中央にボールがそこまで入らなかったこともあり、ヴァーディーも得意とする右サイドへと何度となく流れた。しかし、そこはリヴァプールがターゲットとしたゾーン。容赦ないプレッシングで、彼も封じられた。

レスターにとって、攻撃の両主軸を潰された事はカウンターを狙っていく上で大きな問題を引き起こした。長いボールを苦し紛れに入れようとも、岡崎とママドゥ・サコでは高さのミスマッチがある。空中戦でも主導権を握られ、真綿で首を絞められるようにレスターは勢いを失っていった。

図を見ても解るように、リヴァプールは中央ではなくサイドでのプレッシングに力を入れた。ドルトムント時代は中央、ボランチの位置でボールを奪い取るゲーゲン・プレッシングを志向したクロップだが、レスターを相手にするために形を変化させたのである。

この場面で、サイドに5人。外に流れたヴァーディーにCBがマンマークしながら、サイドではボールが入っても簡単に取り囲めるような数的有利を作り出している。

つまり、右に流れることを好むヴァーディーとマフレズのスペースに複数人のプレッシングで蓋をすることで、レスターの起点を封じたのだ。逆サイドのマーク・オルブライトンは、献身的だが起点になれるタイプではない。右サイドで時間を作れてこそ彼が生きてくることも、リヴァプールは見抜いていた。

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