも大事になると思います」

ドリブルの時、視点はどこに?
大津「相手の重心も見ますが、やはりボールを見ないとしっかりとしたボールタッチはできないので、ボールも視界に入れています。でも、一番大切にしているのは周囲の状況を確認することですね」(2011年)
http://news.livedoor.com/article/detail/5728701/

大津は1つの基本としての状況の把握、そして対面するDFの重心を観察することを重要視している点で、今回取り上げた日本人アタッカーの中では最も具体的に技術を言語化することに成功しているものの、やはりそれは自分のドリブルをどのように使うか、という部分に限られているように思える。相手の重心を観察しているが、その先、「相手の重心を自ら動かす方法論」や「相手の思考」には未だ考えが到っていないのかもしれない。

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