理由②小笠原満男の存在

「前線からの組織的なプレッシング」と「球際の激しさ」が完璧に機能したアントラーズだったが、肝心のゴールを奪うことは出来ずスコアレスで前半を終えた。

ここで多くのサポーターが不安を感じたはずだ。相手にはパトリック、宇佐美貴史といったワンチャンスをモノにできるストライカーがいるだけに、「試合を支配しながら一発に沈む」という最悪のシナリオも考えられた。事実、後半の立ち上がりはガンバがパスワークからフィニッシュに持ち込む形が見られた。

この流れを断ち切ったのは、待望の先制点だった。

後半15分、小笠原が蹴ったコーナーキックにファン・ソッコが頭で合わせる。この1点で流れを完全に引き戻した。精度の高いプレースキックで歓喜をもたらした小笠原の存在は、この日も際立っていた。

球際の激しさはチーム随一で、セカンドボールをことごとく拾い続けた。大きな声でチームメイトを鼓舞し、的確なポジショニングを指示する姿はまさに「ピッチ上の指揮官」。

石井監督の戦術を完遂できたのも、背番号40の存在があったからこそである。

金崎の2点目、カイオの3点目にも絡み、攻守両面で絶大な存在感を放った小笠原。MVP受賞は当然だったと言える。

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