サッカー元日本代表の主将として活躍し、現在はJFAの会長を務める宮本恒靖氏と、楽天やヤフーで要職を歴任し、現在はBoostCapitalの代表を務める小澤隆生氏によるトークイベントが、JFAサッカー文化創造拠点「blue-ing!」(東京都文京区)で実施された。

「ビジネスの発想で、日本サッカーを強化するには?」

画像1: 撮影:加藤 甫

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日本サッカー協会が主催し、キャリアSNSを運用するYOUTRUSTが協力したトークショーでは、宮本恒靖氏と小澤隆生氏が今まさに感じている日本サッカー界の課題や、明るい未来に向けた手応えなど、熱い本音が語られた。

「ここがヘンだよ日本サッカー」

画像2: 撮影:加藤 甫

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小澤: 僕がJFAの理事に就任し、1年半ほどの月日が流れました。おかげさまでものすごく自由に発言させていただいていて、本当に充実した日々を過ごしているんですが…。

日本サッカー界の強化が着々と進む一方で、「果たしてその価値を最大限に生かせているんだろうか?」とか「さらに高い価値を生み出せるのではないか?」といった課題も感じるようになりまして。

今日は、サッカーを愛するビジネスマンの皆さんとのコミュニケーションを通じて、日本サッカー界の課題解決や、さらなる成長に繋げられたらと思っております。宮本さんは「日本のサッカー界をさらに大きな存在に出来たら」と、日頃からお話しされていますね?

宮本:そうですね。選手としてプレーしていた時も、現役を引退し、監督としてチームを率いていた時期もその思いは常に抱いていましたし、会長に就任して1年半ほど経った今も、その気持ちが変わらないどころか、日に日に強くなっているようにも感じています。
小澤: 確かに、僕が接しているJFA職員の皆さんは、開かれたカルチャーの中で、本当に情熱を持って仕事をしてくださっているように感じるのですが……。何か具体的な目標はあるのでしょうか?
画像3: 撮影:加藤 甫

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宮本:僕がまだ現役を続けていた2005年に、日本サッカー協会は「2050年までにW杯を自国で開催し、その大会で優勝を目指す」と宣言しました。

来年行われる北中米W杯への出場を決めた男子日本代表チームももちろんですが、女子日本代表(なでしこジャパン)や若手世代についても、着々と強化が進んでいる状況です。良い競技成果をあげることで、皆さんのサッカーに対する関心も高まりますし、それらはやがて社会や地域に還元され、良い循環を生み出していくことにつながると思います。

小澤:確かに。(宮本)恒さんのおっしゃる通り、男子フル代表は史上最強と言っても良いですし、「サッカーを強化することに長けたプロフェッショナルな人材」は揃ってきたように思いますが……。ビジネス面に焦点を当てると、まだまだ多くの課題があると僕は感じているんですよ。

良い選手を発掘する仕組みが整えたり、Jリーグに実力のある外国人選手や監督を呼んで、リーグのレベルを高めていくことも大切ですが、そのためにはどうしてもお金がかかる。サッカーというコンテンツを利用し、JFAやJリーグといった日本サッカー界が発展させていくためにはどうすれば良いと思いますか?

宮本:だんだん会場にいるスタッフの皆さんの表情が暗くなっていて、ちょっと心配なんですけど……。(苦笑)日本サッカー協会は、100年を超える歴史を持ち、これまでに日本代表チームの強化や競技会の運営、アンダーカテゴリの強化といった業務に取り組んできました。

現在は、年間210億円くらいの規模で運営を続けていて、これを6年後の2031年までに300億円に増やすことを目指してさまざまな取り組みを進めているところです。この先の日本は、少子高齢化やスタジアム老朽化といった課題もありますし、子供達にサッカーを充実した環境でプレーしてもらうためには、金銭面の問題が課題として浮かび上がってくると思いますが、日本サッカー界がより大きく、強くなるための方法を皆さんと一緒に模索していけたらという思いです。

