記憶に刻まれた、二つのプレー
――過去に戻れるなら、「これは止めたかった」「止めていれば」というシュートはありますか?
今までやって来たことに悔いは残っていないので…何でしょう。
――では逆に、止めて一番嬉しかったシュートは?
そうですね…。
今だから、引退したから言えますけど、あの瞬間に戻れるとしたら、ドイツワールドカップのオーストラリア戦。そして、止めて一番嬉しかったシュートは、次のクロアチア戦の(ダリヨ・スルナの)PKを止めた時ですかね。あの二つの試合は僕の中でセットになっています。
オーストラリア戦の飛び出しというのは、自分にとって悔いがあるというか、いつ追いつかれてもおかしくないようなオーストラリアの圧力、さらに日本の選手たちの消耗もある中で、なんとか流れを断ち切りたくて、自分が前へ飛び出してクリアしようと。その判断が裏目に出て同点ゴールを喫し、逆転負けに繋がってしまいました。
そういった流れで、次のクロアチア戦、あのPKを迎えた時、「これを決められたら、すべてが終わる」と。絶体絶命の気持ちだったんですけど、そこで止めて、なんとか最後のブラジル戦に繋げることができたプレーでした。
あの大会の2週間前に行われた親善試合のドイツ戦が非常に良かったんですが、その後のマルタ戦で逆に良くないゲームをしてしまって、そこからの一週間というのはチームの雰囲気も重くてオーストラリア戦はあまりいい状況で臨めませんでした。
先制はしましたけどオーストラリアが常に主導権を握るゲームの中、あと5分ほど我慢すればという時間だったんですけど、あの飛び出しが結果的に苦しい状況を生んでしまったので…戻れるとしたらあそこですね。
まあ無理なんですけど(笑)。これは引退したから言える話ですね。
――貴重なお話です。ちなみに、キャリアを通じて、たとえば1対1などで多くの選手と対峙してきたと思います。シュートが上手い選手と下手な選手の違いはどういったところしょうか?
シュートが上手い選手は基本的にシュートを打つことに慣れています。シュートを数多く打つ選手はシュートが上手いですし、またたとえば、ロナウドはゴールキーパーの様子を観察し、特徴を見てシュートを打ってくるように感じました。
試合の中でそれをやっていることに正直驚いて、「ちょっと次元が違うな」と。彼のシュートを防いでも、「キーパーが止めている」というより「キーパーに止めさせている」ような感覚さえ覚えましたね。