5月27日に味の素スタジアムで行われたFC東京 vs浦和レッズの一戦は見応えのある好ゲームとなった。今回の当コラムではこの試合を現地で観戦した筆者によるマッチレビューを書いていきたいと思う。

・浦和レッズの4-1-5

以前も当コラムで取り上げた事があるが、https://qoly.jp/index.php/special/184-special/8800-reds-vs-reysol-review浦和レッズのシステムというのは大変独特のモノである。

上図がこの試合での浦和レッズのフォーメーションである。基本形はこの形なのだが、攻撃時にはこのように変化する。

ダブルボランチの一角である阿部が最終ラインに入り、両ウィングバックが高い位置へと進出。基本の3-4-2-1から、4-1-5へと形を変えるのだ。

このシステムは、ミハイロ・ペトロヴィッチがサンフレッチェ広島を率いていた時からのシステムであり、(監督が森保一に替わったサンフレッチェは現在もこのサッカーを続けている)彼の代名詞だと言っても良い。筆者はこの「可変DFライン」をFC東京がどのように封じるかという点に注目して、この試合を観戦していた。

・個人能力が抜群に高いFC東京の選手たち

上図は、浦和レッズの攻撃時のフォーメーションとFC東京の守備時のフォーメーションを反映させたものだ。白いユニフォームの浦和レッズの選手たちが青のユニフォームのFC東京のコンパクトなDFラインと対峙している。

この図で白く囲んだエリアがバイタルエリアという場所である。このエリアで相手アタッカーに前を向いてプレーさせてしまうと、決定的なシーンを作られる可能性がとても高いだけに、このエリアでの攻防が勝敗を大きく分けるのだ。

FC東京はDFラインを高く設定し、全体をコンパクトにするのが守備のスタイルである。浦和レッズは後方からパスをつなぐチームなので、FC東京としては、ラインを高くし、前線から積極的にプレスを掛けていく戦法を取るものだと筆者は考えていたが、実際はそうではなかった。FC東京の選手たちは、浦和レッズのセンターバック(永田、阿部)がバイタルエリアの柏木、マルシオへと楔のパスを入れた瞬間に、柏木、マルシオに対して、猛烈なプレスを掛けていたのだ。

この試合でFC東京のセンターバックを務めたチャン・ヒョンス(後半途中から徳永悠平がセンターバックに入り、チャンが右サイドバックへ)、森重真人、ボランチの位置に入った高橋秀人、長谷川アーリアジャスールはフィジカルが強く、1対1の勝負に自信がある。そのため、ボールをバイタルで受ける柏木、マルシオは強烈なボディコンタクトに手を焼き、なかなか決定的な仕事をさせてもらえなかった。

スタンドからは、トップ下に入った梶山陽平とボランチの長谷川を入れ替えて起用すべきという声も聞こえた。実際、FC東京を率いるランコ・ポポヴィッチは開幕からボランチに梶山、トップ下に長谷川という形を取ったが、最近の試合では、ボランチに長谷川、トップ下に梶山を起用することが増えた。恐らく、梶山の守備の負担を減らし、攻撃センスを活かすための采配だと考えられるが、一番は守備の場面での貢献度の違いだろう。近年の梶山は運動量が増え、攻守両面でチームに貢献できる選手へと成長を遂げたが、フィジカル面では、長谷川に軍配が上がる(梶山が1m80cm、長谷川が1m86cm)。この試合では、長谷川が体を張ったプレーで浦和レッズの攻撃陣を苦しめることに成功しており、ポポヴィッチの采配が見事的中したと言える。

また、長谷川とコンビを組んだ高橋も攻守両面で抜群に効いていた。ハードタックルで相手ボールを奪い、シンプルなつなぎ、正確なロングパスで攻撃陣を自在に操った。5月23日に行われたキリンカップ・アゼルバイジャン戦で初キャップを刻み、ワールドカップ最終予選に挑む日本代表に招集された高橋をこれからも注目して観ていきたい。

・見応えのある好試合になった理由

浦和レッズのように、最終ラインからボールを丁寧につなぐポゼッションサッカーに対抗するには、いくつかの策がある。例えば、「DFラインを低く設定し、全員でスペースを消す」、「DFラインを高く設定し、相手センターバック、ボランチに激しくプレスを掛ける」といったやり方があるが、多くのチームは前者を選択することが多い。(前者の方が後者よりも効率が良いことは歴史が証明している)

FC東京は前述したようにDFラインを高く設定し、全体をコンパクトにすることで、浦和レッズのパスサッカーを封じる作戦を取った。もちろん、DFラインを低くして、カウンターを狙う守備的な戦い方も選択肢としてある。だが、攻撃的なサッカーを標榜するポポヴィッチは、そのような考え方で試合に臨むようなことはしなかった。その結果、90分があっという間に感じる魅力的な試合となったのだ。

スタジアムから最寄り駅である飛田給駅に向かう帰り道では、多くのサポーターの「楽しかった」「魅力的だった」といった声が聞こえてきた。この日スタジアムに集まった3万3000人のサポーター、テレビでこの試合を観戦した多くのサッカーファンも同様に感じたはずだ。

「味スタに足を運び、ポポヴィッチのサッカーをもっと味わいたい」

多くの人がそう考え、味スタに足を運ぶことになれば、これまで以上にJリーグが盛り上がることは間違いない。筆者も味スタに通い、ポポヴィッチのサッカーを注意深く観ていきたいと思う。

2012/5/27 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 ロッシ
プロフィール 『鹿島アントラーズと水戸ホーリーホックを応援している大学生。ダビド・シルバ、ファン・ペルシー、香川真司など、足元が巧みな選手に目が無いです。野球は大のG党』
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