来場者はのべ約80万人。サンロッカーズ渋谷の本拠地・青山学院記念館は2016年のBリーグ開幕以降、プロバスケットボールの試合で賑わいを見せてきた。
渋谷にある大学の体育館が熱気に包まれてきたのも、選手・ファン・スタッフなど関わるすべての人々の尽力があってこそだ。だがクラブは、2026-27シーズンから本拠地を移転する。惜しまれつつも、4月25・26日にレギュラーシーズンホーム最終戦を迎えた。

産官学連携で“青学”がホームに。なぜ移転するのか

1935年設立の日立本社バスケットボール部を前身に持つサンロッカーズ渋谷(SR渋谷)は、今シーズンでクラブ創設90周年を迎えた歴史あるクラブだ。

Bリーグ開幕に向けてホームアリーナが見つからず苦慮していたなか、当時クラブ社長だった岡博章氏が、渋谷区の長谷部健区長に相談。区内の青山学院大学を紹介されたことをきっかけに、産官学連携による青山学院記念館のホーム使用が実現した。

“青学”といえば、立地とクラシックなたたずまいが印象的だ。表参道駅、渋谷駅のいずれからも徒歩圏内にあり、Bリーグ10年の歴史のなかで236試合が開催され、のべ約80万人(4月22日時点)が来場した。都会のど真ん中でプロバスケットボールが楽しめる環境をつくりあげてきたことは間違いない。1964年竣工という歴史もあり、設備の古さは否めないが、昨今の大型アリーナとは対照的に天井が低く、コートを中心に熱と声が凝縮されるような独特の一体感は大きな魅力だった。

画像: 産官学連携で“青学”がホームに。なぜ移転するのか

チームの戦績は140勝96敗。土壇場での勝利や敗戦、ルーキーのデビュー戦、クラブのレジェンド引退など、数々のドラマがこの場所で生まれてきた。

2020年3月14、15日に行われた対秋田ノーザンハピネッツ戦では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため無観客試合開催され、歓声のない“青学”という異様な光景も経験した。ファンあってこそのプロバスケットボールであり、当たり前に試合が行われる日常の尊さを改めて感じさせる出来事だった。

当時、指揮を執っていた伊佐勉HCは、「私も初めての経験で、秋田ノーザンハピネッツさん、いろんな選手・コーチを含めて経験がないと思いますが、やっぱり難しい試合だった」と振り返った。当時秋田の指揮官だった前田顕蔵HCは「渋谷の選手も秋田の選手もリーグ全体を通して、本当に現場のスタッフ、関係者、非常に気をもむ状況の中、バスケットができるということ、一生懸命スポーツに取り組めることを嬉しく思います」と語っていたのが思い出される。

一方で、チームのオーナーシップは2022-23シーズンから日立グループからセガサミーホールディングスへと移行。B.LEAGUEが掲げる新リーグ構想「B.革新」のトップカテゴリー「B.LEAGUE PREMIER(Bプレミア)」参入を見据え、ライセンス基準を満たすための決断が下された。

ホームアリーナ要件を満たすため、2026-27シーズンからアルバルク東京が運営する「TOYOTA ARENA TOKYO」を共同使用することを発表。これに伴い、ホームタウンも渋谷区から江東区へと移転することにもなった。

古巣戦の大塚裕土がキャリアハイに並ぶ6本の3Pをヒット

迎えた“渋谷ラストシーズン”。SR渋谷はチャンピオンシップ返り咲きこそならなかったが、2026年4月25、26日に行われたB1第35節のレギュラーシーズンホーム最終戦には、多くのファンが詰めかけた。対戦相手はアルティーリ千葉(A千葉)。ティップオフ前から会場は熱気に包まれ、限られたスペースに工夫して配置された飲食や物販のブースも人でごった返していた。

メディア用控え室兼記者会見場は、体育館の備品が置かれているスペース。やや手狭で冬は寒く冷え込む環境だが、“最後”となると、その空間さえも感慨深く感じられた。

そして試合に目を向けると、立ち上がりは古巣対戦となったA千葉の大塚裕土(#24/188cm/SG)が主役だった。Bリーグ元年の2016-17シーズンにSR渋谷に所属し、青山学院記念館ではキャリアハイの24得点を記録。その記憶をなぞるように、1クォーターだけで3本の3ポイントシュートを射抜く。

画像1: 古巣戦の大塚裕土がキャリアハイに並ぶ6本の3Pをヒット

それでもSR渋谷はベンドラメ礼生(#9/183cm/PG・SG)や山内盛久(#32/175cm/PG)らの3ポイントシュートで逆転。21-18で1クォーターを終えると、2クォーターでも流れを渡さず37-32とリードを広げて前半を折り返した。

