コートの外でも、もうひとつの"熱戦"が繰り広げられている。
それが「B.LEAGUE MASCOT OF THE YEAR」だ。
一見すると“かわいい人気投票”に思えるこの企画だが、実態はまったく違う。会場演出、SNS発信、グッズ展開、動画企画――クラブ総動員で挑む"本気の選挙戦"である。
すでにファン投票は終了。今年は例年以上の盛り上がりを見せた。その“マケラレナイタタカイ”を追った。
B.LEAGUE MASCOT OF THE YEAR ファン投票は終了、でも決着はまだ先へ
ファン投票は3月19日から4月5日まで実施され、総計600万ポイント超が集まった。
上位3体は、千葉ジェッツのジャンボくん、アルバルク東京のルーク、川崎ブレイブサンダースのロウル。

4位ブレッキー(宇都宮ブレックス)、5位アルファマン(越谷アルファーズ/昨季7位からジャンプアップ)。そして6位にはベルテックス静岡のベルティが入り、B2クラブ最上位という結果を残した。
ここまでは、いわば“予選”。本当の勝負はこのあとに待っている。
上位3体による決戦投票では、
①ファン投票
②選手投票
③メディア投票
④他マスコット投票
の4カテゴリで争われ、それぞれの最多得票を獲得したマスコットに1ポイントが与えられ、総合ポイントで最終順位が決まる仕組みだ。
単なる人気投票では終わらない。選手や他のマスコットからどれだけ支持されーー“業界内の評価”も結果に大きく影響する。
最終結果は、5月下旬に開催される「B.LEAGUE AWARD SHOW 2025-26」で発表される予定だ。
“ルーク一色”の空間へ。アリーナ丸ごとジャック

アルバルク東京のルークが仕掛けたのは、もはやファンサービスの域を超えていた。
選挙期間中の三遠ネオフェニックス戦で開催された恒例の「ROOK DAY」。来場者プレゼントに撮影会、SNSキャンペーン、限定グルメ、グッズ展開、さらにオリジナル楽曲「ルークとドン・ドン・ドン」まで。
気がつけば、アリーナのどこを見てもルーク、ルーク、ルーク。
場内装飾はもちろん、選手紹介のビジュアル、チアの衣装に至るまで空間そのものが“ルーク仕様”に塗り替えられていた。
ここまで徹底されると、もはやイベントではない。“推しに包まれる空間”そのものだ。
公約まで打ち出したロウル陣営。“勝ちに行く”選挙戦

川崎ブレイブサンダースのロウル陣営も、仕掛けの量と質で一歩も引かなかった。
実写LINEスタンプ第2弾にショート動画、バスケットLIVEでの「ロウルのお仕事密着」、ホームゲームでのロウル展、来場者向けポストカード配布――支持を広げる施策が、途切れることなく打ち込まれていく。
さらに打ち出したのが、「ファン投票1位でロウルディナーショー開催」という“公約”だ。
ここまで来ると、もはや企画ではない。完全に“選挙戦”である。
投票開始直後からクラブが前面に立ち、関連施策を特設ページに集約して一気に拡散。この動きの速さと整理力こそ、ロウル陣営の本気度を端的に物語っていた。
いちばん心を動かされた、ベルティの“地道な戦い”

ベルテックス静岡のベルティは、“地道さ”という意味で今季を象徴する存在だった。
クラブは公式に「ベルティマスコット選挙」と打ち出し、投票ページには「どうかあなたの1分をください!」「ベルティを1番に選択してください!」といった、率直な言葉が並ぶ。
Web、B.LEAGUE CARD、LINE、LINEコミュニティ―複数の投票経路を丁寧に整理し、迷わせない導線をつくる。その一つひとつが、確かな“選挙活動”として積み重ねられていった。
さらにベルティは、会場の外でも動いた。
選手のインスタライブに出演するため自宅まで足を運ぶフットワーク。そして“選挙カー”を走らせるという、どこか懐かしさすら感じるリアルなアプローチ。派手さではなく、積み重ねで勝負する。
その姿勢が、B2クラブながら全体6位――最上位という結果につながった。
地方クラブのマスコットが、地道な活動で全国区に食い込む。今年のマスコットオブザイヤーで、もっとも心を引き寄せたストーリーのひとつだ。
チームマスコット 51体、それぞれの戦い

今回エントリーしたのは、B1・B2・B3を合わせた全51体。
バルたん(佐賀バルーナーズ)、ティナ(仙台89ERS)、はんニャリン(京都ハンナリーズ)、ゴーディー(琉球ゴールデンキングス)――上位に入らなかったマスコットたちも、それぞれの場所で戦っていた。
会場でファンを笑顔にし、SNSで呼びかけ、自分なりのやり方で票を積み重ねる。その積み重ねの先に順位がある。結果が出て初めて、この戦いが“51体それぞれのシーズン”だったことに気づかされる。
そして今年は、もうひとつの意味でも“最後”の大会だった。
投票形式でのマスコットオブザイヤーは今回が最後。さらに2026-27シーズンからは「B.革新」によってリーグが再編され、B1・B2・B3はそれぞれB.PREMIER、B.LEAGUE ONE、B.LEAGUE NEXTへと移行する。
B.PREMIERの初年度参入クラブは26。
つまり、51体が同じ舞台で一斉に戦う光景は、もう見られない。
そう思うと、今年の選挙戦の熱量が、少し違って見えてくる。
“推される理由”は、自分でつくる
ルークは会場ごと主役にし、ロウルは企画と公約で支持を広げ、ベルティは地道な活動で票を積み上げた。
どのマスコットも、ただそこにいたわけじゃない。動いて、呼びかけて、工夫する。そうやって、“推される理由”を自分でつくっていた。
王者が誰になるのかは、5月下旬に明らかになる。ただ、それ以上に確かなことがある。
知らなかったマスコットを知り、知ったマスコットを好きになる。そして、いつかそのクラブの試合を見に行きたくなる。
そのきっかけは、すでにこの春、いくつも生まれている。51体が全力で動いたこの季節は、Bリーグに新しい「推し」を増やした時間でもあった。


