さらに、元々レスターの選手達に備わっていた激しさとメンタルの強さ、特に岡崎慎司の恐るべき献身性とエンゴロ・カンテのボール奪取力を生かした前からのプレスを構築。受動的になりがちな守備重視のチームに「仕掛ける守備」という武器を授けた。

エースとして前線を牽引したヴァーディには、「攻撃では自由に動き回ることを許可するが、ボールを奪われた時にはチームのために取り返しに行け。お前が最初に奪いにいけば、チーム全員が絶対に後ろに続く」と教え込んだ。下部リーグからキャリアを積み上げてきた責任感の強いエースは、自分自身がチームを牽引することを実感して奮起。守備ではチームで最初にボールを狩りに動く、忠実な獣となった。

また、イタリア人指揮官は攻撃面でもヴァーディという選手を大きく変えた。攻撃では俊敏性を生かす一方で動き過ぎてしまう傾向があったFWは、得点機を捉えて一気にスピードを変える「静」のストライカーへと変貌。機会があればプレーについては詳しく触れようかと思うが、「狡猾さ」を身に着けたことによって国内で最も怖い選手の1人にまで上り詰めた。

ヴァーディと共にイングランド代表に召集されたダニー・ドリンクウォーターは、ラニエリの腹心となったピッチ上の監督だった。ヴァーディが「人形使い」と語るMFは、その支配力を発揮。カンテの守備を的確にサポートしつつ、状況に合わせてゲームを作る。判断が遅くてプレミアでは通用しないかと思われていた選手が、別人のように相手守備陣を弄ぶ姿は衝撃的だった。

何度となく囮になり、攻撃を人知れず引っ張った岡崎慎司は常に「わかりやすい献身性」が評価されがちな選手だが、戦術分析の専門家マイケル・コックスは「尋常ではなく頭脳的で、戦術を理解した選手」と評する。ヴァーディ、カンテ、オルブライトン、マフレズ。ボールを持ち運ぶ攻撃の選手が狙われないように、岡崎が常に相手を引き付ける。

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