エディーJAPAN再始動。格上との真剣勝負で見えた成果と課題
ラグビーW杯オーストラリア大会まで、あと1年。ラグビー日本代表は、2015年W杯で南アフリカ撃破の「ブライトンの奇跡」へと導いたエディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(HC)を再び指揮官に迎え、「超速ラグビー」をコンセプトに強化を図っている。

目指すは、W杯でのトップ4入り。そのための試金石となる大会が今年創設された「ネーションズチャンピオンシップ」だ。北半球と南半球から6チームずつ、世界トップクラスの12カ国だけが参加できる大会で、7月に3試合、11月に3試合+順位決定戦の計7試合を行う。
大会開始時点で、日本の世界ランキングは12位。つまり、すべて格上との戦いが続く。勝敗以上に、どんな爪痕を残せるか。世界との距離はどこまで縮まっているのかを探る絶好の機会と言える。
7月の3連戦は、初戦のイタリア代表(対戦時の世界ランキング10位)には27対10と快勝。だが、続く世界3位のアイルランド代表には20対36、世界4位のフランス代表には15対42と厳しい結果に。世界ランキングの近い相手とは互角に戦えることを示した一方、世界トップレベルとの差も改めて浮き彫りになった。
未来を照らす大学4年生コンビ。1番・大塚壮二郎&10番・伊藤龍之介の台頭
アイルランド戦は試合終了残り10分までは1トライ1ゴールで追いつく展開で粘りを見せた内容だったが、フランス戦は後半ノートライと完敗。それでも悲壮感だけに終わらないのは、楽しみな新戦力が2人も台頭したから。その2人とは、フランス戦でスタメン出場した大学生、1番の大塚壮二郎(関西学院大4年)と、10番の伊藤龍之介(明治大4年)だ。
ともにこのネーションズチャンピオンシップで代表初キャップを獲得。大塚は得意のスクラムで海外勢相手にも負けない強さを発揮すると、初先発となったフランス戦では初トライも決めるなど攻守で存在感を示した。

そんな大塚はエディーHCが「(21歳ではなく)41歳と思わせるプレー」と語るほど泰然自若としたハートの強さも武器。7月3連戦の成果を本人に聞くと、「フィジカルでは勝負できることがわかった。あとは疲れてきた時にどう対応できるか」と淡々と自己評価する。
そしてもうひとりの大学生、伊藤は司令塔の10番で3試合連続スタメン出場。昨季代表で不動の10番だった李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)が手術により今季の代表戦不在という不測の事態も手伝って、一気に代表の注目株に。得意のキックで何度も局面を打開するなど頼もしさを感じさせた一方、大敗を喫したフランス戦後は次のような反省の弁を口にするなど向上心も強い。

「フィジカルもプレッシャーも厳しいなか、相手はミスをしないのにこちらがミスをしてしまって流れをうまく引き寄せられませんでした。初戦のイタリア戦はうまくいったのに、アイルランド、フランスと強度やスピードのレベルが上がっていくなかで、いかに自分たちから崩れないか。自分たちがやってきた準備を出しきれるか、という部分が鍵になることを改めて学びました」
彼らと同学年には、同じくエディーHCによって見出された快速ランナーの矢崎由高(早稲田大4年)もいる(7月はケガのため代表不参加)。彼らが社会人1年目で迎える来年のW杯では3人揃ってのスタメン出場も十分あり得る。そんな期待を抱かせる大学生たちの奮闘は、紛れもなく代表の明るい未来だ。
チームの精神的支柱・37歳のリーチ マイケル。前人未到の「100キャップ」へ
2人の大学生以外にも、このネーションズチャンピオンシップで5選手が代表デビュー。また、代表常連組にケガが相次いだ影響で代表キャップ1桁台の選手も多く、当然ながら課題も多かった。とくにフランス戦で顕著だったのが空中戦(ハイボール)での弱さと、モールを組んだ際の脆さ。フランス戦では空中戦でことごとく相手にボールを奪われ、喫した6トライ中5つがモールからの流れで喫したトライだった。
そんな若手の多い代表チームの中にあって、誰よりもエネルギッシュなのがチーム最年長37歳のリーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)だ。フランス戦で代表キャップは「95」に。前人未到の大記録「代表100キャップ」がいよいよ現実味を帯びてきた。

そんなリーチに7月3連戦の収穫を聞くと、「課題がはっきり見えた。そこに向けていかに準備を重ねるか。その点はポジティブに考えてもいいかなと思います。モールはとにかく数多く組むこと。これから網走合宿もあるので数多くやりたい。モールからのトライを防げれば、フランス戦ももっといい勝負ができたと思います」と力強く語る。
エディーHCが「サッカーの代表に長友佑都がいるように、我々にはリーチがいる」と語るように、チームのカンフル剤として、そしてハードワークの部分でも、まだまだ代表にはリーチ マイケルが必要だと実感した7月の3連戦だった。
幸いにも、今年は「ネーションズチャンピオンシップ」も含め、11月末まで代表戦が目白押し。試合を重ねるなかで改めて課題を整理し、トライ&エラーを重ねながら、さらなる成長につなげてほしい。
2026年の代表戦日程
◎ネーションズチャンピオンシップ2026
・7月4日(土)vsイタリア代表(27対10で勝利)
・7月11日(土)vsアイルランド代表(20対36で敗戦)
・7月18日(土)vsフランス代表(15対42で敗戦)
◎国際親善試合
・8月8日(土)vsオーストラリア代表(@大阪)
・8月15日(土)vsオーストラリア代表(@オーストラリア)
・9月5日(土)vsカナダ代表(@新潟)
◎パシフィックネーションズカップ2026
・9月12日(土)※準決勝vsアメリカ代表(@大阪)
・9月19日(土)※決勝or 3位決定戦(@東京)
◎国際親善試合
・10月24日(土)vsフィジー代表(@東京)
◎ネーションズチャンピオンシップ2026
・11月8日(日)vsウェールズ代表(@ウェールズ)
・11月15日(日)vsイングランド代表(@英国)
・11月21日(土)vsスコットランド代表(@スコットランド)
・11月27〜29日※順位決定戦(@英国)
※試合日は日本時間
【取材・文=オグマナオト】
ライター/構成作家。書籍執筆や構成、インタビューを手掛けるほか、テレビ朝日「報道ステーション」スポーツコーナー、プロ野球解説者YouTubeなどスポーツ番組での構成作家も担当。著書に『早稲田とスポーツ、覇者の150年』など。

