サッカークラブのユニフォームが偽造される問題は新しいものではないが、近年はそのニセモノの品質が上がっているほか、ウェブサイトから簡単に購入できるようになっている。
『BBC』によれば、プレミアリーグの大人用メンズシャツの価格はおよそ60~85ポンド(1万2000円~1万7000円)ほどで、それにバッジやネームをつけると120ポンド(およそ2万4000円)になることもあるという。
そのため、近年は主に中国に拠点をおいているウェブサイトからオンラインでニセモノのユニフォームを購入するファンが増えているそう。それはわずか12ポンド(2400円)で売られていることもあるそうだ。
アンフィールドで行われたリヴァプール対ノッティンガム・フォレストの試合に訪れたファンにインタビューしたところ、そのほとんどがニセモノを買ったことがあると答えたとのこと。
偽造防止団体のクロエ・ロング副事務局長は、ニセモノのユニフォームには健康被害や色落ちのリスクが大きいと話したそうだ。
「ニセモノのユニフォームを着用すると、炎症を起こす場合がある。特に有害な毒素や染料が製造に使用されている場合、深刻な問題になる可能性もある。
彼らはいかなる規制にも従うことはない。正規のメーカーが従うような法律や規制に縛られておらず、道徳心も基準もなく、動機は金だけだ。
本物に見た目を近づけるためなら、彼らは何でも使う。他の製品と一緒に洗濯機に入れると何が起こるかはわからない。特に子供用にはこのようなリスクをとるべきではない」
プーマやアンブロでキットデザイナーを務めてきたロブ・ワーナー氏は、本物のユニフォームが高額になってしまう理由を以下のように明かしたという。
「公式レプリカユニフォームの制作原価はおよそ10ポンド(2000円)。利益はクラブが30%、ブランドが70%を受け取る。
ファンはそれを受け入れがたいと思うだろうが、プロ仕様のキットの開発には多くの技術と研究結果が導入されている。
レストランに行ってステーキとチップスを注文して『これに4000円も払うなんて嫌だ。スーパーなら800円で買える』なんて言う人はいない。お金を払うのは環境のため、シェフのためなのだ。ユニフォームも同じだ。
近年のニセモノは、プロのデザイナーでも違いを見分けることが難しい。注目すべき重要な点はいくつかあるが、一般の消費者では気付けないかもしれない。
公式ユニフォームの値段も上がり続けているので、人々がニセモノを買う理由も理解できる」
また、ヨーク地方でレトロユニフォームのショップを経営しているジェームズ・ハンフリー氏は、ニセモノの見分け方を以下のように説明したそう。
「アディダスやナイキなど、ほとんどのブランドにはコードがある。それを検索エンジンに入力すればわかる。
もう一つ注意すべきことは、ペンの跡だ。ニセモノのユニフォームを作っている工場では、人が検品作業をしていて、ラベルにペンで小さなチェックマークをつける。
ただ、ナイキなどが公式のシャツを作る場合、ユニフォームを手作業でチェックするようなことはないからね」
中国などを中心に存在するニセモノのユニフォームを作る工場では、大手と違って手作業での検品作業が入るため、その確認のためにマークがつけられることが多いという。
サッカーのユニフォームの原価は安いものの、製造するまでのコストが非常に高額で、しかも利益がクラブとブランドで分割されることから、公式のものはどうしても高くなってしまうとのこと。
筆者:石井彰(編集部)
