第103回全国高校サッカー選手権大会の予選が各地でスタートし、激しい出場権争いが今年も始まった。

その中で特に熾烈を極めているのが、唯一出場枠が2つある東京予選だ。

東京都は他県の予選と方式が違い、1次予選のブロック戦を勝ち上がると、2次予選で昨年出場校などのシード校を混ぜ、東京AとBの2つに分けてブロック戦を行う。

このブロック戦を勝ち抜いた2チームが抽選でA、Bを決め、Aには開催地権といって選手権を東京都のスタジアムで戦える権利が与えられ、Bには開幕戦権といって開幕戦を戦う権利が与えられる。

東京は強豪校がひしめく激戦区で、前回大会出場校の早稲田実業と堀越に加え、第94回大会準優勝の國學院久我山、第100回大会以来の出場を目指す関東第一、6度の優勝を誇る古豪・帝京などの実績を持つ高校が多数ある。

そんな東京大会も8月24日から1次予選が始まっており、初戦からPK戦決着が9試合もあるなどかなり白熱した展開となっている。

白熱の東京予選の中で、9月7日に行われた目白研心対東京農業大学第一の試合レポートと共に、高校サッカーの魅力を紹介していく。

ハイプレスを基調とした守備と前線の選手のスピードを活かした攻撃が武器の目白研心に対し、サイドを起点とした素早い攻撃と粘り強く強い守備を持ち味とする東農大一。

特徴のあるこの2チームの試合は試合前から多くの生徒と保護者の姿が見られ、応援歌と声援が飛び交いボルテージが高まっていた。

高校3年間という短期間の中で行われる数少ない大会であるため、応援に熱が入る。プロサッカーでは感じられない高校サッカー特有のこの空気が高校サッカーの魅力の一つである。

そんな中で始まった試合は、開始十数秒でプレスをかけてボールを奪った目白研心の大谷莉久がキーパーとの1対1を冷静に沈め先制に成功する。

このゴールにより目白研心ペースで進むと思われたが、先制点からわずか1分後、東農大一の9番・戸邉勇生が右足を振り抜き試合は振り出しに。

その後膠着状態が続いたが、前半38分に目白研心の鈴木直が右サイドからのクロスを落ち着いて流し込むと試合は目白研心ペースに。

前半40分にパスを受けたエース池沢叶羽が鮮やかなロングループを決めて応援団を沸かすとエンド変わった後半にはコーナーキックから松嶋祥英がヘディングを決めるなど最終的に8点を奪取。

東農大一も2点を奪って追いすがるも及ばず、8-3で目白研心が勝利した。

目白研心は攻撃の部分で持ち味を存分に発揮していた印象があった。前半からディフェンダーの背後にボールを供給しサイドの増田匠桜や大谷などを走らせたり、池沢のフィジカルの強さを活かしたポストプレーなどでチャンスを量産。またボールロストからの切り替えが早く、果敢なプレスで相手を脅かしていた。

後半になって選手が代わってもスタイルは変わらず、果敢に攻め続けたことで大量得点に繋がった。高校サッカーならではである。ただ、相手のドリブルの対応に手こずる場面があった。かなり守備が軽く抜かれていた場面もあったためそこは改善が必要だ。

一方、東農大一は敗れこそしたが、最後まで諦めず戦う姿勢を見せた。何点失点しても全員がチームを鼓舞し続ける姿は素晴らしいものだった。

攻撃では自分たちのスタイルを貫き、果敢に攻め続けた結果、後半19分に信藤湊が押し込み、ラストプレーにはコーナーキックから点数を奪った。この試合は左サイドからの展開が多く11番の藤田英慈がしつこく勝負を挑んでいたのが印象的だった。

守備で特に目立ったのがゴールキーパーの岩盾知樹のセーブだ。ロングボールの判断もよく、果敢に飛び出してチャンスを阻止したりと存在感を示した。後半5分のヘディングシュートのセーブは見事であった。このチームを通して最後まで諦めず自分を奮い立たせて戦う大切さを改めて学ぶ良い機会となった。

年々レベルが向上している高校サッカーだが、戦術もさまざま。そこに着眼点を置いて試合を見ていくと各校ごとの色も感じられて楽しむことができる。

さらには3年間の集大成となるこの大会で見られる涙に胸が熱くなるのも魅力である。現時点ではこの試合しか観戦をすることができていないが、数多くの試合を見て高校サッカーの魅力を深掘りし、伝えていきたい。

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その戦いは始まったばかり。今年はどのようなドラマがあるのか注目だ。

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