画像: 当日はYOUTRUST本社(東京都渋谷区)でもパブリックビューイングが行われ、多くのビジネスマンがトークショーの様子を見守った。

当日はYOUTRUST本社(東京都渋谷区)でもパブリックビューイングが行われ、多くのビジネスマンがトークショーの様子を見守った。

日本サッカーが強く・大きくなるためのセンターピン

画像4: 撮影:加藤 甫

撮影:加藤 甫

続けて、強く大きくなるためのセンターピン」と題して、日本サッカー界が抱える集客や資金面における課題について議論が展開された。

小澤: 先ほども触れたように、近年は「世界有数の強さを誇る」と言っても言い過ぎではないくらいにまで、日本代表の強化は進みましたが、コンテンツの使い方や、それらを軸にしたビジネスの展開に関しては、まだまだ出来ることがあると思っているんです。

金銭があれば、選手の育成や助成に使えるようになりますし、宮本さんがプレーヤーだったときに苦労されたこともあるさまざまな問題も解決する。サッカー選手の給与が上がったら、選手を目指そうとする子どもたちは、きっとさらに増えていくでしょう。

僕は、20年前に東北楽天ゴールデンイーグルスの設立に携わらせていただき、そこでさまざまな変革を経験してきました。例えば、お客さんが入っていないスタジアムに、どうすればきていただけるようになるのか。それを必死に考えながら我々は頑張りましたし、そのおかげでパ・リーグの6球団に所属する選手たちは、満員の観衆の中でプレーができるようになった。

日本サッカー界に目を向けると、女子サッカーなどはまだまだ集客で苦しんでいる部分が見られますが、いつか「辛い時代があったよね」と笑って語り合える日のために、現状の課題としっかり向き合い、解決していかなければならないと思っているんです。「サッカー界がさらに発展していくには、金銭と人材が必要だ」と僕は思っていますが、宮本さんはどうお考えですか?

宮本:そうですね。近年の日本人選手が海外諸国プレーするような動きに加えて、アジアの指導者が海外のチームを指揮することも、珍しくなくなってきて、ヨーロッパとアジアのライセンス格差も、徐々に埋まっていくように感じています。

そして、これは僕の個人的な意見ですが、日本サッカー界の課題として早急に改善しなければならないと感じているのが、選手が欧州クラブに移籍する際に、十分な移籍金が支払われていないことです。

Jリーグが開幕した頃から、「ヨーロッパでプレーする日本人選手を送り出して、その活躍を後押ししよう」という機運はありましたが、クラブがどんなに素晴らしい選手を育てても、本当に安い移籍金で海外に移籍してしまうケースも多く、次の人材育成やクラブへの還元ができなかったケースが少なからず見られました。

適正な移籍金が支払われるようになるだけでも、日本のサッカー界は大きく成長すると思いますし、今後改善していかなければいけない点なのかなと感じています。

小澤: JFAは野球業界しかわからない僕を受け入れてくれて、積極的に意見を受け入れてくれる素晴らしい組織だと思うんですが、かたや「公益財団法人」でもあり、どちらかというとこれまではパブリックな要素を重視して、発展してきたように思います。ただ「これからはもっとガツガツしている優秀なビジネスマンが、必要なのでは?」と思うんですけど……? その点についてはどうお考えですか?
宮本:JFAの中にも、運営やパートナー探し、法務など、いろいろな部署がありますから……。個人的には、例えばFIFA主催大会の日本開催にこぎつけたり、世界のサッカー界における良いポジションを取れるのかどうかが、本当に重要だと思っています。そのためには、語学などのさまざまな知見をお持ちの方のサポートが必要ですし、専門性のある多くの方々にサッカー界で活躍してもらえたらという思いもあります。

