天皇杯では9度の優勝に輝き、旧リーグ時代には幾多のタイトルを獲得。“常勝軍団”とも称されてきた。Bリーグ開幕以降はチャンピオンシップ進出を逃すシーズンもあったが、NBA経験を持つ指揮官の招聘や若手選手の台頭により、ここ3シーズンで名門復活を印象づけている。
2022-23シーズンに地区5位に低迷。転換期を迎えた強豪
愛知県刈谷市を本拠地とするB1所属のシーホース三河は、創設80年近い歴史を誇る。1947年にアイシン精機(現・アイシン)バスケットボール部として創部。クラブの公式サイトによると、「シーホース(タツノオトシゴ)」というチーム名は、三河の雄・徳川家康の居城である岡崎城が龍城と呼ばれること、さらに創部当初よりチームを支えた名誉相談役の誕生年が辰年であったこと由来する。龍のように強く、勇ましく成長してほしい。そんな願いが込められている。
1995年にJBL日本リーグ1部へ昇格すると、鈴木貴美一ヘッドコーチが就任。2002年には当時日本代表の司令塔だった佐古賢一氏(現取締役兼チームディレクター)が加入し、チームは常勝軍団へと変貌を遂げる。天皇杯では9度(2002、2003、2004、2005、2008、2009、2010、2011、2016)の優勝を誇り、スーパーリーグで2度(2002-03、2003-04)、JBLで3度(2007-08、2008-09、2012-13)の優勝を達成。さらにNBLでも2014-15シーズンに頂点へ立った。
2016年のBリーグ開幕に伴い、チーム名をシーホース三河に改称しプロクラブ化。比江島慎(現・宇都宮ブレックス)らを擁し、2016-17シーズンから2季連続で地区優勝を達成。チャンピオンシップ(CS)にも進出した。しかしその後は苦戦が続き、地区優勝から遠ざかり、2022-23シーズンは中地区5位に低迷。四半世紀以上にわたりチームを率いた鈴木HCが退任し、大きな転換期を迎えていた。
古豪復活へ、NBA経験のある指揮官。日本代表もチームをけん引
そして、2023-24シーズンより新指揮官に起用されたのが、ライアン・リッチマン氏である。1989年生まれの指揮官は、2013年から約10年にわたりNBAのワシントン・ウィザーズでアシスタントビデオコーディネーター、アシスタントコーチ、HC代行などを歴任。初来日ながら、就任1年目からBリーグでも結果を残していく。
前シーズン27勝33敗と負け越したチームを立て直し、2023-24シーズンは中地区2位(36勝24敗)でCSへ返り咲き。翌2024-25シーズンも39勝21敗で同3位入り、2シーズン連続でベスト8進出を果たした。さらに2026年1月に開催された天皇杯では8年ぶりの決勝進出を果たし、準優勝。これらの実績も評価され、今年2月に桶谷大氏が男子日本代表の新ヘッドコーチに就任した体制のもと、リッチマン氏もアシスタントコーチに名を連ねている。

リッチマンヘッドコーチ
また、指揮官とともに復活をけん引する一人が、西田優大(#19/190cm/SG・SF)だ。チーム在籍5シーズン目を迎えた27歳は、名門・東海大学出身。2021-22シーズンに新人王に輝くと、2023年のFIBAバスケットボールワールドカップ、2024年のパリオリンピックに日本代表として出場。今年2月に行われた「FIBAバスケットボールワールドカップ2027 アジア地区予選 Window2」の中国戦、韓国戦でも先発に名を連ねた。
西田はドライブ、3ポイントシュート、ディフェンスと三拍子そろったオールラウンダー。日本代表ではポイントガードを任された経験もあり、その対応力の高さも際立つ。チームメイトのトーマス・ケネディ(#1/201cm/SF・PF)も、「素晴らしい判断でいつもチームのためにプレーをつくってくれる。さらに彼は、ディフェンスも素晴らしい選手」と、その存在価値を高く評価している。

日本―韓国 第2クオーター、シュートを決める西田(右)=沖縄サントリーアリーナ、26年3月バスケW杯アジア1次予選
ディフェンスを武器に逆転勝ち。今季初の大型布陣も機能
