越谷アルファーズのカイ・ソットは、身長220㎝を誇るセンター。フィリピン生まれで同国代表でも活躍してきた彼は、今シーズンのB1で最長身を誇るビッグマンであり「アジア特別枠選手」としてチームに欠かせない存在だ。今年1月下旬、大ケガから復帰すると、苦しんでいたチームの成績も上向き始めた。
母国フィリピンの期待を背負う23歳は、いまBリーグで何を思い、プレーをしているのか。
アジアの代表クラスが来日。最多はバスケが国技のフィリピンから
2016年の開幕以降、Bリーグの競技力向上を支えてきたのが外国籍選手や帰化選手の存在だ。その活躍はチームの浮沈を握る要素であり、2020-21シーズンから導入された「アジア特別枠」によってアジア各国の代表レベルの選手たちが続々と来日。今シーズンはフィリピンや中国、台湾、レバノンなど、全14の国と地域における国籍を保有する選手まで、対象が広がっている。
この制度によって、リーグ登録と試合エントリーは外国籍選手3人までに加え、帰化選手もしくは「アジア特別枠」選手のいずれか1人が登録可能に。オンザコートルールでは外国籍選手2人以内に加え、帰化選手または「アジア特別枠」選手1人以内が同時出場できる。
帰化選手を擁さないクラブでも「アジア特別枠」を活用して3人目の海外選手を確保できるようになり、戦力アップが可能な環境が整ってきた。
また、アジア特別枠導入以前は外国籍選手や帰化選手がセンターやパワーフォワードといったインサイドを担うケースが多かったが、その顔ぶれにも変化が見られる。アジア特別枠で2メートル超のビッグマンを獲得し、ガードには得点力のある外国籍選手を配置するチームも現れた。マッチアップを担う日本人ガードの成長を促す一助にもなっている。
そんなBリーグの競争環境に変化をもたらした「アジア特別枠」選手を最も輩出している国がフィリピンだ。バスケットボールが国技とも言われ、熱量はアジア屈指。日本代表が沖縄でパリオリンピック2024出場権を獲得した「FIBA バスケットボール ワールドカップ 2023」は、日本とともに開催地の一つとなり、フィリピンで行われた同大会の決勝戦は3万人を超える観客を集めたことでも話題になった。今シーズンはフィリピン生まれの選手が7名もB1でプレーしている。
Bリーグはかねてより海外展開にも注力しており、今シーズンの配信対象エリアは、ライセンス提供も含め最大38の国と地域と過去最大。アジアはその中心地であり、フィリピンでもBリーグのYouTubeのほか、いくつかの現地放送・配信プラットフォームで試合を視聴することができる。また、Bリーグ自身も、フィリピンのマニラで、Bリーグの試合のパブリックビューイングイベントの開催や「B.LEAGUE Hope」と呼ばれる社会貢献活動を行う(2025年10月にマニラで「B.LEAGUE Hope ASIA HOOP FESTIVAL 2025 in Manila」を実施)など、積極的な取り組みを見せている。
ソットはかつて河村勇輝とプレー。越谷の指揮官が“良さ”を語る
フィリピンから来日した選手の中で、いま大ケガから復帰して存在感を放っているのが、越谷アルファーズのカイ・ソット(#11)だ。2002年生まれのセンターは身長220㎝で、今シーズンのB1で最長身を誇る。
フィリピン代表として「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」に出場し、クラブではNBA下部のGリーグ・イグナイト、豪州プロリーグのNBLを経て、2022-23シーズンに広島ドラゴンフライズ加入を機にBリーグ入り。2023-24シーズンは河村勇輝とともに横浜ビー・コルセアーズ(期限付き移籍)でプレーし、2024-25シーズンに越谷アルファーズへ移籍した。
加入1シーズン目の2025年1月に前十字靭帯を断裂する大ケガを負ったが、今年1月24日の茨城ロボッツ戦で1年ぶりに戦列復帰。長いリハビリを乗り越え、前半戦の戦いに苦しんだチームを助けるようなプレーを見せている。
サンロッカーズ渋谷をホームに迎えたB1 第23節のGAME1(2月14日)でも、スタメン出場。1クォーターからインサイドで得点を重ね、ジョシュ・ホーキンソン(#8/208cm/C・PF)らとのマッチアップでも存在感を示した。チームも31-17でリードを奪うと、2クォーターにはソットがゴール下に立ちはだかったゾーンディフェンスでSR渋谷の攻撃を止める。ブロックショットだけでなく、相手がゴール近くまで侵入できずに手前でシュートを打つ場面もあったほど。
