どのようなプロセスでロサンゼルスへの切符をつかむのか。今春のアジアカップを皮切りに、そのロードマップをひも解いていく。
「FIBA 3x3 アジアカップ 2026」2年連続の4強入り。「自分らがやるべきことはやれた」(小澤)
春先のシンガポールは、日本と対照的な気候だった。最高気温は連日30度を超え、湿度は90%近い。屋外でプレーするにはタフな環境のなか、アジアNo.1を決める「FIBA 3x3 アジアカップ 2026」(4月1日〜5日)に、男女の3x3日本代表が出場した。
金メダル獲得を狙ったなか、ともに4位で大会を終え、悔しさは残った。それでも、戦いぶりからは継続的な強化の跡を感じられた。
男子代表は中祖嘉人HCのもと、昨年から代表を背負う小澤崚(#13/178cm/SHIBUYA SCELFIDA)、仲西佑起(#24/191cm/NINJAAIRS)、井後健矢(#15/198cm/SAGAMIHARA PROCESS)の3人に、クーリバリ ソロモン(#33/183cm/UTSUNOMIYA BREX.EXE)を新戦力として加えて臨んだ。

予選を1勝1敗の2位で通過すると、準々決勝では過去2度のアジア王者モンゴルを21-20で撃破。準決勝では今大会王者のニュージーランドに16-21で敗れ、3位決定戦でも中国に20-22で惜敗した。
結果は昨年と同じ4位。ただ、そこに至る過程は大きく異なる。2025年大会では、FIBA3x3の1試合最多得点「20得点」を記録するなど、小澤が大会ベスト3に選出される活躍でチームをけん引した。一方で今大会は、他の選手たちの存在感も際立った。初代表のソロモンはアグレッシブなオフェンスで、チーム最多得点を記録。仲西、井後もソロモンや小澤のハンドラーたちと息のあったプレーでイージーレイアップを何度も決めるなど見せ場をつくり、その高いコンビネーションに会場から大きな歓声が上がるほど。ディフェンスの力強さも増している。

エースの小澤は調子を上げきれず、3位決定戦後には「みんなに頼ってばかり」と負担をかけた出来を悔やんだ。それでもチームとして「自分らがやるべきことはやれた」と振り返る。誰かの不調をカバーできるチーム力こそ、この1年で積み上げてきた成果と言えるだろう。
次につながる4位。「(戦い方を)積み上げている最中」(鶴見)
女子代表は前田有香HCのもと、鶴見彩(#5/165cm/MAURICE LACROIX)、高橋未来(#7/169cm/アイシン ウィングス)、花島百香(#8/178cm/ENEOSサンフラワーズ)、野口さくら(#13/182cm/アイシン ウィングス)の布陣で出場。予選を2連勝で突破し、準々決勝では勢いのあるタイを15-13で退けた。準決勝ではリードを奪う時間帯もあったが、180㎝超えの大型選手を加えて躍進したフィリピンに19-21で惜敗。3位決定戦でも190㎝超えのビッグマン2人も擁する中国に15-20で敗れた。

それでも、チームは初結成の4人ながら、昨春の銀メダル獲得に貢献した鶴見を軸に、Wリーグで活躍する若い3人と融合。互いを信頼して戦い抜いた姿が光った。5人制の代表経験を持つ野口は「全員がみんな本当いい人で、何か一個になろうとしなくても一個になれるようなチーム」と表現した。
かつての3x3女子代表は個の強さを前面に出すスタイルだったが、前田HCは就任以来、2対2でピック&ロールを使ってディフェンスとのズレをつくり、オフボールの動きも組み合わせるなど、“チームで崩しながら個を活かす”戦い方を構築してきた。鶴見がハンドラーとしてゲームを組み立て、シューター高橋が2ポイントシュートを射抜く。野口や花島も合わせのプレーで得点を重ねつつ、個で打開できる強さも活きた。
鶴見は3位決定戦後、悔しさをにじませながら「(戦い方を)積み上げている最中」とコメント。次につながる4位だった。