だが、3クォーターはA千葉が反撃。再び大塚が3本の3ポイントシュートをヒットさせ、司令塔の黒川虎徹(#3/175cm/PG)も4アシストでオフェンスをけん引。55-56と逆転に成功し、4クォーターへ突入する。

画像2: 古巣戦の大塚裕土がキャリアハイに並ぶ6本の3Pをヒット

それでもSR渋谷は最後の10分で底力を見せた。持ち味のディフェンスが機能し、開始から6分以上も無失点に抑えると、野﨑零也(#12/185cm/SG)、ジョシュ・ホーキンソン(#8/208cm/C・PF)が得点を重ねて再逆転。さらにディディ・ロウザダ(#0/196cm/SF)の好プレーも光り、79-69でホームの歓声に応える白星を勝ち取った。

画像3: 古巣戦の大塚裕土がキャリアハイに並ぶ6本の3Pをヒット

「自分を強くしてくれた環境」(A千葉・大塚)

試合後には、青学1年目を知る選手たちが記者会見に臨んだ。その一人、A千葉の大塚は、この日キャリアハイタイとなる6本の3ポイントシュートを射抜き、シーズンハイの18得点を記録。今シーズン限りで現役引退を表明しているが、なおも力の健在ぶりを印象づけた。

画像: 「自分を強くしてくれた環境」(A千葉・大塚)

10年前を振り返り、大塚は当時、練習場から電車で移動していたエピソードを明かしながら「クラブが大きくなる前を経験しているので、非常にいろいろな思い出がある」と語る。「サンロッカーズさんもBプレミアに行ってアリーナ移転をしてからも、青山学院記念館という場所は思い出にしてほしい」と続けた。

また、SR渋谷で過ごした1シーズンについては「自分を強くしてくれた環境」と表現する。

Bリーグ開幕のタイミングで、旧bjリーグの秋田からNBLの渋谷へ移籍。当時はNBLの方がレベルが高いと見られていたこともあり、「その中でも出ればやれるんだよという姿をしっかり見せたかった」という思いがあったという。開幕当初はチームのシステムへの適応に時間も要したものの、シーズン中盤以降は当時アシスタントコーチだった勝久ジェフリー氏らと朝練習に励むなど「(壁を)乗り越えた思い出がある」と振り返る。

当初は「誰が来たんだろう」という声もあったというが、見返す気持ちを胸に戦い抜いた。次節の千葉ジェッツ戦を持って、16年にわたるプロキャリアに別れを告げる。

「青学のこのアリーナが本当に大好き」(SR渋谷・ベンドラメ)

そんな大塚にとって、SR渋谷のベンドラメ礼生は、かつてのチームメイトであり、東海大学の先輩でもある。

「最後に青学で一緒にプレーできたのは、大塚さんにとってもすごく良かったと思うし、僕も先輩が引退するシーズンにしっかりマッチアップして、青学でプレーできたというのは嬉しかったです」と語った。

画像1: 「青学のこのアリーナが本当に大好き」(SR渋谷・ベンドラメ)

Bリーグ初代新人王に輝き、生え抜きとしてクラブの歩みとともに成長してきたベンドメラは、改めて“ホーム”の価値を言葉にした。

まさに、一体感が生まれるコートだった。

「青学は、ほかのアリーナに比べて観客席が本当に近いので、選手の息遣い、体と体がぶつかる音、他のアリーナでは感じることのできない臨場感とか、その試合の激しさを感じることができるアリーナだったと思います。それは選手も一緒で観客の熱気、声援が、より近くで肌に感じるアリーナでした。そういったところは、青学ならではだと思うし、すごく印象に残っています」

そしてチームは翌26日のGAME2(● 85-87)後、「ありがとう 青学。」セレモニーを実施。ベンドラメがスピーチに立つ前には、会場から割れんばかりの拍手が送られ、10年分の思いがあふれた。

SR渋谷は、青学でゼロからプロクラブとしての形を築いてきた。そして今秋からは、その歴史を受け継ぎながら、新たな地でクラブの“あり方”をつくっていく。

画像2: 「青学のこのアリーナが本当に大好き」(SR渋谷・ベンドラメ)

「こんばんは。たくさんの人たちに見守られて、このような式典を開催できること、とてもうれしく思います。僕は、ここでプロのキャリアを始めて、Bリーグともに、どんどんどんどん成長していく青学のこのアリーナが本当に大好きでした。

10年目のファンの方も、まだ1年しか見ていない方も、たくさんの思い出があると思います。勝って美味しいお酒を飲んだ日、負けて一緒に悔しがった帰り道、そういったたくさんの思い出がある、この青山学院記念館。そして、ここでプレーできたことをとても誇らしく思います。この青学で、B1で、サンロッカーズがプレーできたことは、たくさんのフロントスタッフやボランティアの方の努力、そしてたくさんの奇跡が重なった結果だと思います。

