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何度見ても涙が止まらない…いい映画ができたと思う。
第38回東京国際映画祭(11月2日)で行われた先行上映では、本作の舞台挨拶が行われ、松谷鷹也、鈴木京香、高橋克典、前田拳太郎、山崎紘菜、加藤雅也、見城徹(製作総指揮)、秋山純(監督)が登壇した。

東京国際映画祭のレッドカーペットを歩く面々。秋山純監督(左)は横田さんのユニフォームを持って登場した。©︎TIFF

©︎TIFF 作品への想いを語る見城徹氏
――まずは、記念すべき幻冬舎フィルム第1回作品として公開される『栄光のバックホーム』の製作総指揮を務めた見城徹さんに、ご感想をお伺いできたらと思います。
見城:今日はお忙しいところ、ありがとうございました。私は今、74歳です。この映画を作っている間、「僕の人生の最後は、栄光のバックホームで飾れるだろうか?」と思いを巡らせながら、ここまで映画を作ってきました。
奇跡のバックホームを見せた横田慎太郎の姿を秋山監督がどう描くか。そして彼を支えた人たちを、役者の皆さんがどう演じるか。
「映画を作ろう!」と思い立ったのは、今から三年ほど前のことでした。そこから毎日のように「皆さんの胸に届くだろうか?」、「お客様は入るだろうか?」、「横田慎太郎はうなずいてくれるだろうか?」…………。そんな不安と恐怖を感じながら、眠れぬ夜を過ごしてきました。
(完成した映画を)何回見ても、もう涙が止まりませんし、「いい映画ができたな」と思っています。もし、皆さんの胸に少しでもこの映画が届いたのなら、他の人に「あれは良かった。見た方がいいよ!」と言ってください。よろしくお願いします。

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――見城さんの言葉に深くうなずいていらっしゃった秋山監督に伺います。撮影中にはさまざまな奇跡が起きたようですね?
秋山:はい。「君の人生を必ずスクリーンに……」と横田慎太郎くんにお願いし、このような形で実現したことが本当に感無量です。「映画館に行くのを楽しみにしている」と話してくれた慎太郎くんとの約束を果たせなかったことに、すごく悔いが残ってますが。それでも慎太郎さん役の松谷鷹也さんを始め、素晴らしい俳優の皆さんが集まってくれて。見城さんと電話しながら、一喜一憂した日々を経て、このような舞台に立つことができた。それ自体が一番の奇跡だと僕は思います。
横田慎太郎さんと歩んだ宝物のような4年間

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――今回は主演に大抜擢された松谷鷹也さんにお話を伺います。松谷さんは生前に横田慎太郎さんとも交流があったようですが、上映を迎えた今、横田慎太郎さんにどんな言葉を送りたいですか?
松谷:横田慎太郎さんはどこか天然で、少し抜けているようなところもありつつ、本当真っ直ぐで、1日1日を大切に生きていくような人で、慎太郎さんと一緒に歩んできたこの4年間は、僕にとっても宝物のような時間でした。
慎太郎さんには「完成した映画を通じて、一人でも多くの方に慎太郎さんのことを知っていただけるように、できることを全力でやっていきたいと思いますので、引き続き見守っていただけたら嬉しいです」と伝えたいです。

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――横田選手の母、横田まなみさんを演じた鈴木京香さんに、出演オファーを受けられた時のお気持ちと、ご出演を決められた理由についてお伺いさせてください。
鈴木:オファーをいただいたとき、「野球に一生懸命打ち込んできたはずなのに、志半ばで病と闘わざるを得なくなった青年の母役が、私に務まるのだろうか?」と考えたこともありましたが、慎太郎さんの清らかで一生懸命な生き方に感動しまして。「これはぜひやらせていただきたい」とお返事しました。
現場では、鷹也くんが慎太郎君のままでいてくれたので、私たち家族は「慎太郎くんはこういう素敵な男の子だったんだ」とか、「頼もしい青年だったんだ」と感じながら、誇らしい気持ちで過ごすことができました。そして、みんなで大好きになった慎太郎さんにも、この映画が届いていることを祈りつつ、たくさんの方に劇場にいらしていただきたいと思いますので、今日の感想を皆さんにどうぞお伝えくださいませ。よろしくお願いいたします。

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――横田選手の父で、プロ野球選手としてもご活躍された横田真之さんを演じられた高橋克典さんにお話を伺います。母のまなみさんとはまた違った形で、息子を見守る姿が印象的でしたが、どのように父親像を作り上げて演じられたんでしょうか?
高橋:慎太郎さんの父である真之さんは、ご自身も元プロ野球選手で、実力はあったものの、今一つ抜け出せなかった経験があり、長年に渡り野球界で過ごしていたので、陽の当たらない部分や悩み、故障などの色々なことを知りすぎている。内心はさまざまな葛藤や嫉妬、そして人一倍の嬉しさを感じながら、一歩引いたところで家族を守る。(現役引退後は、野球ではなく)食堂を経営しながら、家族を養っていく人生を過ごしていた方でした。
ですので、鷹也くんと現場で会っても、僕はできるだけ目が合ってもあまり喋らないようにしていて。距離感がある親子の姿を演じました。(作中の)「何をやってもあなたは中途半端で…!」と、妻に叱咤される場面は、自身としても非常に胸に突き刺さりまして(苦笑)
(作品における)家族が、家族のまま過ごせたので、さまざまな試練を乗り越えながら、最後のシーンまでたどりつけたような気がします。
横田選手にも、「皆さんが本当に胸を打つエピソードに関心を寄せてくださった」ことが届いているといいなと思います。
松谷は北條史也選手と対戦し、本塁打を打たれた過去を明かす

