[J1昇格プレーオフ2025決勝、ジェフユナイテッド千葉 1-0 徳島ヴォルティス、12月13日、千葉・フクダ電子アリーナ]
17季ぶりのJ1復帰をつかみ取った千葉。
「ジェフをJ1に上げるため」と、今季より同クラブに帰還した下部組織出身DF鳥海晃司は、J1昇格プレーオフ(PO)決勝の徳島戦の後半47分に途中出場し、1-0の勝利に涙を流した。
千葉復帰の決断を疑った時期も…
並大抵の覚悟ではなかったはずだ。
17季ぶりのJ1復帰を告げるホイッスルがフクアリに鳴り響くと、鳥海はその場にしゃがみ込み、緊張の糸がほどけたように涙を流した。
この瞬間のためにJ1の肩書を捨てて、下部組織時代を過ごした古巣の千葉に帰ってきた。
「本当にやっとJ1に戻れる。1年間長かった」

試合終了直後に涙を流した鳥海(写真:縄手猟)
今季よりJ1セレッソ大阪から完全移籍で千葉に復帰した鳥海。昨季はリーグ戦30試合に出場し、C大阪の主力として活躍していた。今年で30歳を迎え、サッカー選手として成熟していたタイミングで下した決断に、もちろん周囲は反対した。
それでも、「ジェフをJ1に上げるため」と家族を説得して千葉に帰還。さまざまなプレッシャーを背負いながら、チームを後方から支え続けた。
「J1の舞台を捨てて来たので、これでJ1に上がれなかったら『もしかしたら選択を間違えてしまったんじゃないか』と思う時期もありました。でも、そういう時期を乗り越えて、やっと戻れるという気持ちです」
今季はリーグ戦30試合に出場。開幕戦からスタメン出場を続け、千葉のディフェンスに安定感をもたらした。
しかしリーグ戦第29節レノファ山口FC戦(1●2)を最後に先発出場は途絶え、終盤戦はベンチから試合を見届ける日々も続いた。

この日もベンチから仲間をサポートした鳥海(写真:縄手猟)
それでも、J1昇格PO決勝後に口にした言葉は小林慶行(よしゆき)監督と、家族への感謝だった。
「自分自身もケガでコンディション的に戦えない、 90分を通して戦えないとは思っていました。それでもベンチに入れてくれた監督には感謝しています。
そして一番は、一人のサッカー選手としては変な決断をしたので、それを一緒に乗り越えてくれた家族に『本当にありがとう』と言いたいです」
シーズン開幕前から千葉をJ1に上げるビジョンを描き続けていた鳥海。クラブ史上初の開幕6連勝を達成したときでさえも常に先を見据え続け、チームがどうすればもっと良くなれるかを考え、口にしてきた。
その姿勢は悲願のJ1復帰を決めたこの日も変わらなかった。

試合終盤に投入された鳥海(写真:縄手猟)
「真面目に一体感を持って戦えるチームですけど、クオリティの部分はもっと上げていかないといけないとは思っています。この感じでJ1に行ったら絶対に苦しむと思う。
でも、これからの半年が運良く試せる期間になっている。そこでみんなのクオリティや、戦術を上げていって、チームの良さである一体感も掛け合わせながら、J1でも戦っていけるクラブにしていきたい」と、既にその目は来季を見据えていた。
J1に上げて終わりではない。むしろ、ここからが本当の戦いだ。
「やっとスタートラインに立った」と、かぶとの緒をしめ直した鳥海の挑戦は続く。
(取材・文:浅野凜太郎、写真:縄手猟)