そういった人たちの関わり、そういった基盤があるからこそ、僕たちはプレーできているということを胸に、来シーズンからは新しいアリーナで、しっかりとサンロッカーズを見せていけたらいいなと思います。これからもたくさんの人の努力と、たくさんの奇跡が、僕たちをどんどんどん大きくしていくと信じています。今後も熱いサポートをしていただけると、とてもうれしいです。ありがとうございました」

画像3: 「青学のこのアリーナが本当に大好き」(SR渋谷・ベンドラメ)

他会場の結果。地区優勝決定、CS 出場チームが出そろう

B1 第35節では、地区優勝チームが決定した。東地区は宇都宮ブレックスが3大会連続5回目、西地区は長崎ヴェルカがクラブ初の優勝を飾った。

画像1: 他会場の結果。地区優勝決定、CS 出場チームが出そろう
画像2: 他会場の結果。地区優勝決定、CS 出場チームが出そろう

また、チャンピオンシップに進出する残り3チームも今節で決定。東地区から群馬クレインサンダーズ(2大会連続2回目)、千葉ジェッツ(9大会連続9回目)、アルバルク東京(5大会連続8回目)が名を連ねた。

ただし、地区優勝の宇都宮と長崎以外の6チームは順位が確定していない状況。CSの組み合わせは、最終節(5月2、3日)の結果に委ねられる。特に地区2位の千葉とシーホース三河が、CSのホーム開催権を確保できるかに注目ポイントとなる。

【結果】B1 第35節(2026年4月25日 / 4月26日)

・仙台 100-94 横浜BC / 仙台 75-86 横浜BC
・北海道 65-105 群馬 / 北海道 83-81 群馬
・越谷 90-84 川崎 / 越谷 89-79 川崎
・SR渋谷 79-69 A千葉 / SR渋谷 85-87 A千葉
・三河 87-67 三遠 / 三河 76-73 三遠
・京都 88-78 大阪 / 京都 83-92 大阪
・FE名古屋 73-83 長崎 / FE名古屋 69-91 長崎
・琉球 92-78 佐賀 / 琉球 96-91 佐賀
・名古屋D 69-87 宇都宮 / 名古屋D 74-90 宇都宮
・千葉J 83-68 広島 / 千葉J 88-74 広島
・富山 82-72 秋田 / 富山 94-77 秋田
・島根 79-88 茨城 / 島根 81-69 茨城
・A東京 101-74 滋賀 / A東京 87-77 滋賀

【順位表】B1 第35節終了時点(2026年4月26日)

・CS進出ラインあり。出場 ホーム開催決定:★ / 出場確定:☆
東地区
1位|宇都宮ブレックス★|44勝14敗(.759)
2位|千葉ジェッツ☆|40勝18敗(.690)
-------------------------------------------CS進出ライン(地区2位以上)
3位|群馬クレインサンダーズ☆|40勝18敗(.690)★WC3位
4位|アルバルク東京☆|40勝18敗(.690)★WC4位
-------------------------------------------CS進出ライン(WCによる進出)
5位|レバンガ北海道|36勝22敗(.621)
6位|仙台89ERS|35勝23敗(.603)
7位|横浜ビー・コルセアーズ|26勝32敗(.448)
8位|サンロッカーズ渋谷|24勝34敗(.414)
9位|越谷アルファーズ|20勝38敗(.345)
10位|アルティーリ千葉|19勝39敗(.328)
11位|茨城ロボッツ|17勝41敗(.293)
12位|川崎ブレイブサンダース|14勝44敗(.241)
13位|秋田ノーザンハピネッツ|10勝48敗(.172)

西地区
1位|長崎ヴェルカ★|46勝12敗(.793)
2位|シーホース三河☆|42勝16敗(.724)
-------------------------------------------CS進出ライン(地区2位以上)
3位|名古屋ダイヤモンドドルフィンズ☆|41勝17敗(.707)★WC1位
4位|琉球ゴールデンキングス☆|41勝17敗(.707)★WC2位
-------------------------------------------CS進出ライン(WCによる進出)
5位|三遠ネオフェニックス|34勝24敗(.586)
6位|広島ドラゴンフライズ|31勝27敗(.534)
7位|佐賀バルーナーズ|30勝28敗(.517)
8位|島根スサノオマジック|27勝31敗(.466)
9位|大阪エヴェッサ|23勝35敗(.397)
10位|滋賀レイクス|22勝36敗(.379)
11位|京都ハンナリーズ|19勝39敗(.328)
12位|ファイティングイーグルス名古屋|17勝41敗(.293)
13位|富山グラウジーズ|16勝42敗(.276)

文=大橋裕之

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