LA 2028の目指し方。国別ランキングでアジア2位以内
そんなアジアカップは、3x3日本代表にとって2028年のロサンゼルスオリンピック(LA 2028)出場を目指すうえでの初陣でもあった。
夢の舞台まであと2年。2021年の東京2020オリンピックでは、女子が最終予選を突破して本大会でアメリカを破る金星を挙げるなど4位に進出。男子も6位に入った。パリオリンピック出場は逃したものの、強化次第で3メダル獲得の可能性は高い。では、どうすればLA 2028の切符をつかめるのか。その道のりを整理する。
LA 2028では、3x3の出場枠が男女それぞれ4枠増え12枠となる。うち1枠は開催国アメリカに割り当てられ、残る11枠のうち、まず5枠は2027年12月1日時点のFIBA 3x3国別ランキングをもとに各ゾーン(アジアパシフィック/アメリカ/ヨーロッパ/アフリカ)の上位国へ与えられる。
国別ランキングは、各国上位20選手の個人ポイントを合算して算出され、対象期間は2年。2026シーズン(2025年12月1日〜2026年11月30日)と2027シーズン(2026年12月1日〜2027年11月30日)の積み上げが、そのままロサンゼルスへの距離を左右する。
注目すべきはゾーンごとの配分で、日本が所属するアジアパシフィックには「2枠」が与えられている。アメリカ、ヨーロッパ、アフリカがいずれも1枠であることを踏まえると、日本にとっては出場権獲得のチャンスが大きいのだ。
残る6枠は、2028年3月から6月にかけて4度開催されるオリンピック世界最終予選(Olympic Qualifying Tournament/以下OQT)で争われる見込みだ。4回あるOQTのうち、日本は最大3大会に出場できる可能性があるが、いずれも限られた枠を争う厳しい戦いとなる。

日本は今後2年で国別ランキングを押し上げ、アジアパシフィック上位2以内を目指す。男女とも最新ランキング(4月28日時点)ではいずれも3位。OQTを戦わずとも、LA 2028の出場権獲得を狙える位置につけている。
大学生のバラダランタホリ「オリンピックを狙っていきたい」
では、どうやって国別ランキングを上げるのか。3x3は大会ごとにグレードが設定されており、グレードが高い大会ほど獲得ポイントも大きい。つまり、競技力の向上だけでなく、ポイントを戦略的に獲得していく取り組みも必要になるのだ。アジアカップは10段階のうち、2番目に高いグレードに位置づけられており、今後2年間でより上位大会に継続して出場し、結果を残していくことが重要になる。
男子代表は強化方針として「3本の矢」を掲げ、LA 2028を目指す。1本目は、アジアカップに出場した3x3専任選手たち。日本代表としてアジアカップだけでなく、6月に開催されるワールドカップなどの国際大会で結果を狙うとともに、所属クラブではアジアカップと同格の「FIBA 3x3 チャレンジャー」や最高峰の「FIBA 3x3 ワールドツアー」への出場に挑戦し、強豪との戦い方を重ねながらポイント獲得を目指す。
2本目はアンダーカテゴリーの代表だ。23歳以下を対象とした「FIBA3x3 ネーションズリーグ」や「FIBA 3x3 U23ワールドカップ」「アジア競技大会」に出場。3本目は、Bリーグの選手たちがオフシーズンに3x3へ取り組む「JBA 3x3スペシャライズドチーム」を立ち上げて、「Team TOKYO 2026」としてワールドツアーやチャレンジャー参戦を目指す。
今夏に向けては、トーマス・ケネディ(201㎝/シーホース三河)や小川麻斗(176㎝/京都ハンナリーズ)、長谷川比源(202㎝/滋賀レイクス)ら6名のロスターがすでに決定している。
4月22日には男女の3x3日本代表メディアデーが開催され、アジアカップ出場メンバーやアンダーカテゴリーの選手たちが招集された。その若手の一人、バラダランタホリ玲依(大東文化大学)は、昨年ネーションズリーグに出場したU23世代のホープ。195㎝のサイズを活かしたディフェンスやリバウンドの強さが光り、チームを盛り上げる存在としても期待される。

