※3行目を修正致しました。(2012/8/12 18:00)

オリンピック準決勝から学ぼう。~U23メキシコ代表から学ぶプレッシング回避~

オリンピック準決勝、若き日本代表はメキシコに3-1で惜しくも敗れた。彼らは素晴らしい快進撃を見せ、大会の中でそれぞれが成長した素晴らしいチームだと思った。

閑話休題。しかし、今回私が触れていきたいのは対戦相手であるメキシコについてである。メキシコは、オリンピック世代を数チーム見た中でも圧倒的にチームとして完成した現代的なチームであった。その、メキシコというチームからプレッシング回避と組み立てについて学んでいきたい。まずは、スターティングメンバーとフォーメーションを見ていただこう。

日本が敷くのは4-2-3-1。大会を通して堅守からのショートカウンターで勝ち進んできたチームである。大津、清武、東、永井の前線は守備においても献身的にプレッシングを怠らず、ここで相手からボールを奪い、永井の俊足や大津の個人技によって得点に繋げるというのが得意のパターンだった。

そんな前からの厳しいプレッシングを厭わない日本に対して、メキシコは近代的な組み立てによって日本のプレッシングを掻い潜り、勝利に繋げた。彼らの2種類のプレッシング回避を使い分けていた。図を使いながら見ていくことにしよう。

まずは、このパターンである。現在では、スウォンジーやバルセロナなど様々なチームが使っている組み立てだ。図のようにCBが開き、SBが上がる。そしてボランチが1枚DFラインの間に入ってきて組み立てるのだ。

では、これをやると、どのような現象が起こるのだろうか?

どうしても、上がったSBに対して両ワイドはついていく事を求められるのだ。

ここで、目の前に開いたCBに行ってしまうと簡単にSBにパスを入れられてしまうし、そこで2対1となり数的不利な状態になってしまう。となるとワイドアタッカーは下がらざるを得ず、図のようにオレンジの円で3対2の数的不利な状況が作られてしまうのである。こうなると、メキシコとしては後ろで簡単にボールを動かしてプレッシングを回避することが出来る。もっと言えば。GKもパス回しに使えるので上手くやれば4対2の状況も演出できると言えるだろう。

元々、メキシコ代表はフル代表でもこのような組み立てを得意としていた。ただし、そこにこだわるあまりにボランチが引いてくるのが難しいような状況で上手く組み立てられなかったり、読まれやすいという問題はあった。

そして、もう一つのメキシコの組み立てで、さらに効果的なものが上記の形だった。

4番のH. Mierが中央に入って13番のD. Reyesが左サイドに流れる。左SBはそれに応じて高い位置を取り、右SBが引いてくる。さらにメキシコは10番のD,Santosが引いてきて14番のJ. Enriquezが高い位置を取る。

そして、こうなってくるとどういう現象が起こかと言えば・・・。

このように、永井と大津はそのままのマーカーを見ることになり、清武はSBに攻め上がりに応じて下がっていくわけだ。

そうなると、13番のReyesが非常に安全な状態にボールを受けることが出来る。中央の水色になった円では数的同数が出来ているので東が飛び出してプレッシャーにいくと3番のSalcidoが空くし、清武が飛び出すと5番のChavesが空く。このように、相手を動かして故意にプレッシングを回避しやすい状況を作り出すのである。このように、相手を動かしながらパスを回していくのが現代サッカーにおける組み立てだと言えるだろう。

このような、スペインのようにチーム全体が同じ意思を持って組み立てていくスタイルのチームがこの世代で見られるとは非常に驚きだった。CBの2人は、スペイン代表以上にテクニックがある印象すら受けた。今後も、メキシコ代表には注目していきたい。

※フォメ―ション図は(footballtactics.net)を利用しています。

筆者名 結城康平
プロフィール サッカー狂、戦術オタク、ヴィオラファンで、自分にしか出来ない偏らない戦術分析を目指す。
ツイッター @yuukikouhei

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