私事ではあるが前回のコラム同様に、悲しいことを題材にして取り掛かることとなった。思い上がりかといわれればそうかもしれない。しかし、事実は受け止めるためにある。マンチェスター・ユナイテッドがチャンピオンズリーグのグループリーグから敗退をしたのである。

ユナイテッドがチャンピオンズリーグから敗退するのは2005/06シーズン以来である。この年は勝ち点6という成績で4位となりグループリーグ最下位という屈辱を味わった。このシーズンのチャンピオンズリーグは、アーセナルとバルセロナの決勝である。覚えていらっしゃる方も多いだろうが、14年振りにバルセロナが優勝し、ハイバリーでのラストシーズンとなったアーセナルはスタッド・ドゥ・フランスで初優勝を果たすことは出来なかった。(不思議な縁だが、このグループリーグには今シーズン同様ベンフィカがいる。)

なお、そのシーズンのプレミアではチェルシーがリーグ2連覇を果たし、ユナイテッドは2位でシーズンを終えた。イマイチ思い出せない方は「ボーダフォンの名称がユニフォームに入った最後の年」と思い出していただければいいかもしれない。

【予想以上に苦戦したグループリーグ】

さて、前置きは置いておき、今シーズンの敗退の原因について、私的ではあるが考察をしていきたいと思う。

まず、今シーズンのユナイテッドは、誰が見ても明らかなような世代交代を図った。とはいえ、グループリーグの抽選会の時には私も、他の人でさえも、ユナイテッドのグループリーグ突破は固いと思ったはずだ。しかし勝てなかった。

原因の一つがここにあるだろう。言葉では楽ではないと言いつつも、敵を軽視していた。これはサポーターにも選手にも、そしてサー・アレックスにもあったはずだ。最終節。敵地でありながら引き分け以上で突破が決まるので、半分は決まったようだと思っていた。しかし、蓋を開ければ煮え切らない試合内容に加えて敗戦という最悪の結果だった。

このグループリーグにおいて、オツェルルにしか勝てず、バーゼルとベンフィカには圧倒的な結果を出してきた本拠地で未勝利。これでは突破は困難である。

第5節のベンフィカ戦でも、いい形で勝ち越したにも関わらず、すぐにアイマールに返され、嫌な形で引き分けてしまった。コレには幾つかの要素が絡まっているが、以前のユナイテッドであれば起こりえない筈だった。なぜか?

【日程面の問題】

この時点で置かれていたユナイテッドの状況を整理してみよう。まずはプレミアリーグの日程である。もともとユナイテッドは尻上がり型のチームであり、開幕の状態は決して良くない。毎シーズン秋の半ばから調子が上がってくる。それが今シーズンは過去最高とも言えるスタートダッシュを記録した。サー・アレックスが意図したかどうかは不明だが、今シーズンは序盤にアーセナルやチェルシーなどビッグマッチが相次いだ。そのせいあってか、開幕からエンジン前回のユナイテッドは開幕ダッシュに成功したが、その好調の中心となっていたクレヴァリーの負傷離脱とともに失速し、先のダービーでの悪夢が起こることとなる。

【急速化した世代交代】

次に先に挙げた世代交代である。経験不足な面は否めない。最終戦となったバーゼル戦に限って言えば、経験豊富なはずのギグスがめちゃくちゃなパスを送っていた上に、怪我で途中退場したヴィディッチと、ファーディナンドやエヴラ、パクもいたが、それ以外は中途半端にチャンピオンズリーグでの経験が少ない。アシュリー・ヤングなど見るに耐えない出来であった。ルーニーがこの点で不完全であると言われるのはこういった場面でリーダーシップを発揮し、チームを引っ張っていけないことが一つであるとも言えるだろう。サー・アレックスは、若手世代が経験を重ねて、ギリギリでもどうにかなるだろうと踏んだのであろうが、それは厳しい現実として降りかかることとなった。

【疑問が残るファーガソンの采配】

そして、采配面も挙げてみよう。チャンピオンズリーグにおいて、サー・アレックスはしばしば中盤を5人にして望む。この試合、私の記憶違いでなければ、ルーニーを1トップにしたのはかなり久しぶりであり、連携にかなり苦しんでいた。攻撃の連動性は皆無で、ギグスのパスは最後まで意図が共有できずにちぐはぐな攻撃を繰り返していた。引き分けでいいと考えていたのは十分に理解できる。バーゼルは勝つ以外ないのだから。しかし、ウェルベックの他にマケダもベンチにいた状態では2トップで望むこともできたはずである。

【大打撃を与えたキャリックの不在】

怪我人も大きな原因の一つであろう。クレヴァリーの離脱を筆頭に、恒例の“ダ・シウヴァツインズ”、アンデルソンを含めたけが人が後を絶たない。これによって試合ごとに中盤の人員を固定することが困難な状態であった。まるで2009/10シーズンの12月を思い出すかのように。(キャリックとフレッチャーでCBを務めたフラム戦など...)アウェイゴールの職人とも言えるチチャリートの離脱も痛かったが、この試合では怪我人以上に痛かったのは、キャリックの出場停止である。先日のリーグ戦も含めて、最近絶好調なキャリックだが最終節のバーゼル戦には、前節のベンフィカ戦で3枚目のイエローカードを頂いてしまったので累積出場停止。ベンチにも入れなければこの試合は何もできなかった。キャリックのいない中盤は統率を失い、心地悪いリズムの攻撃を繰り返していた。

「タラレバ論」にはなるが、キャリックがいたならば、結果は変わっていたと私は考える。つまりはそれくらい今のユナイテッドには欠かせない選手である。もともと開幕を前にして中盤の枚数の少なさは指摘されており、クレヴァリー離脱後、不調ではあったがアンデルソンまで抜け、本職はキャリックとフレッチャー、本来移籍するはずであったギブソンのみである。事後ではあるが、フレッチャーは内臓の疾患によって長期離脱が発表された。一説によると選手生命を脅かす難病であるとのことで、彼の早期回復を願うばかりである。中盤にジョーンズを回しているが、プレミアの日程を考えると人数的にはクライシスだ。

後編(https://qoly.jp/index.php/special/184-special/7474-think-about-the-blunder-of-manu-vol2)に続く・・・

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 db7
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