レギュラーシーズンの2試合で、連日の観客20,000人超え――。
越谷アルファーズは、B1 第17節(12月27、28日)のホームゲームを、Bリーグで初めてさいたまスーパーアリーナで開催。昨シーズン王者・宇都宮ブレックスと対戦した。GAME1では、リーグおよびクラブの主管試合として歴代最多となる20,244人が来場。さらにGAME2では20,475人へと記録を更新した。
Bリーグ開幕から10年。かつては3部リーグ(B3)に所属ししていたクラブが、B1昇格2シーズン目にして到達したこの光景は、日本バスケットボール界に新たな歴史を刻むものとなった。

アルファーズのルーツは大塚商会バスケ部。企業チームから越谷初のプロクラブへ

越谷アルファーズは、1997年に株式会社大塚商会のバスケットボール部として創部したルーツを持つ。Bリーグが開幕した2016-17シーズンはB3に所属し、サラリーマンとBリーガーを兼務する選手たちが、「Bリーマン」とも呼ばれて活躍。当時は、まだ企業チームだった。

その後、クラブは埼玉県越谷市とホームタウン提携を組み、2018年に越谷市初のプロバスケットボールクラブとしてスタートを切る。2020-21シーズンにB2へ昇格すると、2023-24には、大塚商会でのプレー経験(日本リーグ時代の2004-05シーズン)を持ち、宇都宮ブレックスでBリーグ優勝経験のある安齋竜三氏をヘッドコーチ(HC)に迎え、クラブ史上初のB1昇格を決めた。

レギュラーシーズンのホームアリーナは、越谷市立総合体育館という“まちの体育館”。しかし12月27日、この日は舞台をさいたまスーパーアリーナ(通称・たまアリ)へと移した。

画像: アルファーズのルーツは大塚商会バスケ部。企業チームから越谷初のプロクラブへ

さいたま新都心駅からほど近い国内屈指の大型アリーナは、2000年に開業。2006年には国際バスケットボール連盟(FIBA)主催のバスケットボール世界選手権(現・ワールドカップ)も開催された。Bリーグ開幕以前には、bjリーグのオールスターゲーム(2012年)や天皇杯・皇后杯(全日本バスケットボール選手権大会)の舞台にもなり、2021年には東京2020オリンピックのバスケットボール競技を実施。男子日本代表が45年ぶりに同大会のコートに立ち、女子日本代表が銀メダルを獲得した名シーンも記憶に新しい。

SNSでも話題に!さいたまスーパーアリーナを埋め尽くす2万本の光る“ねぎ畑”と、記念すべき初得点

画像1: SNSでも話題に!さいたまスーパーアリーナを埋め尽くす2万本の光る“ねぎ畑”と、記念すべき初得点

Bリーグ初の“たまアリ”開催となったこの日は、先着20,000名に「Superぴかねぎー」が来場者プレゼントとして配布された。越谷は、埼玉ブランドの農産物・ネギをモチーフにしたグッズ展開でも知られており、今節はそれをデザインしたスティックライトが配られた。試合前には20,000人を超える観客が一斉にライトを灯し、スタンドには光る“ねぎ畑”が広がった。

画像2: SNSでも話題に!さいたまスーパーアリーナを埋め尽くす2万本の光る“ねぎ畑”と、記念すべき初得点

チケット完売の一戦で先行したのは越谷だった。加入5シーズン目の松山駿(#7 /175㎝)が記念すべき“たまアリ初得点”となる3ポイントシュートを射抜くと、ジャレル・マーティン(#1/ 208㎝)やアンソニー・クレモンズ(#5 / 187㎝)も得点を重ねていく。ディフェンスでも宇都宮から4つのターンオーバーを誘い、攻撃を食い止めて1クォーターは20-17とリードを奪った。

しかし、2クォーターに入ると王者が反撃。ディフェンスの圧力を強め、序盤に2本の3ポイントシュートを決めて逆転する。エースの比江島慎(#6 / 191㎝)に代わってコートに立った、23歳の小川敦也(#7 / 190cm)が宇都宮を勢いづける。アイザック・フォトゥ(#42 / 203㎝)へのアシストに加え、自らも3ポイントシュートをヒット。大型ガードとして存在感を示し、チームは31-47と2桁のリードを奪って後半へ入った。
3クォーターは越谷が流れをつかむ時間帯もあったが、終わってみれば危なげなく試合を進め、61-86で勝利を収めた。

会場の雰囲気を宇都宮の小川が賞賛。B2時代を知る松山は「考えられない景色」

そんな勝利に貢献した宇都宮の小川は、2024年1月に大学3年生で筑波大学バスケットボール部を退部し、プロ入りした有望株だ。足の手術の影響により、12月6日の秋田ノーザンハピネッツ戦が今シーズン初出場となったが、この日は15分22秒の出場で9得点4アシストを記録。独特の間合いからゴール下に切れ込み、得点とパスの両面で好プレーが光った。

報道陣からプレーの出来を問われると、越谷のディフェンスを想定していたことを明かした。

「センターの人たちもいいスクリーンをかけてくれましたし、そこから自分がトラブルを仕掛けて、ビッグマンと(相手ディフェンスの)ズレをつくることができたと思います。そこで中に入れたパスをセンターの人たちが決めてくれたので、アシストがついたと思います」

また、この日は20,000人を超える大観衆の中でのプレーとなったが、ターンオーバーはゼロ。落ち着いたプレーぶりも印象的だった。本人は前向きにとらえながら、課題を口にする。

「本当に越谷さんが素晴らしい雰囲気をつくってくださり、フレックスファンの皆さんもたくさん来てくださって、選手としては光栄な場だったので、楽しんでやろうと思いました。このような大舞台でターンオーバーがなかったのは良いことですし、プラスに捉えていきたいです。ただ、もう少しシュートの精度も高められたと思います。」