大学では5人制でプレーする一方、3x3にも意欲的。「3x3の合宿に何回も呼んでいただいて、4年生なので将来目指すべきところを考える時期ではありますが、3x3は選択肢の中にあります」と話す。
6月のワールドカップ、今年のネーションズリーグ、今秋のアジア競技大会(愛知)と、「すべてのカテゴリーで(代表入りを)狙っていきたい」とも公言して「自分がどう活躍できるか、3x3をどう日本で盛り上げていけるか。しっかり結果を残せるようにプレーをして、A代表につなげて2年後のオリンピックを狙っていきたい」と力強く語った。
女子代表が出場する国際大会が8月に東京・代々木で開催。宮下は「すごく楽しみ」
一方で、女子代表は5月から「FIBA3x3 ウィメンズシリーズ」に参戦し、強化を加速させる。この大会は各国代表やクラブチームが出場する女子3x3世界最高峰のツアーで、10段階のグレードのうち3番目に位置づけられている。世界ランキング上位国の選手たちは5人制で活躍する選手も多いが、オフシーズンに3x3に参戦し世界を転戦するケースが多く、日本も同じアプローチを取る。
すでに今年は複数大会への参戦が決まっており、6月のワールドカップ出場までを見据えたロスターも発表された。鶴見、高橋、野口というアジアカップ組に加え、宮下希保(178cm/富士通レッドウェーブ)、田中平和(181cm/トヨタ自動車アンテロープス)が名を連ね、大会ごとに4名をエントリーしていく。
当初は昨年のワールドカップなどに出場した桂葵(182cm/トヨタ紡織サンシャインラビッツ/ZOOS)もロスター入りしていたが、アゼルバイジャンの3x3チーム「Neftchi(ネフチ)」でウィメンズシリーズに参戦することが決まり、代表ロスターからは外れた。これは本人、所属チーム、3x3女子日本代表の合意により決定された。FIBAでは他国チームで得した個人ポイントも国別ランキングに加算されるため、海外挑戦する意義は大きい。ワールドカップの代表選考対象は変わらず、強化合宿にも参加予定で、出場大会も8大会が確保されているという。前田HCもかつて同シリーズに参戦した経験を持ち、その価値を知る一人だ。前例なき挑戦は、ロサンゼルスに向けた起爆剤になりそうだ。
さらにウィメンズシリーズは今年8月に日本で開催される。日本バスケットボール協会主催で東京・代々木第二体育館にて8月1日、2日に行われるほか、群馬の3x3チーム「FLOWLISH GUNMA」も大会を誘致し、高崎アリーナでも8月29日、30日に開催予定。海外転戦が多いなか、国内で代表選手のプレーを見られるまたとない機会だ。
メンバー入りすれば、日本のファンの前で3x3をプレーするのは初となる野口は「楽しみな部分と(勝たないといけない)緊張感も海外でやるよりもすると思います。でも、それまで期間があるのでチーム全員で積み上げ、良い状態で日本での試合を迎えられたら」とコメント。2024年に宇都宮で行われたパリオリンピック予選に出場した宮下も、ホーム開催を心待ちにしている。
「本当に日本のファンの方の応援はすごく熱くて、宇都宮でやったとき(ケガ人が出て)最後(のドイツ戦は)3人だったので、本当に体が動かなくて。だけど本当に声援や、頑張れっていう会場の雰囲気に助けられて、最後までやりきれた感じでした。すごく楽しみです」
オフシーズンに入るBリーグやWリーグ、NBAと入れ替わるように、これから3x3のシーズンが幕を開ける。2028年のロサンゼルスオリンピックを目指す選手たちの戦いはここからが本番。バスケットボールシーンで奮闘する姿を例年以上に多く見せてくれるはずだ。2026年は、そんな夏になるに違いない。
取材・文=大橋裕之