企業目線でサッカーの価値を考える

画像5: 撮影:加藤 甫

撮影:加藤 甫

続けてトークショーは、スポーツチームを悩ませることの多いスポンサー営業や、企業に提供できるスポーツの価値について、議論が交わされた。

小澤: 現在、スポンサーになっていただいている方以外にも、スポーツに投資する価値や可能性について、訴えていく必要があると思っているんです。
宮本:現在も日本代表や日本サッカーを応援していただいている方には、サッカーを通じてつながりが持てるような機会を提供させていただいていて、ビジネスでの交流はもちろん、災害が起きてしまった時に一緒に活動をするといった形での連携も、実は生まれているんですよ。さまざまな出会いの機会を提供したり、「サッカーを通じて社会のために貢献していきたい」というみなさんの思いに応えることも、私たちの役割だと思っています。
小澤: 僕はこれまでに楽天やソフトバンクでスポーツに携わってきて、「社員にとっても、お客様にとっても、スポーツは本当に素晴らしいものだ」と思っています。環境保護や社会貢献が求められる時流の中で、収益の一部をスポーツに投資することがさらに評価される時代になると思いますし、社内の結束やロイヤリティを高めるためにも大いに役立つことでしょう。
画像6: 撮影:加藤 甫

撮影:加藤 甫

宮本恒靖(公益財団法人日本サッカー協会 会長/右)

1977年大阪府生まれ。10歳からサッカーを始め、各年代の代表チームで主将を務める。
1995年ガンバ大阪ユースからトップチームに昇格し、プロサッカー選手としてのキャリアを歩み始めるとともに同志社大学へ進学。

ガンバ大阪ではDF陣の主力としてプレーし、2005年にJリーグ優勝。2006年シーズン終了後にオーストリアのレッドブル・ザルツブルク移籍。2009年からヴィッセル神戸でプレーし、2011年に現役引退。日本代表でも主将を務め、2度のワールドカップに出場。

現役引退後は国際サッカー連盟が主宰する修士課程「FIFAマスター」に留学。2015年から指導者としての道を歩み始め2020年にガンバ大阪の監督としてJリーグ準優勝。2022年に日本サッカー協会理事へ就任し、2024年3月に第15代会長に就任。

小澤隆生(Boost Capital株式会社代表取締役 / 公益財団法人日本サッカー協会 理事/左)

Boost Capital株式会社代表取締役 早稲田大学卒業SCSK入社後、1999年にビズシークを設立し2001年に楽天に売却。2003年のビズシークの吸収合併により楽天に入社。オークション担当役員に就任。2005年に楽天野球団取締役事業本部長。2009年から2012年まで楽天顧問。
2011年設立したクロコスを現LINEヤフー(株)に売却し2012年にヤフーへ入社。2013年よりヤフー執行役員としてヤフーショッピングを担当、2018年4月常務執行役員コマースカンパニー長に就任しeコマース、トラベル事業、金融事業を管轄。
2019年6月ヤフー取締役 専務執行役員COOに就任しコマースとメディアの全事業を管掌し2022年4月ヤフー取締役 代表取締役社長 社長執行役員CEOに就任。2023年9月退任。
2024年1月ベンチャーキャピタル運営会社BoostCapital株式会社を設立し代表取締役に就任。

株式会社YOUTRUSTについて

YOUTRUST(ユートラスト)は、日本で働くすべての人のためのキャリアSNS。このプラットフォームは、仕事仲間とのつながり形成、プロフィールの掲載、タイムラインへの投稿、副業や転職意欲の共有などを通じて、新たな出会いを創出する場となる。

友人・知人とのつながりはもちろん、コミュニティへの参加をきっかけにネットワークを広げることでキャリアの可能性を切り拓いていける、ネットワーク型のプラットフォーム。

法人向けには、独自のタレントプールから未来の仲間を採用できるネットワークリクルーティングサービス「YOUTRUST TALENT」やプラットフォーム上でBtoBマーケティングや採用広報できる広告ソリューション「YOUTRUST ADS」、営業ターゲットに1to1でダイレクトアプローチできるABMサービス「YOUTRUST SALES」、デジタル人材を中心とした有識者から最先端の知見を得られるエキスパートインタビューサービス「YOUTRUST INSIGHT」などを提供。多彩なソリューションによりビジネス成果の最大化を目指して伴走する。

▶ サービスページ:https://lp.youtrust.jp/

▶ iOSアプリ:https://apps.apple.com/jp/app/youtrust/id1535785012

▶ Androidアプリ:https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.youtrust.youtrust

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執筆:JUN

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