このアッレグリの描写の中で、最も興味深いのは「テクニック面」「ポジショニング面」「指示能力面」に言及している一方で、「個人の守備能力」に対する言及は多くないというところだ。「このポジションに一番守れそうな選手を置く」というのはフットボールの世界で頻繁に行われていることだと思うが、アッレグリは個人での守備能力ではなく「チームの守備能力を高められる能力」をこのポジションに求めている。

実際、アッレグリが現在「4番」として使っているのは、アンドレア・ピルロ。

彼はぶつかり合いに弱く、個人としてのボール奪取能力は低い。翻訳者もアッレグリが指し示す理想の「4番」はアンドレア・ピルロだと推測している。個としてのフィジカルなどで劣ったとしても、それはアッレグリにとって大きな問題ではないのだろう。勿論ACミランで底を務めたナイジェル・デ・ヨングのように、「求められる特性を全て兼ね備えた上でフィジカルでも戦える選手」がチームにいれば別なのだろうが。

長谷部は「ああいうふうにゲームを組み立てられて、なおかつ彼ら以上に守備力のある選手。それが理想だと思う」と、ピルロやシャビ・アロンソを理想としながら語っているが、恐らく彼の言う「守備力」は「個人の守備力」であって周りの守備を調整する力ではない。

この辺りの小さな勘違いが、少しずつ日本の中盤守備を蝕んでいった。日本サッカーでは「戦術における指示能力」というものにも言及する機会が少ない。そこも1つのポイントなのかもしれない。

特に守備において、周りのポジションを整える能力の必要性は、緻密化する現代フットボールにおいては増している。チームが狂っている時は即座に察知し、それをチームに伝える。マスチェラーノやデ・ヨングといった世界レベルの「4番」はピッチ上の指揮官と言うに相応しい。

組み立てにおいて長谷部は「いい面も出たけど、まだ課題が多いですね。攻撃では自分で持ち運んだり、パスを出した後、もう1回もらいにいくとかいろんなバリエーションを出していきたい」というコメントをしていたが、攻撃において「ポジションを離れすぎない」という意識が弱かった可能性もある。実際、攻撃でも守備でも長谷部が高い位置を取ろうとすることで危険な場面になる場面は散見された。

このポジションは、チームにとっての攻守における基準点である。勿論、「長谷部・遠藤」のコンビ以外に手を全くつけられなかった前任者ザッケローニなどの責任もあるだろうが、経験の少ない長谷部に任せたアギーレの選択は恐らく間違っていたのだろう。

アジアカップを軽視していたのか、情報を与える上でアギーレのサポートを十分に出来なかった可能性が高い日本人コーチ、協会なども海外から招聘した指揮官との情報における連携を強化しなければならない。例えば「過去の指揮官のアジアカップにおけるレポートを作る」、「アジア各国のスカウティング的な資料を体系的に集めておく」などの方法で、アジアカップに使える情報の蓄積は可能なはずだ。

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