3シーズン連続のCS進出へ向け、チームは好調を維持している。
1月28日の長崎ヴェルカ戦を皮切りに、2月の日本代表活動に伴うリーグ戦中断期間(バイウィーク)を挟んで10試合で9勝を記録。3月14日のB1 第26節 GAME1でも、アウェーの横浜ビー・コルセアーズ戦で、主力選手を欠きながらも、固いディフェンスを武器に79-84で逆転勝利を収めた。
試合は1クォーター序盤に12-0のビハインドを背負い、2クォーターには最大14点差をつけられる苦しい展開。それでも西田が10得点を挙げて、48-36で前半を折り返す。
3クォーターも簡単には差が縮まらないなか、“帰化選手”の起用を含めた布陣で打開を図る。ケネディに加え、ダバンテ・ガードナー(#54/203cm/C・PF)、アーロン・ホワイト(#30/206cm/C・PF)、さらに日本代表センターのシェーファー アヴィ幸樹(#32/206cm/C)をコートに送り込み、大型布陣で粘り強く戦い65-55で最終クォーターへ。
迎えた4クォーター、我慢の攻防が実を結ぶ。ガードナーらの得点で追い上げると、残り5分を切ってジェイク・レイマン(#10/206cm/SF・PF)の3ポイントシュート、さらに速攻で逆転。ケネディの好守から西田が3ポイントを射抜く場面も飛び出した。わずか10分間で29得点を奪い、失点を14に抑える猛攻。相手のターンオーバーも5つ誘発するなど、組織的なプレーが光った。
試合後、リッチマンHCは後半に勢いを増した要因として「強度、質ともにすごく高くなったディフェンス」を挙げ、「勝つためには、我々が今まで築き上げた文化や環境がすごく密接に関わってくると思います。その形が、今日の勝利として結びついて結果が出たのは本当に良かった」と振り返った。さらに、帰化選手と外国籍選手、日本人ビッグマンによる初の大型布陣についても「勢いをさらにもたらしてくれた」と評価。そして、この日16得点を挙げた西田については、次のように称えた。
「常にですが、特に接戦での活躍は本当に素晴らしいと感じております。何と言うんでしょうか。今日はアシストが5本、リバウンドも6本ありました。ボールハンドラーとしてもしっかり良くなっている部分がありながらも、その中で勝つためにチームとしてどういう役割を全うしていくのかという部分に関して、ものすごく向上している印象を受けます。彼はチームにとってすごく大切な存在だ」
崩れない守備が支える現在地。西田が語る“三河の強さ”
その西田も会見で、好調を維持するチームの強さについて「ディフェンスが大崩れしない」と切り出し、序盤の劣勢から「我慢」しながら勝ち切った攻防に手ごたえを感じていた。
さらに、チームが少しずつ先の目標を掲げながら戦っていると説き、「ディフェンスのレーティング(100回のポゼッションあたりの失点)も一つ気にしてやっています。ひとつ一つ何をすれば目標にたどり着けるのかやっているので、目標に向かって走っていきやすいですし、その積み重ねで今のディフェンス(の強さ)があるのかなと思っています」と明かした。

試合後、記者会見に臨む西田(横浜国際プール)
一方で、初の実践起用となった大型布陣については「役割が変わるので難しい部分もありました」とコメント。機動力の高い選手が減ることで、オールコートでディフェンスの圧力をかけづらくなる側面もあるという。「もう少しハーフコートのプレッシャーは上げていける部分があるのかなとやっていて感じました。ラインナップの良さをうまく生かしながら、明日(GAME2)はやりたいと思っています」と修正への意欲も口にした。
三河は翌日のGAME2では横浜BCに敗れ、連勝はストップ。それでも西地区3位(28勝13敗)につけ、ワイルドカード2位でCS進出圏内を維持している。リッチマンHCは、GAME1後、CSに向けてさらに積み上げたい要素として「ディテール」と「集中力」を挙げ、ゲームプランやチームの約束事を隅々まで遂行する力が求められると強調していた。
