では、ケーススタディとしてU-23日本代表のイラン戦で問題となった守備を見てみよう。

遠藤が縦に無闇に仕掛けてしまい、ボールを失う場面なのだが、中盤がボールロスト時のイメージを全く持っていない。原川のポジションがサイドに寄っているだけでなく、両サイドハーフもパスコースを作るというより縦に急いでしまっている。

これはゾーンディフェンスの問題ではないが、全体の意志共有における問題だ。前に仕掛けた遠藤だけでなく、サポートに入りきれない周りの問題もある。パスコースを作っておけば、彼がこの選択をしなかった可能性もある。DFラインも、FWとの距離を詰められていない。

ゾーンディフェンスにおいて、最も致命的な問題となったのはこの場面だ。相手DFラインが余裕を持ってボールを保持。ボール保持者へのプレッシャーはないが、イランが速攻を仕掛けられる状況ではない。

この後、左サイドのDFにボールが渡って行く。

左サイドで少しボールが回った後、浮き球がFWに入る。マーカーがいない状態で、CBは彼との競り合いを無視。高さで劣る遠藤が競り合う状態になり、そのまま落とされて中央に起点を作られる。

一気にカウンターを受けた訳でもなく、DFラインにプレスを仕掛けていたという感じでもなかったのに、左MFの中島は戻りきれておらず、広大なスペースが中盤に空いてしまっている。ボールが左サイドから入ったこと、イランが攻撃を仕掛けていたことを考慮すれば、内側に絞れる準備をしておくべきだった。

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