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ロッシの私的サッカー論

今回も前回(https://qoly.jp/index.php/topic/154-rossis-logic/7456-kashima-antlers-review-vol2)に引き続き今シーズンの鹿島アントラーズを振り返っていきたいと思う。

・補強を振り返る

今シーズンの鹿島アントラーズは例年に無いほどの大型補強を行った。コンサドーレ札幌から西大伍、清水エスパルスから本田拓也といった日本代表に名を連ねる実力者を獲得。マルキーニョスが退団した前線にはポルトガルリーグで得点を量産していたカルロンを引き抜くことに成功した。また、ジェフユナイテッド千葉から日本でのプレー経験豊富なアレックス、青森山田高校時代から超高校級プレーヤーとして注目されていた柴崎岳が加入し、レンタル先のモンテディオ山形で印象的な活躍を見せた増田誓志、田代有三が復帰するなど、これらの補強でスカッドは量、質ともに充実したものになった。しかし、嬉しい誤算もあれば悲しい誤算もあった。

・悲しい誤算

悲しい誤算となってしまったのは鳴り物入りで入団したカルロンと本田だろう。特にカルロンは退団したマルキーニョスの穴を埋める活躍を期待していただけに、シーズン途中で退団(スイスのヌーシャテル・ザマックスへレンタル移籍。その後契約を解除され、ポルトガルの強豪ブラガへと移籍)するという結末は大変ショックなものであった。確かに怪我や震災による心理的な影響、プレースタイルの異なる日本への順応など考慮しなければいけない点は多々あったものの、約2億円という大金をかけて獲得した選手が全く機能しなかったことは大変な痛手であり、助っ人FWを獲得する難しさを改めて実感する結果となった。

また、定位置確保が期待されていた本田は3月下旬の代表合宿中に負傷。当初は軽傷であるという報道もあったが、思いのほか怪我が長引いてしまい、結果としてシーズンをほぼ棒に振ってしまった。この怪我の影響で代表からも縁が遠くなり、クラブ内でもルーキーの柴崎の活躍によってボランチのポジションの序列は4~5番目となってしまった。文字通り正念場を迎える来シーズンではあるが、まずは怪我をしっかりと治し、以前のプレーを取り戻して欲しいところである。

・嬉しい誤算

一方、嬉しい誤算となったのはモンテディオ山形からレンタル復帰した増田、田代の両名とルーキーの柴崎だろう。出場機会を求めてレンタル移籍をした増田、田代はコンスタントに試合に出場し、確かな成長を遂げて鹿島に帰ってきた。特にシーズン序盤、チームの大黒柱である小笠原満男が不調であった時期に存在感を示し、代表に呼ばれるまでになった増田の成長ぶりには目を見張るものがあった。元来、パスセンスの高さやゲームを組み立てる能力は高く評価されていた増田だったが、今シーズンは全ての面でレベルアップし、鹿島の中盤の新たな柱となった印象を受けた。来シーズンは岩政大樹から選手会長の座を受け継ぐということで、ピッチ内外で鹿島を牽引していってもらいたい。

また、同じくレンタル復帰した田代の存在も大きかった。フィジカル面に優れる田代がいることで、昨シーズンは見られなかった「後方からのロングボールを田代に当ててからの攻撃」という新たな戦術オプションを手に入れることができた。この「ロングボール作戦」は良く機能し、終盤戦は怪我に祟られ満足な出場機会を得ることが出来なかったとはいえ、山形時代から2年連続となる2桁得点をマークするなど好調を維持した。シーズン終了後に手術をし、万全な状態で新シーズンを迎え、今シーズン以上の活躍を期待していたが、ヴィッセル神戸への移籍が決定してしまった。このことは非常に残念であるが、田代自身の選択を尊重し、新天地での活躍を期待したい。

そして、新人らしからぬプレーを披露した柴崎には最大限の賛辞を送りたい。入団1年目は周りからのプレッシャーや自身の怪我もあり、大変であったと思うが、ピッチ上では抜群の存在感を示し(終盤戦は日本代表である増田をベンチへと追いやった)、チーム状況に応じてサイドバックを務めるなど貴重な戦力となった。どんな状況でも落ち着いて対応し、試合の流れを読んで、試合を組み立てる能力はキャプテンである小笠原に通じるものがあり、堂々としたプレーぶりからはメンタル面において相当強いものを持っていることが想像できる。偉大な先輩である小笠原からこれからも多くのことを学び、鹿島だけでなく日本代表を背負う存在へと成長していただきたいものである。

・鹿島を去りゆく選手たち

ここで、シーズンが終わり、鹿島を去りゆく選手たちにも触れておきたい。(このコラムを書いている12月27日現在における公式発表は以下の通りである。)

第二GKとして長年に渡ってチームを支えた杉山、各年代の代表に名を連ねた當間、鹿島ユース出身で切れ味鋭いドリブルが持ち味の小谷野、今シーズンの鹿島FW陣の柱であった田代、カルロンの移籍に伴いシーズン途中に加入したタルタが退団することとなった。また、田代を獲得したヴィッセル神戸が野沢拓也にオファーを出しており(一部新聞での報道によれば移籍は決定的とのこと)、こちらも予断が許されない状況となっているが、現時点で鹿島を去りゆく選手たちには感謝の気持ちと新天地での活躍を期待しつつ送りだしてあげたいところである。

・鹿島に加わる選手たち

また、鹿島アントラーズに新たに加わる選手たちを紹介しておきたい。(このコラムを書いている12月27日現在における公式発表は以下の通りである。)

現時点で鹿島に加入する選手の中で最も期待値が高いのはジュニーニョ、山村の2人だろう。前者にはこれまで何度も苦汁を飲まされてきただけに、味方となってくれるのは大変心強い。また後者はロンドン五輪出場を狙うU-22日本代表のキャプテンを務める実力者であり、シーズン開幕から重要な戦力となるだろう。また、アビスパ福岡から加入する岡本は今シーズン8ゴールを決めており、退団する田代の穴を埋める活躍を期待したい。またユースから昇格する3選手(鈴木、宮内、中川)と静岡学園高校から入団する伊東といった若武者たちには鹿島アントラーズの将来を背負う選手に成長していただきたいところである。特にメキシコで行われたFIFAU-17ワールドカップに出場した鈴木、高校ナンバー1右サイドバックとの呼び声の高い伊東には期待したいところだ。

・来季の展望

最後に来季の展望について述べたいところだが、新監督についての公式発表がまだ無いため(クラブOBで元ブラジル代表DFジョルジーニョ氏が就任 すると報道されている)、正式に決まり次第、当コラムで来季の展望について述べていきたいと思う。

・あとがき

年内の更新は今回のコラムをもって終了とさせていただきます。今年一年当コラムをご覧下さった皆様、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。来年も当コラムをよろしくお願い致します!

2011.12.27 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 ロッシ
プロフィール 鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援している大学生。今シーズンはプレミアリーグを中心に観ていく予定です。当コラムに関する、感想、意見等がありましたら、下記のツイッターアカウントにどしどしお寄せ下さい。
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前回までの記事はこちら⇒ロッシの私的サッカー論

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