では、特に有名な各指揮官の特性について図を用いて考えていきたい。

まずは、ゾーンプレスを生んだ革命家アリーゴ・サッキ

プロのサッカー選手経験無しで指揮官として大成した彼は、「騎手になるために、馬に産まれる必要はない」という言葉を残している。父親の経営する靴屋で働きながら、独学でフットボール理論を完成させ、圧倒的な個人能力を持ったマラドーナを止めるために、組織で相手のボールを奪い取るというゾーンプレスを完成させた奇才は、多くの指揮官に影響を与えている。

オランダのヨハン・クライフ、イタリアのアリーゴ・サッキ。この2人は、戦術におけるパラダイムシフトを引き起こした。

大きく言ってしまえば、イタリアの指揮官で完全に彼の影響から逃れられたものはいないだろう。「サッキ以前」と「サッキ以後」で、フットボールは大きく変化した。

その中でも強くアリーゴ・サッキの影響を受けているのは、カルロ・アンチェロッティだ。

ミラン、チェルシー、パリ・サンジェルマン、レアル・マドリーという錚々たるクラブを指揮しているイタリア人指揮官は、「サッキとは良く連絡を取っている。彼は私の師だ」とコメントしている。選手としてACミランで活躍し、アリーゴ・サッキの革命に大きく貢献した彼は、類まれなる吸収力でサッキの理論を吸収した。

また、図にはスペースの都合上入れられなかったものの、ローマ時代にゾーンディフェンスを得意としたスウェーデン人指揮官ニルス・リードホルムの指導を受けたことも、彼のフットボール観を形作っている。カルロ・アンチェロッティは、その2人の指揮官から学んだゾーンディフェンスを取り込みつつ、柔軟性を生かして様々なフットボールを吸収していった。

サッキやカペッロの様に戦術に対する知識が豊富な一方で、頑固なイメージが付き纏っていた古風なイタリア人指揮官と違い、アンチェロッティは変化に敏感で、柔軟な指揮官だ。様々な国での指揮経験を持ち、選手のマネジメントにも優れた彼は、新時代の指揮官とも言えるのかもしれない。レアルではジネディーヌ・ジダン、PSGではクロード・マケレレと共に働き、将来の指揮官養成にも携わっている。

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