「みんなちがって、みんないい」とは言えない

ただ、これだけ多様な「障がい者サッカー」をまとめるには、本当に大きな苦労があった事が想像できます。JFAの田嶋会長は「十数年の懸案だった」と言いましたが、それはJIFF発足の準備段階として2015年に始まった「障がい者サッカー協議会」で、4月22日の第1回会合後の記者会見にだけ行った程度の私ですら感じました。

それが分かるのが次の<表3>、各団体の組織形態や登録者数です。

<表3>JIFF参加団体の組織形態・登録者数

昨年の第1回協議会に参加した各団体の理事や事務局長に私が質問したのが、この<表3>の穴埋めでした。名称を見れば対象者はほぼ分かりますが(ソーシャルは別として)、どれだけの方が集まっているかはぜひうかがいたかったのです。

すると、その内容には大差が。競技人口が最も多いという知的障がい者連盟(JFFID)は法人化がまだで、登録制度も作っていません。一方、アンプティ協会(JAFA)はNPO法人ですが、登録チーム自体が全国で7つしかなく、名古屋に住む参加希望者は神奈川か大阪まで行かないとチームに入れない状態です。また、指導者ライセンス制度があるのはブラインド協会(JBFA)のみ、審判ライセンスも電動車椅子(JPFA)を加えた2団体だけです。質問して良かったと思いましたが、これは大変だとも感じました。

また、団体が目指す方向もかなり違います。例えば、ブラインドサッカーは昨年のリオパラリンピック予選で大変盛り上がり、ここでの敗退の悔しさを2020年の自国開催で返そうと意気込んでいます。一方、CPサッカーはこの東京パラリンピックで実施種目から外れ、体制の立て直しが避けられません。

さらに、ソーシャル協会(JSFA)の考え方は他団体とかなり違います。先日の会見でも原田裕之選手が「治療の一環として、社会復帰を目指している自分達の姿をみんなに見てもらいたい」という希望を語っていました。多くの身体障害では機能回復が主眼で、「障害そのものの解消」はほぼ考えられないはずですが、メンタルダメージの回復ならば、長期間の継続治療を続ければ軽快化やその維持も十分可能です。そもそもの前提が違うなら、求めるものも変わっていくでしょう。

サッカーを通じて何を実現するか、それぞれの思いにはそれぞれのちゃんとした理由がありますが、これをまとめて「障がい者サッカーの発展」につなげるには、どうしても調整や譲歩が必要な場面が出てくるでしょう。JFAのグラスルーツ部も含め、こちらも根気強い作業が必要になりそうです。

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