36歳で初の移籍…「注目してもらっていると思う」
Bプレミアが開幕して注目を集める一人が、京都の岸本隆一(#14)だ。36歳のベテランは昨季まで琉球に14季在籍。bjリーグ時代の2013年加入以来、Bリーグ制覇や天皇杯優勝など数々の栄光をもたらしてきたフランチャイズプレーヤーだった。
その彼が2026-27シーズン、プロ初の移籍を決断。村上直GMが「高い技術とゲームコントロール能力に加え、ガードとしての圧倒的な支配力、そして勝負所でゲームを決定付ける力、ブースターを魅了するカリスマ性、そのどれもがリーグ屈指のガードと称されるにふさわしい」と絶賛すれば、琉球時代に共闘した伊佐勉ヘッドコーチ(HC)も「10年連続チャンピオンシップ出場という経験を、ぜひ京都ハンナリーズでも発揮してほしい」と期待を込める。
本人も期待を認識済みだ。9月1日の取材で移籍の理由について「これだっていうのはひとつではないんです」と前置きをしつつ、Bプレミア開幕やルール変更など「いろいろと自分の状況を考えたときに、こういう形(移籍)になった」と考慮した末の決断だったと明かした。熟考の末に日本一を目指すクラブでの挑戦を選び、「良くも悪くも、注目してもらっていると思うので、しっかりコートで表現できたらという思いです」と語っていた。
「らしくない」様子も、王者撃破の一戦で指揮官が賞賛
9月25日のホーム開幕戦(滋賀レイクス戦)で、岸本はいきなり真骨頂を見せる。最大18点差をひっくり返す95-94となり、92-94で迎えた4クォーターの残り5.8秒で劇的な逆転3Pシュートを射抜いたのだ。試合後のインタビューで「今日やっとハンナリーズの一員になれた気がします」と放ったフレーズも強烈な印象を残した。

さらに10月3日の長崎ヴェルカ戦でも勝利に貢献。昨季王者相手1クォーターは10-21と出遅れるも、2クォーターからゾーンディフェンスで巻き返し、74-74で持ち込んだ延長戦を84-76で制した。
岸本自身は8得点、3アシストながらFG成功率20%とシュート精度を欠いた。それでも伊佐HCは「今日はちょっと乗れていなかった」としつつ、「経験値がかなり違う」と勝利に貢献した姿を称えた。延長戦を含めチーム4番目の28分23秒を託した理由をこう語り、その存在感を賞賛した。
「特に今日みたいな緊迫したゲームで、彼がコートにいるのは昨シーズンまでは無かったことです。調子が岸本らしくないパフォーマンスだったと僕は思っていますが、ただそれ以外のところでチームのプラスになることがいっぱいある。そういった意味ではしっかりゲームを締めてくれて、勝ちにつなげてくれたんじゃないかと思います」

前田、ジャクソンが証言する「隆一さん」加入による変化
数字に表れない岸本の役割。仲間へ声を掛け、クロックが止まればハドルを組み、一時逆転されても冷静にスコアボードを見つめ、まだまだこれからと言わんばかりの様子だった。前田が4クォーター終盤に3Pシュートを射抜いたシーンでは、決まる前から“確信歩き”で拳を上げるなど、チームの士気を高め続けた。
ベテランの加入で何が変わったのか。キャプテンの前田は「一番はチームに落ち着きが出た」と言い、「劣勢の場面でも、やっぱり隆一さんがコートにいたら、安心感があります」と明かす。説得力ある言葉選びにも「あまり喋るタイプじゃないんですけど、隆一さんのコメントに説得力があると感じています。それだけのことを成し得てきたキャリアだと思いますし、言葉ひとつひとつの選び方とか、そういうのがすごく良いなって思っています」と深く信頼を寄せる。

一方で、ジャクソンは岸本がチームのコミュニケーションを活性化させていると感じている。3日の長崎戦では岸本から供給されるパスに、ゴール下で合わせて得点を重ねたシーンがあった。連携の具合を尋ねると「そういった練習を普段からしていますし、その中でしっかり自分たちでコミュニケーションを取っているというところも、大事な要因のひとつ」とコミュニケーションの変化を感じている。
「コート外でも、常に自分たちがどういうバスケットをするべきか、みたいなコミュニケーションを取っていますし、そこがすごく良いんじゃないかと思っています。もちろん、彼もすごく自分に対してコミュニケーションを取ってくれますし、彼自身みんなの前で意見を言ってくれるところもある。それも彼のキャラクターですし、僕もそういったキャラクターではあるので、お互いのことをどんどん分かち合っているんじゃないかと思っています。そういったコート内外のコミュニケーションも含めて良くなり、良いケミストリーを作れている要因のひとつになっていると思っています」

大きな支えを得て「共に、登る。」…プレーオフを目指す
チームは翌4日の長崎戦も90-65で快勝しホーム2連勝。昨季西地区11位から、新加入の岸本らを加えた今季は開幕4試合で3勝1敗と白星を先行させている。
コート外でもオーセンティックユニフォームの売れ行きが示す通り、背番号「14」の影響力は絶大だ。今秋には専用練習場が完成し、2028年には新アリーナ開業も控える京都ハンナリーズ。クラブスローガン「共に、登る。」のもと、Bプレミア制覇へ向けた第一歩として「プレーオフ進出」を掲げる今季、岸本隆一という強固な支えを得たチームの今後が楽しみだ。

文=大橋裕之