磨き上げてきた武器に加え、新たな可能性を示した大型布陣。アウェー横浜BC戦で得た収穫の先にあるのは、さらなる進化だ。会見でたびたび指揮官が口にした「学び続ける」という言葉。その積み重ねの先に、3シーズン連続のCS進出、そしてその先の舞台、常勝軍団の復活が見えてくるに違いない。
他会場の結果
B1第26節では、上位陣がアウェーで苦戦。東地区1位の宇都宮ブレックスは滋賀レイクスとのGAME1を落とすも、GAME2を取り返し、地区優勝マジックを「14」とした。前節まで2位だったアルバルク東京は、群馬クレインサンダーズに2連敗し3位に後退している。
西地区では首位・長崎ヴェルカが琉球ゴールデンキングスと1勝1敗。それでも優勝マジックを「16」へ減らした。一方、追走する名古屋ダイヤモンドドルフィンズは越谷アルファーズ戦に100点ゲームで連勝し、同2位ながら長崎と同率で並ぶ状況になった。
また、今節はB1の1試合最多得点記録(歴代タイ)も誕生。仙台89ERSに所属するジャレット・カルバー(#8/198cm/SG・SF)が、3月15日の秋田ノーザンハピネッツ戦で52得点を記録した。
【結果】B1 第26節(2026年3月14日 / 3月15日)
・仙台 93-70 秋田 / 仙台 87-76 秋田
・茨城 85-76 千葉J / 茨城 78-86 千葉J
・群馬 92-66 A東京 / 群馬 78-54 A東京
・大阪 104-102 富山 / 大阪 76-93 富山
・島根 91-96 佐賀 / 島根 80-77 佐賀
・琉球95-81 長崎 / 琉球 58-68 長崎
・横浜BC 79-84 三河 / 横浜BC 77-65 三河
・滋賀 83-78 宇都宮 / 滋賀 87-93 宇都宮
・越谷 72-101 名古屋D / 越谷 80-109 名古屋D
・A千葉 87-81 広島 / A千葉 91-104 広島
・三遠 90-73 北海道 / 三遠 95-81 北海道
・京都 71-62 SR渋谷 / 京都 79-78 SR渋谷
・FE名古屋 79-85 川崎 / FE名古屋 74-82 川崎
【順位表】B1 第26節終了時点(2026年3月15日)
・CS進出ラインあり。★はワイルドカード
東地区
1位|宇都宮ブレックス|33勝11敗(.750)
2位|千葉ジェッツ|31勝13敗(.705)
-------------------------------------------CS進出
3位|アルバルク東京|30勝14敗(.682)★
4位|レバンガ北海道|29勝15敗(.659)★
5位|群馬クレインサンダーズ|28勝16敗(.636)
6位|仙台89ERS|27勝17敗(.614)
7位|サンロッカーズ渋谷|18勝26敗(.409)
8位|横浜ビー・コルセアーズ|17勝27敗(.386)
9位|越谷アルファーズ|16勝28敗(.364)
10位|アルティーリ千葉|15勝29敗(.341)
11位|茨城ロボッツ|13勝31敗(.295)
12位|川崎ブレイブサンダース|12勝32敗(.273)
13位|秋田ノーザンハピネッツ|7勝37敗(.159)
西地区
1位|長崎ヴェルカ|35勝9敗(.795)
2位|名古屋ダイヤモンドドルフィンズ|35勝9敗(.795)
-------------------------------------------CS進出
3位|シーホース三河|30勝14敗(.682)★
4位|琉球ゴールデンキングス|29勝15敗(.659)★
5位|広島ドラゴンフライズ|26勝18敗(.591)
6位|三遠ネオフェニックス|25勝19敗(.568)
7位|佐賀バルーナーズ|22勝22敗(.500)
8位|島根スサノオマジック|22勝22敗(.500)
9位|大阪エヴェッサ|17勝27敗(.386)
10位|ファイティングイーグルス名古屋|15勝29敗(.341)
11位|滋賀レイクス|15勝29敗(.341)
12位|京都ハンナリーズ|14勝30敗(.318)
13位|富山グラウジーズ|11勝33敗(.250)
文=大橋裕之

