監督からの信頼とチーム状況

次に監督からの信頼とそれを取り囲むチームの状況だ。

ゲッツェは2010年のW杯後に代表デビューしており、その時の年齢はなんと弱冠18歳である。そこでここまで残した成績は46試合16ゴールと立派なものだった。何よりW杯決勝での決勝点である。

あのゴールはドイツ国民の目に焼き付き、彼を期待の若手からヒーローへと転身させたことは想像に難くない。何より監督の信頼を勝ち取った。タイトルがなかなか取れず、批判を浴びていたレーヴ政権下において、W杯優勝を決めてくれた選手というのは監督にとってもヒーローであることは間違いない。それが今も代表で重用されている要因の一つのはずだ。

また、チーム状況も彼の代表キャリアを後押ししている。

2014年のW杯時、唯一のストライカーであったクローゼは代表引退し、一番前でプレーした経験のある選手は非常に少なくなった。クローゼ以来優秀なストライカーを輩出していないドイツ代表の中で、ゲッツェがセンターフォワード(偽9番)で起用されるのに首を傾げる人はそれほどいないだろう。

一方、バイエルンでは代表ほどの信頼は勝ち得ていない。

昨季最も大事な試合であったはずのCL準決勝のバルセロナ戦では2戦とも先発落ち。おまけに途中から出場した時間は2試合合わせても15分ほど。

バイエルンでは62試合19ゴールという結果を残しているが、代表での成績に比べ、見劣りするのも確かだ。今季のチーム状況も彼にとっては思わしくない。

それは前述したドウグラス・コスタの加入が直接的な原因ではない。

ドウグラス・コスタはウィングとして昨季のゲッツェのポジションを担っており、ゲッツェの出場時間を減らしているかもしれないが、彼のポジションは元々中央である。そこで争うべきは世界屈指のストライカー、レヴァンドフスキや代表でもチームメイトのミュラーだ。ゲッツェがクラブで活躍するためにはまず彼らにポジション争いで勝利しなければならない。

また、理解に苦しむが今季はビダルを獲得し、グアルディオラは彼を高い位置でも使う素振りを見せているので、ゲッツェのライバルはさらに増えた。これはゲッツェに対する信頼、期待のなさの裏返しとも取れるのかもしれない。

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