49-34で前半戦を終える。
3クォーターに入っても越谷の勢いは衰えない。アンソニー・クレモンズ(#5/187cm/PG)や松山駿(#7/175cm/PG・SG)が3ポイントシュートを決め、ソットも高さを活かしたオフェンスリバウンドから仲間のミスショットを得点に。73-52で最終クォーターを迎え、一時は最大23点差をつけ、終盤に追い上げを受けながらも93-75で勝利を収めた。
翌15日のGAME2は敗れたが、ソット復帰後の後半戦(1月24日以降)は5勝4敗と白星が先行。前半戦の30試合は10勝20敗だったことを思えば浮上の兆しと言える。この日のソットは27分38秒の出場時間で、15得点14リバウンド2アシストを記録。安齋竜三ヘッドコーチも、その効果を攻防両面で感じているようだ。

「本当にいろんな部分で使い勝手が良い」と表現し、ディフェンスでは「ビッグマンにつけてもいいですし、フォワード陣につけて下に置いておくのもいいです。戦術面で幅が出るのがカイの良いところ」
後半戦における越谷のスタッツを見ると、前半戦に比べ、平均得点やフィールドゴール成功率、3ポイントシュート成功率、平均アシスト数といったオフェンス面の数値が向上している。これは、ソットの復帰によってもたらされているようだ。
復帰までチームを助けた小寺ハミルトンゲイリー(現・広島)を「すごく頑張ってくれた」と労いながら、指揮官は次のように語った。
「やっぱり(ゴール下に)ダイブしてくれる人がいる。カイがいることによってオフェンスのスペースが広げられます。広がれば広がるほど(インサイドで高さのある)カイが生きる。今日のリバウンドからのシュートもそうです。そこはうちに今まで足りなかったところ。そこがあるから周りが(リングへ)アタックもできますし、そこからキックアウトして3ポイントも結構オープンで打てる機会が増えてくる状況を作れる。そこは大きいと思いますね。あと、カイがある程度点数を取ってくれるので、その分(得点が)プラスされている状況はあるかなと思います」
フィリピンのトップ選手として、Bリーグ活躍にかける思い
会見場に姿を現したカイ・ソットは、落ち着いた口ぶりでこう振り返った。
「オフェンスでもディフェンスでも全員が貢献して、チーム一丸となって試合に勝てたのが非常に印象に残っています」

この日は得点とリバウンドで2ケタの成績を残すダブルダブルの活躍。それでも受け止めは冷静だ。
自らの役割を「チームメイトにどれだけ楽をさせられるか」と表現し「僕の存在だけで、少しでもそうできたら良かったと思ってやってきました。試合の途中、所々で(チームが)崩れかけそうな場面があったのですが、そこから立て直して、コミュニケーションをちゃんと取りつつ、最後までやりきれたところが非常に良かった」とも話した。
個人成績は二の次。大ケガからの復帰まで、寄り添ってくれたアルファーズへの思いがにじむ。
もちろん、まだケガから復帰したばかりの選手でもある。今後に向けては「健康でいることが一番大事」と慎重な姿勢を示しつつ「自分自身でも残り20試合はもっと良くなると思っています」とポジティブな手ごたえも口にした。
不安こそ隠さなかったが、目の前の試合に出続けることが「自信」につながり、その先に「もっといいパフォーマンス」ができる姿を、確かに見据えていた。
そして、現在Bリーグで活躍するフィリピン人選手は増加傾向にある。母国でもBリーグが知られているようになった状況で、ソットは、ドワイト・ラモス(レバンガ北海道)、エージェー・エドゥ(群馬クレインサンダーズ)、レイ・パークスジュニア(大阪エヴェッサ)らの名前も挙げて、母国を代表する選手として思いも語ってくれた。
「僕も含めて、フィリピンのトップ選手たちが(Bリーグで)活躍することによってフィリピンの知名度も上がってきます。僕の役割も、いまフィリピンで活躍している選手たちを歓迎しているよと。これだけ非常に高いレベルのバスケットをやっているリーグが数少ないので、もしみんなも来られるなら来てもらいたい、という歓迎の目線で活躍して(フィリピン人選手の力を)証明したいと思っているところがあります。それをすることによって、フィリピンのバスケットボールへの貢献にも繋がると思っています」
