「もしそれがまだ見つかっていなければ、探し続けなくてはならない」

"If you haven't found it yet, keep looking."

英語を学び始めたばかりの中学生でも解るような簡易な表現。これは、Appleの創設者としても知られるスティーブ・ジョブスの言葉だ。

常に革新を求めた男の言葉は、力強く道を指し示す。

今回は、この言葉と共に筆を取ろうと思う。

「3センターの専門家」アッレグリ

アジアカップでの「予想外」と表現するに相応しいであろう敗北、そして指揮官ハビエル・アギーレの解任から約1ヶ月が過ぎた。フットボールメディアは新監督探しを続ける協会の行方を掴もうと奔走し、世間の注目は「どんな新監督が日本代表にやってくるのか」、という面に移りつつある。

しかし、本当にハビエル・アギーレのアジアカップにおける敗因は解き明かされたのだろうか。

勿論灼熱のオーストラリアでプレーする中でのコンディション調整面の問題、長友選手が「僕らがあれだけチャンスをつくりながら、1点しか取れなかったことが問題だと思います」とコメントしたように「決定力」に関する議論などはメディアでも扱われていたものの、中盤の構成や守備面における議論は深まりきれていない。

そういった理由から、今回は中盤の構成における問題点において現ユベントス、元ACミラン指揮官であるマキシミリアーノ・アッレグリが執筆したUEFAコーチライセンスの卒業論文である「3MFにおける各MFの特性」を基盤として読み解いていきたい。

約10年前、マキシミリアーノ・アッレグリはUEFAコーチングライセンスを取得した。

選手としてはイタリア代表などには縁が無いレベルの選手だったものの、指揮官としてセリエAのカリアリで印象深いパフォーマンスを披露すると、一気に名門ACミランへ。ACミランではCLにおいて、圧倒的な力を誇ったバルセロナを相手に守備で素晴らしいパフォーマンスを披露し、「3MFの専門家」として知られるようになった。

現在、イタリア王者ユベントスを指揮する「3センターの専門家」の視点は論文を執筆したコーチングライセンス取得前の時点で既に興味深いものだった。同時に、日本代表もアギーレ指揮下では3センターを採用。基本的に長谷部を底に置き、香川と遠藤が組む形を使って攻撃的に振る舞うフットボールを目指した。

では、日本代表と随時比較しながらアッレグリの論文を分析していくこととしよう。

【次ページ】3センターにおける「4番」。「指揮者」としてのMF。