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――そして横田選手の先輩であり、親友でもある北條史也選手を演じられました前田健太郎さんに伺います。野球選手役ということで、きっとトレーニングも大変だったと思うんですけど…。野球の経験はあるのでしょうか?
前田:いえ、実は僕、今までほとんど野球経験がなくて。小学校の時を最後にバットを振ったことがないくらい、ブランクもありました。
ただ、撮影が始まる前からずっと鷹也さんが一緒に練習してくれて。僕を引っ張ってくれている鷹也さんの背中や、この作品にかける思いに触れているうちに、「僕もしっかり役柄にに向き合っていかないと」と思うようになりましたし、「鷹也さんが何年もかけて積み上げてきたものを、たくさんの方に届けたい」という思いで、僕も演じさせていただきました。
――かつてプロ野球選手を目指して頑張っていた松谷さんは、北條史也さんも対戦されたこともあるんですよね?
松谷:そうです。高校の時に対戦して、僕はホームランを打たれました。(苦笑)

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――慎太郎さんのお姉様、横田真子さんを演じる山崎紘菜さんに、お話を伺います。作中の横田家4人の心温まるシーンに感動しましたが、家族のほっこりするようなエピソードはありますか?
山崎:実は、家族4人が揃うシーンは意外と少なくて、撮影期間もわずかでしたが、家族の深い関係性がものすごく大事な作品なので、「どうやって家族の空気感を出したらいいんだろう?」と、考えながら撮影に臨みました。
私はそこまでセリフが多いわけではなかったので、「物理的な距離を近づけよう」と心がけました。
鈴木京香さんにハグをした時、距離の近さが心配になったので、撮影の合間に「グイグイと距離を近づけて本当に申し訳ございません。大丈夫ですか?」と、京香さんに尋ねると、「全然気にせずに、もうどんどん来て!」とおっしゃってくださって、それですごくホッとしたことを覚えています。
あと、病室の前で私が「お母さん大丈夫?」と尋ねるシーンの後半に、お父さん(高橋克典)が来て、私がハグを場面があると思うんですが、ここも最初は台本になくて。私が勝手にハグをすると、高橋さんがそれを受け止めてくださったことで、このシーンが完成しています。作品内で懐深い家族の元でお芝居ができて嬉しかったですし、「それが映像でも届いていたらな」と思います。

舞台挨拶への出演は叶わなかったが、レッドカーペットには横田さんの想い人、小笠原千沙さん役で出演する伊原六花 も姿を見せた。©︎TIFF

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――続いて、当時の阪神で1軍監督を務められていた金本知憲さんを演じた加藤雅也さんにお話を伺います。金本さんといえば、「兄貴」とか「鉄人」と言われるような伝説の名選手ですが、演じる際に心がけたことはありますか?
加藤:私もそこまで野球をプレーやした経験がないので、最初に「どうすれば野球選手に見えるか?」と相談したことがあるんですよ。すると監督に、「加藤さんは監督ではなく、兄貴でいてください」と言われまして。
現場では皆さんと積極的にコミュニケーションを取り、食事のシーンではみんなに話をするようにして、兄貴らしく振る舞うことを心がけました。あと僕自身が関西出身なので、「阪神の選手だし、きっと関西弁でいけるな……」と思っていたのですが、YouTubeを見るとほとんどが標準語で、訛りはほとんど封印されていたんです。それでも時折見られる出身地の広島や、関西の訛りは意識しながら、取り入れるようにしているので、その辺にも注目していただけたらなと思います。

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栄光のバックホーム

©︎2025「栄光のバックホーム」製作委員会
阪神タイガースにドラフト2位で入団し、将来を期待されながらも、21歳で脳腫瘍を発症して引退を余儀なくされた元プロ野球選手・横田慎太郎の軌跡を描いた作品。横田選手の自伝『奇跡のバックホーム』と、母親の目線で描いた『栄光のバックホーム 横田慎太郎、永遠の背番号24』の2作品を原作に「幻冬舎フィルム」の第1回作品として映画化。
【映画情報】
公開:2025年11月28日(金)
出演:松谷鷹也、鈴木京香、前田拳太郎、伊原六花、山崎紘菜、草川拓弥、萩原聖人、上地雄輔、古田新太、加藤雅也、小澤征悦、嘉島 陸、小貫莉奈、長内映里香、長江健次、ふとがね金太、
平泉 成、田中 健、佐藤浩市、大森南朋
製作総指揮:見城 徹/依田 巽 企画・監督・プロデュース:秋山 純 脚本:中井由梨子
