「そこはもう、ネスレしかいないと(笑)」

宮崎P――コーヒーづくりの話は今回、ぜひお聞きしたいと思っていました。沖縄でコーヒーが作れるんだ!と。

コーヒーづくりに適した地域、コーヒーベルトぎりぎりの沖縄で、以前はコーヒーが農業として一部成り立っていたと調べて把握はしたのですが、高原さんは最初からコーヒーを作ろうという考えを持っていたのですか?

いや、全然です。ただ、クラブを立ち上げた段階で事業の一つとして農業はやりたいと考えていました。将来的な選手のセカンドキャリアや、もちろんクラブとして稼ぐことにもつながりますし、すぐにお金になるものではないとはいえ、数年後を見据えればむしろやっていかなければいけない。

そこで自分も含めて農業をやったことがある人間がクラブにいなかったので、まずは体験しみようと。“農福”(農業と福祉)の連携で自然栽培をやられているソルファコミュニティさんを紹介してもらい、ニンジンの間引きや収穫、あるいは耕作放棄地を改めて切り開くといったことを選手たちとやりました。

それらをやっていくうちに、沖縄の1次産業が抱える問題、高齢化や担い手不足のことを知り、クラブがかかわることでなんとか解決できないかと考えるようになりました。

沖縄でコーヒーを作っていたことがあると聞いたのはちょうどその頃でした。

僕も同じで「あ、沖縄でコーヒー作れるんだ」と驚いたのですが、同時に「沖縄でコーヒーができたら面白いんじゃないか」と感じました。ハワイのコナコーヒーのようになれば沖縄の新しい特産物になりますし、耕作放棄地をうまく活用できるようになるかもしれません。産業として成り立たせられれば担い手不足の解消にもつながり、かつクラブの収入源にもなります。

いろいろなプラス面が見えてきて面白いなと思う一方、コーヒーのつくり方はまったく知らなかったので、そこはもう、ネスレしかいないと(笑)(※ネスレは高原がジュビロ磐田に在籍していた当時チームの胸スポンサーだった)。

まずはコンタクトを取ってダメもとで話を聞いてもらうことになりました。

ネスレ日本の高岡浩三社長(当時)に相談したところ、世界でもっとも多くのコーヒーを製造・販売するネスレは高品質のコーヒーを確保し、継続して安定した供給を行っていくため「ネスカフェ プラン」というプログラムに取り組み、世界中でコーヒー農家を支援していることが分かりました。

「ネスカフェ プラン」とは、収穫量が多く品質の良い苗木のコーヒー農家への配布、コーヒー豆を栽培する上での技術支援、コーヒー農家からのコーヒー豆買い付け、環境面に配慮したコーヒー製品の製造・流通など、コーヒー豆の栽培から製品の製造・流通・消費まですべての工程に関与する取り組みです。

日本ではまだネスカフェ プランの取り組みは実施されていなかったので、「ではやってみましょう」と。プロジェクトを立ち上げて、一緒にやっていこうということになりました。

ただ、実際の農業となると簡単ではありません。そこで、琉球大学の農学部にも相談して協力を仰ぎ、ネスレ日本と沖縄SVと琉球大学、そして名護市とともに産学官連携の「沖縄コーヒープロジェクト」として2019年にスタートしました。