「FIBAバスケットボールワールドカップ2027アジア地区予選」での活躍にも期待
フィリピン代表は、今後「FIBAバスケットボールワールドカップ2027アジア地区予選」に臨む。
日本代表とは別の組で、2月26日にニュージーランド代表、3月1日にオーストラリア代表との対戦が予定されている。
ソットはケガ明けという状況もあり、直近の予選ウィンドウではロスター入りしておらず、代表でも主力選手であるラモスらが出場するか気になるところ。
Bリーグは2月15日の試合を終え、アジア地区予選に伴う中断期間へ。
母国のユニフォームを身にまとうアジア特別枠選手たちの姿を見ると、3月7日のリーグ戦再開後
にはまた違った視点でBリーグを楽しめそうだ。
他会場の結果
B1 第23節では、東地区の上位争いに変化があった。前節まで上位2チームが同率で並んでいたが、宇都宮ブレックスが川崎ブレイブサンダースに2連勝し、単独首位に浮上。一方で、同2位だった千葉ジェッツが三遠ネオフェニックスに2連敗して3位に後退した。レバンガ北海道も富山グラウジーズとのカードで連勝を逃し、4位に順位を下げている。さらに、アルバルク東京が佐賀バルーナーズを下して連勝を3に伸ばし、地区2位へ浮上した。
西地区では長崎ヴェルカが群馬クレインサンダーズに2連勝。連勝を3に伸ばし、今節終了時点でB1昇格後初の地区優勝へ向けてマジック「18」が点灯している。
【結果】B1 第23節(2026年2月14日 / 2月15日)
・秋田 53-71 茨城 / 秋田 86-87 茨城
・宇都宮 93-86 川崎 / 宇都宮 104-88 川崎
・越谷 93-75 SR渋谷 / 越谷 62-69 SR渋谷
・島根 87-68 三河 / 島根 75-79 三河
・滋賀 81-94 広島 / 滋賀 89-104 広島
・大阪 64-71 京都 / 大阪 79-93 京都
・仙台 91-96 名古屋D / 仙台 83-74 名古屋D
・群馬 80-97 長崎 / 群馬 72-77 長崎
・A千葉 85-87 琉球 / A千葉 55-73 琉球
・富山 98-101 北海道 / 富山 115-93 北海道
・三遠 92-81 千葉J / 三遠 104-94 千葉J
・FE名古屋 85-86 横浜BC / FE名古屋 78-87 横浜BC
・A東京 78-71 佐賀 / A東京 96-83 佐賀
【順位表】B1 第23節終了時点(2026年2月15日)
東地区
1位|宇都宮ブレックス|29勝10敗(.744)
2位|アルバルク東京|27勝12敗(.692)
3位|千葉ジェッツ|27勝12敗(.692)
4位|レバンガ北海道|27勝12敗(.692)
5位|群馬クレインサンダーズ|24勝15敗(.615)
6位|仙台89ERS|23勝16敗(.590)
7位|サンロッカーズ渋谷|16勝23敗(.410)
8位|横浜ビー・コルセアーズ|15勝24敗(.385)
9位|越谷アルファーズ|15勝24敗(.385)
10位|茨城ロボッツ|12勝27敗(.308)
11位|アルティーリ千葉|12勝27敗(.308)
12位|川崎ブレイブサンダース|9勝30敗(.231)
13位|秋田ノーザンハピネッツ|7勝32敗(.179)
西地区
1位|長崎ヴェルカ|33勝6敗(.846)
2位|名古屋ダイヤモンドドルフィンズ|30勝9敗(.769)
3位|シーホース三河|26勝13敗(.667)
4位|琉球ゴールデンキングス|26勝13敗(.667)
5位|広島ドラゴンフライズ|23勝16敗(.590)
6位|佐賀バルーナーズ|21勝18敗(.538)
7位|島根スサノオマジック|21勝18敗(.538)
8位|三遠ネオフェニックス|20勝19敗(.513)
9位|大阪エヴェッサ|15勝24敗(.385)
10位|ファイティングイーグルス名古屋|15勝24敗(.385)
11位|滋賀レイクス|13勝26敗(.333)
12位|京都ハンナリーズ|11勝28敗(.282)
13位|富山グラウジーズ|10勝29敗(.256)
取材・文=大橋裕之