画像: 試合後の記者会見に臨む宇都宮の小川敦也(#7)
試合後の記者会見に臨む宇都宮の小川敦也(#7)

一方、王者に敗れた越谷だったが、満員のアリーナでプレーできた一戦には感慨深いものがあった。安齋HCは、記者会見で開口一番にこう語った。

「はじめに、さいたまスーパーアリーナで開催させていただいたという点で、クラブ、会社、行政の方々、そして今日本当にたくさんのファンの方々が来ていただきました。(配信の)バスケットLIVEでも応援してもらったと思います。こういう環境でバスケットができることは、いろいろな方の頑張りがあって初めて実現できること。本当にありがたいです。その中で、バスケットボールの部分で僕らがもっといいゲームを展開できれば、さらに良かったと思います。今日は力の差を見せつけられましたが、明日もう1試合あるので、感謝の意味を込めてしっかり準備し、また明日チャンピオンチームに挑んでいきたいと思います」

また、この日26分9秒の出場で、14得点4アシストを挙げた松山も「僕が越谷に来たときからしたら、考えられない景色」と切り出し、クラブ一丸となってつくり上げたホームゲームを振り返った。

「フロントも一生懸命頑張ってくれて、20,000人というお客さんを入れてくれました。プロとして、僕らはその価値がある試合をしなければいけないと思っています。今日は残念ながらこのような点差が開いてしまい、お金を払ってくださったお客さんに申し訳ない試合をしてしまった。明日は切り替えて、少しでも食らいついていけるようにやっていきたいです」

画像: 試合後の記者会見に臨む越谷の松山 駿(#7)
試合後の記者会見に臨む越谷の松山 駿(#7)

越谷は、翌28日のGAME2も67-80で敗れたが、4クォーターには34-22と追い上げる時間帯もつくった。勝ち星こそ挙げられなかったが、レギュラーシーズンの試合で連日の20,000人超えを記録した事実は、クラブ全体の大きな努力とこれまでの取り組みがあってこそ。歴史を刻んだ2日間の意義が大きいことは間違いない。

他会場の結果

B1 第17節では、東西首位攻防戦にも注目が集まった。西地区首位の長崎ヴェルカがホームに、東地区首位の千葉ジェッツを迎えた一戦では、2戦とも長崎に軍配が上がった。GAME1で86-79の勝利を収めると、GAME2も93-77で撃破。長崎が西地区首位を堅持した一方、千葉Jは連敗で東地区2位に後退した。

また、東地区の秋田ノーザンハピネッツは、11シーズンにわたってチームに携わった前田顕蔵ヘッドコーチが退任し、ミック・ダウナーヘッドコーチが新たに就任。GAME1でファイティングイーグルス名古屋を89-73で下し、連敗を「3」で止めた。GAME2では100点ゲームで敗れ、今シーズン初の連勝はならなかったものの、チームは新たなスタートを切っている。

文=大橋裕之

【結果】B1 第17節(2025年12月26日~28日)

12月26日 / 27日
・川崎 73-82 佐賀 / 川崎 84-91 佐賀
12月27日 / 28日
・横浜BC 80-69 A千葉 / 横浜BC 86-60 A千葉
・越谷 61-86 宇都宮 / 越谷 67-80 宇都宮
・島根 67-92 名古屋D / 島根 97-88 名古屋D
・滋賀 99-100 富山 / 滋賀 71-79 富山
・長崎 86-79 千葉J / 長崎 93-77 千葉J
・琉球 72-80 仙台 / 琉球 66-85 仙台
・北海道 96-62 京都 / 北海道 99-92 京都
・秋田 89-73 FE名古屋 / 秋田 87-104 FE名古屋
・広島 72-87 茨城 / 広島 98-88 茨城
・群馬 96-69 三遠 / 群馬 91-71 三遠
・三河 73-82 A東京 / 三河 79-82 A東京
・SR渋谷 73-65 大阪 / SR渋谷 51-78 大阪

【順位表】B1 第17節終了時点(2025年12月28日)

東地区
1位|宇都宮ブレックス|23勝5敗(.821)
2位|千葉ジェッツ|22勝6敗(.786)
3位|レバンガ北海道|22勝6敗(.786)
4位|群馬クレインサンダーズ|18勝10敗(.643)
5位|アルバルク東京|18勝10敗(.643)
6位|仙台89ERS|16勝12敗(.571)
7位|横浜ビー・コルセアーズ|11勝17敗(.393)
8位|越谷アルファーズ|10勝18敗(.357)
9位|サンロッカーズ渋谷|9勝19敗(.321)
10位|アルティーリ千葉|8勝20敗(.286)
11位|茨城ロボッツ|7勝21敗(.250)
12位|川崎ブレイブサンダース|6勝22敗(.214)
13位|秋田ノーザンハピネッツ|5勝23敗(.179)
西地区
1位|長崎ヴェルカ|25勝3敗(.893)
2位|名古屋ダイヤモンドドルフィンズ|21勝7敗(.750)
3位|シーホース三河|19勝9敗(.679)
4位|琉球ゴールデンキングス|17勝11敗(.607)
5位|島根スサノオマジック|16勝12敗(.571)
6位|広島ドラゴンフライズ|16勝12敗(.571)
7位|佐賀バルーナーズ|14勝14敗(.500)
8位|ファイティングイーグルス名古屋|12勝16敗(.429)
9位|滋賀レイクス|11勝17敗(.393)
10位|大阪エヴェッサ|11勝17敗(.393)
11位|三遠ネオフェニックス|11勝17敗(.393)
12位|富山グラウジーズ|9勝19敗(.321)
13位|京都ハンナリーズ|7勝21敗(.250)

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