『東京ライバル対決』ー逆転のブラックラムズvs.ラストダンスのサンゴリアス
昨年12月に開幕したリーグワン2025-2026シーズン。トップカテゴリーの「ディビジョン1」はリーグ戦18節の戦いを終え、1位のコベルコ神戸スティーラーズ、2位の埼玉パナソニックワイルドナイツ、3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ、4位の東京サントリーサンゴリアス、5位のリコーブラックラムズ東京、6位の東芝ブレイブルーパス東京がプレーオフへの進出を果たした。
このうち、1位と2位はシードでプレーオフ準決勝からの登場。まずは準々決勝で4位×5位、3位×6位の対決が行われる。
5月23日(土)に激突するのは4位の東京サンゴリアスと、5位のブラックラムズ東京。勝った方が翌週、準決勝で待つ1位のコベルコ神戸スティーラーズと対戦する。
この準々決勝を“東京ライバル対決”と評したのは、ブラックラムズのタンバイ・マットソン ヘッドコーチ(HC)だ。リーグワン創設当初は下位に沈んでいたチームはマットソンHCを招聘した2024年から一気に上向き、昨季はプレイオフにあと一歩の7位。そして今季は初のプレイオフ出場と、まさに右肩上がりのチームと言える。
そんなブラックラムズをグラウンド内でけん引するのは、キャプテンのTJ・ペレナラ。ニュージーランド代表“オールブラックス”で2度のW杯出場経験を持つ、世界屈指のスクラムハーフが攻撃のタクトを振るう。

今季ブラックラムズの快進撃を示すキーワードが「逆転のラムズ」。リーグ戦9勝中、6勝が後半での逆転劇だった。今季リーグ最小の反則数でミスなく相手のチャンスの芽を摘み、じわじわと相手を追い詰める粘り強さこそ、今季のブラックラムズ最大の武器と言える。
また、個々の選手の飛躍も大きい。その象徴的存在が、ペレナラとともにチームの攻撃をけん引する司令塔、スタンドオフの中楠一期だ。中楠は昨年、日本代表初キャップを獲得。今季はプレー精度がさらに高まり、昨季82得点から今季はリーグ2位の184得点と大幅増。プレーオフでも正確無比なキックに期待が集まる。

その中楠を抑え、185得点で今季リーグワン得点王に輝いたのは、サンゴリアスのチェスリン・コルビだ。身長172cm。小柄ながらも爆発的な瞬発力を誇ることから“ポケット・ロケット”の異名を持つ。南アフリカ代表としてW杯連覇に貢献した世界的ランナーがどんなプレーを見せてくれるのか。ブラックラムズのペレナラも「コルビは世界No.1の選手。自由に動かしてはいけない」と警戒心を強めるだけに、その一挙手一投足に注目したい。

サンゴリアスはコルビ以外にもタレントが充実。キャプテンのサム・ケインは、オールブラックスで史上13人目の100キャップ達成を果たしたレジェンド。ほかにも、昨秋の日本代表欧州遠征に7人もの選手を輩出している。

そんな豊富なタレント陣にパスを供給するのは、日本代表として2度のW杯を戦ったスクラムハーフの流大。ここ数年、「現役最後にやり残したことは、サンゴリアスを優勝させること」と語ってきた男は、今季限りでの引退を表明した。同じく、今季限りでの引退を決めた元日本代表の中村亮土、垣永真之介とともに有終の美を飾るべく、代名詞の「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」で頂点を目指す。

『昨季決勝の再戦』ースピアーズの破壊力vs.崖っぷち王者ブレイブルーパス
準々決勝もう一つのカードは、“昨季プレーオフ決勝の再戦”だ。5月24日(日)、3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイと6位の東芝ブレイブルーパス東京が激突。勝者には、2位シードの埼玉ワイルドナイツとの準決勝が待ち受ける。
スピアーズは今季、リーグ戦で何度も首位に立ちながら最終的には3位フィニッシュ。ただ、得失点差352点はシードされた1位のコベルコ神戸スティーラーズ(得失点差294点)、2位の埼玉ワイルドナイツ(同328点)以上で、攻守ともに勢いに乗った時はどのチームも手がつけられない破壊力を持つ。
なかでも注目は、「世界最強フッカー」とも称されるマルコム・マークス。南アフリカ代表としてW杯連覇に貢献。昨年12月にはラグビーの国際統括団体ワールドラグビーの年間表彰でプレイヤー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀選手)に選出された、まさに世界最高の選手だ。

この他にも、タックル数リーグ1位に輝いたロックのタイラー・ポール、相手守備を突破するラインブレイク数でチェスリン・コルビ(サンゴリアス)とともに1位に立ったウイングの木田晴斗ら、2月に発表された最新の日本代表候補にリーグ最多11名の選手を輩出するなど、各ポジションにキーマンを配置する厚い選手層も大きな武器だ。懸念点があるとすれば、日本代表スクラムハーフの藤原忍がシーズン終盤に故障し、プレーオフには出場できないことか。
一方の東芝。リーグワン連覇中の“王者”でありながら、今季はらしくない戦いが続いた。開幕戦と最終戦では埼玉ワイルドナイツ相手に衝撃の完封負け。シーズン途中には悪夢の7連敗も喫した。日本代表の原田衛とワーナー・ディアンズが海外挑戦で抜けてしまったこと、同じく日本代表で昨季トライ王のジョネ・ナイカブラが怪我でリーグ戦最終盤まで不在だったことなど、連覇の立役者でもあった面々が揃わなかったことがやはり痛手となった。
そんな中でも違いを生み出すのは、昨季まで2年連続でシーズンMVPに輝いてきたスタンドオフのリッチー・モウンガ。オールブラックスでも活躍してきた“世界屈指の司令塔”は、勝負所のプレーオフではまた一段と集中力を増したプレーを見せてくれるはず。

そしてもう1人、忘れてはならないのがチームの魂、キャプテンのリーチ マイケルだ。37歳になった今も日本代表に名を連ねる鉄人は、リーグ最終戦、完封負けを喫した試合で相手に独走トライを許した場面でも、最後まで全力で追いかける姿でチームを鼓舞してみせた。

リーグ戦6位から挑む、3連覇への道。決して簡単な挑戦ではない。それでも、キャプテンのリーチ マイケルは静かに言い切った。
「今季は苦しい試合が続きました。でも、プレーオフは一発勝負。その日、強ければいい」
王者はまだ死んでいない。勝ちに飢えた狼が、その牙を研ぎ澄ませている。
【取材・文=オグマナオト】
ライター/構成作家。書籍執筆や構成、インタビューを手掛けるほか、テレビ朝日「報道ステーション」スポーツコーナー、プロ野球解説者YouTubeなどスポーツ番組での構成作家も担当。著書に『早稲田とスポーツ、覇者の150年』など。

