予選敗退のブラジルW杯は「悔しさしかなかった」
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切れ味鋭いドリブルで存在感を示した齋藤はU-23日本代表に選出され、ロンドン五輪を懸けたアジア予選に挑むこととなった。だが、5大会連続の本大会出場を目指すチームは2012年2月にシリアに逆転負けを喫し、一時はグループ首位を明け渡すなど「予選では近年では例がないくらいに追い込まれた状態」に立たされた。
最終戦でバーレーン代表(2013年3月、国立)を2対0で下し、「もしかしたら五輪に行けないのではないかと不安を感じた」という厳しい予選を勝ち抜いて日本代表は1位で本戦進出を決めたものの、期待値の低さは変わらず。1対1で引き分けたニュージーランドとの壮行試合(2013年7月、国立)の試合後には、本大会に臨む18名の選手たちがブーイングを浴びる場面も見られた。
「今振り返ってみると、選手たちの『低い評価を見返してやりたい』という気持ちはとても強かったと思います」
ロンドン五輪の初戦ではGKのデ・ヘアをはじめ、ハビ・マルティネス、ファン・マタ、コケ、イスコらが揃うスペインと対戦。圧倒的に不利と見られていた中、前半に挙げた大津祐樹の得点を守り切った日本が1対0で金星を手にすると、続くモロッコ戦も2対1で勝利。第3戦はホンジュラスと0−0で引き分けて2勝1分でグループDを首位で通過した。
予選でのポゼッション志向から、ハイプレスをベースとしたカウンターサッカーに切り替えて勢いに乗るチームは、準々決勝でエジプトを3対0で撃破。メキシコと韓国に敗れてメダル獲得はならなかったが、「初戦でスペインに勝てたことが自信に繋がり、結びつきをより強くした」と言うチームは、メダル獲得こそならなかったものの4位で大会を終え、齋藤も5試合に出場して存在感を示した。
その後、持ち味のドリブルに磨きをかけた齋藤は、ザッケローニ監督が率いるフル代表にも招集され、2014年のブラジルW杯代表に臨む23名にも選出されたが……。「史上最強」と呼び声の高かったチームは1分2敗で予選敗退。齋藤も出場機会が得られぬまま、「悔しさしか残らなかった」大会を後にすることとなった。
特にスコアレスドローに終わった2戦目のギリシャ戦では、退場者が出て守備を固めた相手を崩すために「齋藤を起用すべきだったのでは?」と言う論調も見られ、期待の高さを窺い知れたが…。
「実はギリシャ戦の時は、自分でも信じられないくらいに調子が良くて。『試合に出られたらチームの力になれるだろう』と自分でも胸を張って言える状況でした。選手の起用は監督が決めることですが、絶好調なのに試合に出られず、チームも予選で敗れてしまった。あの時のピッチに立てなかった悔しさが、その後のサッカー人生にも大きく影響を及ぼしているんです」
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